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単純明快
3. 心変わり
しおりを挟む紫空の表情筋が、一瞬で固まる。
「 おい、」 サムライは、真剣だった。
「 … … あ、この曲 好き 」
紫空は、天井のスピーカーに向かって
人指し指を差した。
「 は? 」
「 何だっけ… ? タイトル。
あっ、 さよならエレジー 、だ。」
「 何の話をしとんねん。答えろや 」
ウェイトレスが、
紫空の オーツミルクラテと、
サムライが頼んだ ホットコーヒーを、
同時に運んでくる。
テーブルに置かれている間、
2人は 静かに黙って、
互いのグラスとコーヒーカップを眺めた。
ウェイトレスが去った後、
サムライは 改めて話を戻す。
「 早よ、言えや 」
「 やだよ。何?
何で、そんな事 聞くの?」
「 大事な事やから、だ 」
「 昨日も、同じ事 聞いてきたよね?
ベッドん中で 」
「 おまえっ、アホ! 声が デカい!」
「 だって、言いたくないのにさー。
好きな人の前で、
他の男の話は したくない主義なんです。
ていうか、" 好きな人の前で " って
言っちゃったじゃん!(笑)
言いたくないのに。どーしてくれんのよ 」
「 すげー動揺してんな (笑)
シンプルに 解りやすい奴やな、おまえは 」
サムライは笑った後、
コーヒーを一口飲んだ。
紫空は、深い溜め息をついた後、
ストローをくわえ、
挙動不審に両目をウロつかせながら、
オーツミルクラテを グイ飲みした。
「 で? どんな奴? 早よ言えって 」
「 やだよ、だから 」
「 理由があって、聞いてんの!!!」
サムライは、困った顔で笑う。
「 だから、理由を言いなさいってば 」
紫空は、困った顔で
オーツミルクラテを一気に吸い込み、
飲み干した。
「 あんな、詳しい話は…
まだ 言えんやけどな。
うちの会社を、探っとる奴がおって 」
「 うん。… え? 何で?」
「 知らん。だから今、俺が調べとる。
でな、俺の知り合いに、
そいつが誰なのか、
何で うちの会社を調べてんのか、
探ってもらったんよ。
まぁ、俺が信頼できる情報屋にな 」
「 なに? 何なの?」
さっきまでとは違う緊張感を、
紫空は 感じていた。
「 ほんならな、その情報屋が、
行方不明になっとんねや 」
「 ちょっ、ちょっと、怖いんだけど 」
「 おまえの、昔の旦那らしいねん 」
「 えっ … 」
紫空の指が、小刻みに震え始めた。
「 おまえ、昔の旦那に、最近会ったか?」
「 会ってない。会ってないよ。
会いたくないもん 」
紫空は、即答した。
自分の指が震えている事に、
ようやく気付きながら。
「 どんな奴やった?
言いたくないかもしれんけど… 」
「 … うん、いやー … 、うーん … 」
紫空は、久しぶりなのか、初めてなのか、
解らないぐらいの緊張感に 襲われていた。
嫌な予感が、当たってしまった 。
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