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手のひら返し
【 6 】 色恋沙汰
しおりを挟む酔っ払ったチバちゃんが 、
美咲の肩を抱きながら 、
何度も彼女の頬にキスをして 、
アタシは、そんな2人を背に 、
笑いながら、
朝の5時過ぎ、店の階段を降りた 。
エネルギッシュに光り輝き 、
影のあるアタシ達を照らす太陽 。
アタシの悪事を問いただす様な、
目をつぶりたくなるような、
純粋な、真新しい、光 。
「 じゃあね 」
アタシは2人に背中を向けたまま、
大きく片腕を振った 。
まるで、最後の別れみたいに 。
また会うくせに 。
「 おーいっ!アンジュ!
泊まるとこあんのかよ?
ウチに来て、3Pしようぜ!
なんてな~ (笑) 」
数時間前に 、
それをしてきたアタシと美咲は、
そんなチバちゃんのジョークに、
笑えなかった 。
アタシは、顔がひきつる 。
振り返らないまま 、思った 。
美咲も今 、
アタシと同じ顔をしてる、と 。
アタシのバッグから、
携帯電話が鳴り響いた 。
歩きながら、アタシは電話に出る。
「 着いたよ!アンジュ 」
「 …… うん 。今、向かってる」
リュウジ の 弾んだ声が 、
アタシの眠く、
けだるい頭を揺らす。
自分の家には、帰りたくなかった。
もう、帰りたくないと思っていた。
姉に、会わす顔が無いから。
中学生以来だな、家出するとか…。
セックスをした後 、
帰り道のタクシーで 、
リュウジに連絡先を聞かれた 。
アタシは、太客になると思って、
それ以上でも、
それ以下でもない感覚で、
彼に連絡先を教えていた 。……
…… チバちゃんの店の閉店間際 、
泣き止んだ美咲に 、
アタシは 言われたっけ 。
「 リュウジくんには、気をつけて」
美咲の目は、真剣だった 。
その意味を聞こうとしたら、
チバちゃんが、
美咲にキス攻めをして、
「 早く帰ろうぜ!俺達の愛の巣に」
とか言ってるから、
美咲に聞けなかった 。
そんなリュウジから、
すぐに連絡がきて …… 、
アタシは今 、向かっている。
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