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花言葉
【 2 】 対談
しおりを挟むまた、
新しい煙草を箱から取り出そうと、
指で1本つまみかけた時、
隣に座っていたケンが、
アタシのその手を掴んだ 。
「 それ以上は… 、
体に良くないよ? 心配になる 。」
彼はそう言って、
アタシの目を見ながら、
首を横に振った 。
しばらく見つめ合い 、
彼の、
濁りを感じさせない澄んだ目に、
アタシは根負けしてしまう 。
「 …… わかったよ。」
煙草の箱に¥100ライターを入れ、
箱のフタを閉じ 、
お尻ポッケに、しまった 。
「 じゃあ… 、飴にすっかな 。」
ケンと一緒にいると、
調子が狂って素直になるけど… 、
それはそれで、
悪くはないのかもしれないな… 、
と、思い始めてきた 。
自分で造り上げた 、
錆びついた感情や 、
受け止めきれない過去の過ち 、
争い事なんかも…… 、
ケンと一緒にいたら 、
自然と… 、
綺麗に消えて、無くなるのかな…?
アタシは、座っている膝の上で、
美咲のバッグ を 開ける 。
彼女が言ってた通り 、
イチゴミルク味のキャンディー と、
携帯電話 、しか入っていない 。
「 飴 、食う ?」
アタシは 、
眩しい青空に目を細め 、
海風がイタズラする、
前髪を抑えながら、
ケンに飴を差し出した 。
「 刺身の後に 、
イチゴミルクキャンディー… (笑)」
ケンは、苦笑いしながらも、
それを受け取って、
丸い粒を口に放り込んだ 。
ケンの左の頬が、
リスの頬袋みたいに、
小さく… 丸く浮かび上がり、可愛い。
アタシは 、彼を ……
ケン の 事 を 、
愛せないかもしれない 。
こんなに優しくされているのに、
恋愛感情が 揺さぶられないのは、
たぶん、きっと ……
これからも、
彼を 好きになる事は、ないと思う。
それでも 、
アタシは、彼と、
一緒に居られたら、いいな…
と、思う 。
美咲のバッグに大量に入っている、
小さな紙に包まれ、
両端が きつく捻られている、
イチゴミルク味の、
キャンディーの中から 、
アタシは、
どれにしようか… 手でまさぐり、
選び始める 。
どれも全て、同じ なのに 。……
「 これ食べたら、行こうー」
ケンは、飴を舐めながら、
海を眺めていた 。
「 うん。」
アタシは数ある飴の中から、
1粒だけ 、
妙に形の悪い、
溶けかかった飴を選んで、
それを、指で つまみ上げた 。
誰も 、選んでくれないやつ… 。
アタシは 、
この飴がいい、と 思った 。
捻られた両端を 、
引っ張り 真っ直ぐに伸ばす 。
小さくて、いびつな飴を、
袋から取り出すと…
それは 、飴 では なかった 。
割り箸が入っていた紙包みを、
小さく破って 、丸めてある 。
ー… "「 王様ゲームやろう♪」"
あの時の…… 、割り箸が入っていた、
紙 だ 。
アタシは 、
クシャクシャに小さく丸められた、
その、割り箸の紙を 開いてみる 。
《 あの店には、もう行かないで。
千葉さんの手から、離れた 。
私の事を、忘れないで 。》……
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