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白夜夢
【 2 】 はりぼて
しおりを挟むさっき飲んだばかりの、
ビールの中で溶けていった白い泡が、
音もなくアタシの体に浸透し、
皮膚や、細胞にいき渡るのを、
じんわりと…… 、感じていく 。
その浸透は、
柔らかなベールのように、
アタシを優しく包み込み、
張りつめた神経を、優しく撫でる。
この、柔らかなベールを、
アタシは 、引き裂く 。
滲むように揺れながら、
細胞を眠らせようとするベールと、
アタシの眠らない意志とが、
強く軋み合い、闘う 。
その闘う意志を生み出すものは、
シドとの別れを、忘れたい 。
ただ、それ1つだけ 。
長い前髪をかき上げながら、
アタシは男3人の手から、
一万円札を3枚回収する 。
悪魔の微笑みで 。
美咲もアタシの後に続くように、
「 わぁ~い♪ありがとー♪」
男3人から、
一万円札を3枚回収した 。
堕天使の、可愛い笑顔で 。
これから何が始まるんだろう?
という、期待の視線を、
男達から浴びながら、
アタシは席から立ち上がる 。
立ち上がったアタシは、
真っ先にリュウジに耳打ちをした。
「 見てて。」
リュウジの目は、
テキーラのせいで半分閉じていて、
とろん、としている。
半分 現実で、
半分 夢だと思えばいい 。
リュウジの頬に指を這わせ、
そして、顎を爪先で撫でる 。
彼は、
嬉しそうにアタシを見つめる。
座ったまま、
はしゃいで拍手をし、
アタシに両腕を広げている美咲 。
アタシは、
そんな美咲の上に、またがった 。
彼女は、アタシを崇拝している 。
信じて疑わない彼女の瞳を、
アタシは、刺すように見つめる 。
彼女の紅潮した頬に手を当てて、
アタシは思いきり天井を見上げる。
今、ネオンが射しているのは、
綺麗に並べたショットグラス…
ではなく、
これから始まる、アタシと美咲 。
スイッチ が、切り替わる 。
彼女の頬に手を添えたまま、
小さく、柔らかな彼女の唇に、
アタシは キスをした 。
3人の男達に、
どの角度からも見えるように 。
長い髪をかき上げながら 。
アタシが勢いよく彼女に、
舌を出して、
ディープなキスをすると、
「 えっ?! そっち ?!」
と、どちらかのラッパーが驚く 。
アタシが舌を出しながら、
彼女の唇や舌を、
食べるようにキスをしていると、
それを眺めていたリュウジが、
「 おぉ~っ… 、初めて見た 。」
と言って、
驚きながらも喜んでいた 。
アタシは彼女に、
濃厚なキスをしながら、
そんなリュウジに視線を送る。
" 次は、あなたにいくから "
挑発的なアタシの視線から、
そのメッセージを受け取った彼は、
すぐに私に微笑みかけ、頷いた。
おまえら全員の欲望 を 、
アタシが今、全部 食い尽くす。
その代わり 、
シドの笑顔を、忘れさせてくれ
応援ありがとうございます!
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