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迂回
【 10 】 依存性
しおりを挟む「 アンジュぅ~♪ …… んっ?
今日はテンション低いねぇ~」
カウンターで一人ぼんやりと、
小瓶ビールをらっぱ飲みしていると、
美咲がアタシの背後から、
肩を叩き、抱きしめてきた 。
「 別に 。」
まだ 、眠い 。シンプルに、眠い 。
だけど、
意味も無く 、
シンジの部屋に一人でいるのは、
落ち着かなかった 。
だからアタシはタクシーに乗り、
いつもの時間に、
いつものクラブに来てみた 。
来てみたけど…… 、
いつもの自分では無い事くらい、
自分が一番、よく解ってる 。
お店のカウンター内で、
充電させてもらっている、
アタシの携帯電話が 、
うるさいぐらいに連続的に、
七色に光り輝き、
着信がきている事を知らせる 。
カウンター内にいるスタッフから、
「 緊急連絡じゃない?大丈夫?」
と、何度も確認されたけれど、
「 大丈夫 。ほっといていい。」
アタシは首を横に振る。
シンジからの連絡だろうと、
予想はついていた 。
テルなら、
こんなに執拗には鳴らさない 。
テルは、憎めないバカだけど、
頭の悪い馬鹿ではないから 。……
…… 上がらないテンションで、
DJに合わせて踊る気は無かった。
「 どぉ~したのぉ~?
なんか、
いつものアンジュじゃないぃ!」
「 …… 今日は、
そんな気分じゃない。
ていうか…… 、体 が 、痛い 。」
カウンター椅子から立ち上がらない、
アタシの両肩に、
美咲は両手をのせたまま、
残像が残るぐらいの速さで、
背後からずっと揺さぶってくる。
ふざけて、
わざとやっている美咲のそれにすら、
アタシは反応する気力が無かった。
「 …… 調子悪いのかなぁ~?
お薬出しましょうね~♪」
美咲が、ナースの真似をして、
ANNA SUI のバッグをまさぐる。
「 …… 白い粉だけは、いらない。」
アタシが煙草を吸いながら言うと、
美咲はキョトンとした顔で、
アタシの横顔を見つめていた 。
「 …… リュウジくんに 、
何かされた … ?の、かな? 」
躊躇しながら、彼女が聞いてくる。
アタシは、「 何も 」と、即答する。
「 …… ふぅ~ん 。
なら、いいけどぉ~♪ 」
そしてまた、
彼女はバッグの中をまさぐり、
いつもとは違う錠剤を 、
2種類、アタシに渡してくる 。
満面の笑みで 。
「 …… 何、これ? … まぁ、いいや」
チラッと美咲の顔を見たけど、
アタシは美咲への質問を飲み込んだ。
別に 、何だっていい …… 。
どうなったって、いいや …… 。
そう、本気で思ってみたけど 、
アタシは、その錠剤に対して、
不安など感じなかった 。
たぶん ……、きっと 、
アタシは美咲の事を 、
ほんの少しだけ、
信用し始めてる
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