番外編 ダークサイド

rosebeer

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花言葉

【 8 】 対談

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ケンの実家に戻り 、


1時間近くも、

ケンの両親を放置していた事を、

アタシは 謝った 。


ケンの父親も、母親も、


売春婦みたいな、

露出が過ぎるアタシの見た目や、

慣れない敬語を、

馬鹿にしたり軽蔑したりせず、


沢山話しかけてくれて、

温かく迎え入れてくれた 。


味わった事のない、

不思議な感覚に包まれながら、


アタシは無理をして、

殻付きウニ と、

手作り茶碗蒸しだけを、食べた。


お父さんが釣り上げたマグロは…


お腹がいっぱいになり、

食べられなかった 。



食事を済ませ、

当たり障りのない会話を、


極力 笑顔を作りながら聞いたりした。


ケンの顔に、

泥を塗りたくなかったから 。



ケンが、


「そろそろ行こうか 。」と言い、


アタシを外まで連れて行く 。


アタシ達が手を繋ぎ、

門まで歩いていく後ろ姿を、


ケンのお父さんは、

お母さんの肩に腕を回して、


ケンのお母さんは、

胸の前で小さく手を振って、


見送ってくれた 。



アタシは一旦 、歩く足を止め、

繋いでいた手を離し 、


ご両親に向かって、

くるりと振り返る 。



「 ありがとうございました!


本当に…! 


ありがとうございました!」



初めて、人に 頭を下げた 。


意識など、していなかった。


酔ってもいなかった 。


上半身を深く折り曲げ、

頭を深く下げてお礼を言いながら、




「 こんなアタシに… 」


と、小さく呟いた 。



言葉が詰まり、  


最後まで 呟ききれなかったけど。…





…… ー ー



ケンの実家から 、

歩いて5分もしない距離に、


彼が一人暮らしをしている場所へと、

たどり着いた 。



可愛いサイズの、

新築 平屋一戸建て 。


1人や2人で暮らすには、

丁度いいサイズの家だった 。


ブルーグリーンの外壁に 、

黒いレンガの屋根 。

窓枠も、

屋根に合わせた木製ブラックで、


飲食店みたいな外観の家だった。


入口の隣には、ガレージがある。


「 楽器やるから、


部屋の壁は防音にしたんだ♪」


彼はそう言いながら、

玄関の鍵を開けた 。



お金持ちの息子が住む家… 、

って感じ。


だけど、この色使いは、

バンドマンが住む家…、って感じ。



部屋に入ると、

壁の いたるところに、

映画のポスターが貼ってあった。


ますます、

バンドマンのROCK色が強まる。



パルプフィクション 、


ユージュアル・サスペクツ 、


トゥルーロマンス  、


アサシン ー暗殺者ー  …… 、



部屋の中に貼ってあるポスターを、

1枚1枚… 

ゆっくりと見渡して見る。



「 あっ…… !」




シド & ナンシー を 見つけてしまった




胸が、ズキンッ…!と、痛くなる 。


急に、シドを思い出してしまった。



アタシの中の、" 私 " が 、


ひどく動揺しているように見えた。



ケンが後ろから、

急に、

そんなアタシの肩に両腕を回してきた。


胸が詰まり、目が泳いでしまう。



「 アンジュちゃん… 」



彼は後ろから、

アタシの耳に、軽くキスをしてきた。 


「 俺の部屋に来てくれて、嬉しい 」


彼の素直な言葉を 、  


スッ… と、簡単に受け入れてしまう。


昨夜、会ったばかりの人なのに…。



彼の魅力に包まれながら 、




       このまま 、



       好きになれたらいいのにな…、




と 、叶わぬ願いを、何度も考えた 。










 







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