番外編 ダークサイド

rosebeer

文字の大きさ
上 下
84 / 117
百鬼夜行

【 4 】 あかつき

しおりを挟む



       誰か… 、教えてくれないかな… 、




       過ちも 争いも ない場所 を 。






…… ー  「 そろそろ帰ろうか 。」



ケンの期待には、

応えられなかった 。


頭の中で、
色々考えを巡らせたけれど、


男を 、

" 穴埋め " としか見てこなかった、

そんなアタシには… 、

彼を満足させられる言葉なんて、

見つかる訳がない 。

幸せにしてあげる言葉なんて…。

アタシには、持っていない 。




       " 一緒にいると、楽しいよ 。


       初めて、男と一緒にいて、


       楽しい と思ったよ。"



素直にフワッと浮かんだ感情 、

だけどきっと 、

そんな言葉じゃ満足しないよね…?


だから、アタシは、飲み込んだんだ。



何も答えられずに、

夜景を見ていたアタシの手を繋ぎ、


彼は小さく溜め息をついてから、


「 帰りにビール買っていこうね。」


と、優しく付け加えて言った 。


「 煙草も 。」アタシは彼を見る。


「 そうだね 。」彼は、微笑んだ 。





…… ーー  彼の部屋は、落ち着く 。



ここで暮らしたいな、と思った 。


冷蔵庫から、
さっきコンビニで買ってきた、

ハイネケンの小瓶ビールを、
ケンはアタシに手渡し、

そしてすぐ隣に座った 。



黒く、ほど良い硬さの、

牛革ハイバックソファが 、

首もとまで支えてくれて座りやすい。


「 ありがとう。」


彼の前では自然 と 、

そんな言葉が言えてしまう 。


アタシは瓶ビールを受け取りながら、

彼が隣に座る暖かさに、

安心感を覚え始めていた 。



「 美咲ちゃんから、連絡きた?」


ビールを一口飲んでから、

目の前にあるテーブルに瓶を置き、

彼はアタシに心配そうな顔を見せる。



「 いやっ、まだ…… 」


アタシもビールを飲み込み、

そして、また 飲み込んだ 。


唇から、瓶を離せない 。


動揺を隠せなかった 。


「 心配だね 。」


彼が、アタシの頭を撫でてくる。


「 どうして… ?」


アタシは彼の顔を不思議そうに見る。


「 えっ? だって、心配でしょ?」


アタシの言葉に、彼は驚く 。


「 … どうして、ケンが心配するの?」


「 いやっ、だって、心配でしょ。

美咲ちゃんは、

アンジュちゃんの友達なんだから。」



「 ………… 」



美咲は、アタシの " 友達 " なの?


アタシの " 友達 " を 、

なんでケンが心配になるの… ?


アタシには、解らない感覚 。


人間らしさを失ってきたアタシには、

その感覚が … 解らない 。



「 えっ? お友達 、だよね?(笑)」


彼は笑いながら、

アタシの顔を不思議そうに覗いた。



「 … わかんない 。」


冷たく聞こえちゃったかな… 。


彼は、


アタシが手に持っていた瓶ビールを、

ゆっくりと奪い取り、

優しく それをテーブルに置く。


アタシに体を向けて、

両手を握って向き合ってくる。



「 …… 何?」   飲んでたのに…



「 アンジュちゃん。」


彼の真剣な声と、真剣な眼差しに、

思わず顔を背けたくなる。


「 …… 何だよ 。」


アタシの声に、動揺が映った 。





「 アンジュちゃんに、何があったの?


今まで、


どんな生き方をしてきたの?」




そんな事 、聞かれた事もない 。


ひどく驚いた顔を 、

彼に見られてしまった 。


アタシの頭の中で 、

" 私 " も、ひどく動揺している 。



アタシを取り囲む頑丈な壁を、

取り壊そうと、ケンが叩いてきた。



怖い 。



この壁が崩れたら 、


アタシは泣き崩れるから 。



「 べっ、別に … 、何も無ぇよ。」


彼から目を反らす 。


アタシ を 見ないで 。



「 何も無くないでしょ?


一人で全部抱えこもうとしないで、


俺で良かったら話してよ。」




       話せねぇよ 。



    話したら、受け止められないだろ。



       話したら、消えるんだろ…?










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

うちの娘と(Rー18)

量産型774
恋愛
完全に冷え切った夫婦関係。 だが、そんな関係とは反比例するように娘との関係が・・・ ・・・そして蠢くあのお方。 R18 近親相姦有 ファンタジー要素有

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...