番外編 ダークサイド

浮き足立ち

【 ４ 】 差し伸べる手

もうすぐ、０時… 。

今日が、終わろうとしていた 。



朝から気分は最悪で、

気を紛らわしてくれた２錠も、

あまり長くはもたなそうだ 。



うっすら… と、少しずつ 、


気だるさと体の痛みが、

アタシを、

現実に引きずりこもうとする 。



６時間も店にいて、

何の収穫も無いなんて、

初めて、だ。



       帰る場所も無い 。



今夜は仕方ないから 、

あの、無口なコウジで手を打つか…



カウンターで注文したテキーラを、

アタシは立ったまま、

一気に一杯だけ飲む。


映画に出てくるカウボーイみたいに。



「 …… はぁ～ 」


さっきからずっと 、

アタシの真横に幻想が立っている。



もう一人の " 私 " が、

亡霊のように。



アタシと同様、

目の前に並ぶ酒ボトルの棚を、

" 私 " は、不思議そうに眺めている。




       なんで 、ここに いるの ？…




薬の影響で見えているであろう、

" 私 " に 、

アタシは小声で話しかける 。



同じタイミング で 、

真っ正面を向いたままの " 私 " が、

天使のような声で、

アタシに聞いてきた。




しばらくアタシは黙ったまま 、

目をつぶり 、皮肉な笑みをこぼす。





      「 あんたが 、シド を 、



        切り捨てたからだろうが 。」





「 えっ？」

目の前にいた副店長が 、

アタシの言葉に反応して、

こっちを見る。



タンッ…！と、力強く 、

カウンターテーブルに、


膨らむ苛立ちを隠さず、

ショットグラスを叩きつけて、

アタシは置いた 。





       シド が いたら…… 、


       彼が、いてくれたら… 、


       アタシは 、アタシだって…



       可愛い女の子のままでいられた。




     " ひまわりのように明るい子だね "




        シドなら、きっと……



        映画の台詞みたいに 、



        そんな事を言ってくれそう。





       ひまわり は 、


       いつも、いつだって…… 、



       太陽だけを見てるから。




       アタシにとっての、光 …



       アタシにとっての、太陽 は 、




       シド だけ、だから …… 。




       アタシは 、



       あなただけを 見つめている… 。






       もう二度と 、会えなくても 。