それ以上の幸せ。～ attend ～

かたちないもの

８. 空

「 … 結婚、」

しなくちゃ、いけないよな … 、これって。

" 俺で、いいんだろうか？ "

拭いきれない、
誤魔化しきれない不安が、新を襲う。


「 どっちでもいいよ、

しても 、しなくても 」


唯音は、パラパラッと
【 はじめての妊娠・出産 】を、
軽やかに めくる。

「 … そんな、投げやりな 」

新は、苦笑いしながら 唯音を見た。


「 だって、どっちでもいいんだもん。

ただ、新には 今まで通り、

そばにいてほしい。それだけ 」


彼女は いつも、
思った事を 
真っ直ぐ 言葉にして伝えてくる。


「 … ちょっと、考える 」

唯音の旦那になる人は、
" 俺 " なんかで いいのかな … ？


「 … パパ 、ママ、そういう事だから 」

唯音は突然 、大きな声で明るく言った。

「  え？ 」

新が、唯音の目線の先を追うと、
彼女は、部屋の扉を見ていた。

新も つられて、静かな扉を眺める。

「 聞こえて… 、聞いてるんでしょ？」

唯音は、たて続けに
扉に向かって 話しかけた。

「 ……… 」 新は黙って、扉を見る。




          "  トンッ  トンッ  "



「  おぉぅっ！ 」 

突然 、扉の向こうから ノックをされ、
新は あからさまに驚いた。


「 私は、パパに似て 頑固だから。

パパとママが、
子供の私を 死なせたくないように、

私も、自分の子供は 死なせたくない。

だから、新を責めないで。お願い 」



         "  トンッ   トンッ  " …



その、ノックの意味は、


" 「 新、

説得出来ないなら 帰りなさい 」 "

に、新は 思えたのだけれど、


彼女は 違った。




           「  ありがとう  」