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金糸雀
9. カナリア
しおりを挟む「 新 、私 セックス してみたい 」
早朝から晩まで
共働きな両親を持つ唯音の部屋にいる時に、
ニコニコ笑いながら、突然
彼女に言われた。
「 なななっ、何を、何を、急に?」
動揺を露にする新を見て、
唯音は、
顔を両手で隠しながら、爆笑した。
今朝、乱闘騒ぎが起きた事も、
新が 数人がかりで暴力を振るわれた事も、
いつもより長い時間
心臓に異変を感じて、痛み 苦しんだ事も、
忘れさせてくれるような 大きな声で、
彼女は 元気に笑った。
「 寝てろよ。まだ、ここにいるから 」
ベッドで横になっている唯音のすぐ隣で、
新は腰を降ろして座り、
タオルケットを掛け直してあげる。
唯音は、ずっと 新を見つめていた。
「 今日も、かっこいいね 」
唯音は、新の優しさに見とれていた。
「 かっこ良くない。寝なさい 」
新は照れて 早口になり、顔を反らす。
「 私ね、新が 大好きなの 」
「 … 知ってるよ。
ガキの時から聞かされてんだから 」
ベッドの上に座ったまま、
唯音の部屋の中を ゆっくり見渡した。
「 今日、私を守ってくれて…
ありがとう。」
「 うん… 、いや、あれは 守れてないな 」
「 ううん、守ってくれた。ちゃんと。
すごく… 怖かったけど、でも、
新 、かっこ良かったよ。ありがとう 」
怖かった出来事を思い出したのか、
唯音の息が、言葉が
途切れ途切れになる。
新は振り返り、彼女の顔を見た。
彼女は、ずっと 新の事を見つめていた。
「 … してみたいの。セックス 」
懲りずに言い続ける唯音に、
新は 笑ってしまう。
「 なーーんで?」 変な声が出た。
恥ずかしいぐらいに、変な言い方で。
「 新が、好きだから… 」
「 … 無理だよ 」
「 何で… ? 他の女の子としたいから?」
「 そうじゃねーだろ。何でそうなる?」
「 新は、私の事 好きでしょう?」
" 私の事、好き? " ではなくて、
" 私の事、好きでしょう? " の言い方が、
彼女らしい と新は思った。
「 好きだけど、… カラダ! 今の体!」
新は、語尾を強めて言い聞かせる。
「 … 何を言ってるの?」
唯音は、不思議そうな顔で聞いてくる。
「 おまえが 何を言ってるんだよ (笑) 」
「 わかんない。何で?」
「 唯音、心臓 苦しいだろ?」
俺だって 今、無性に! 体中が 痛い。
「 心臓なんて… 、毎日 苦しいよ 」
唯音は、
笑顔を絶やさず 新に言い聞かせる。
「 ………… 」
毎日、毎日 苦しい心臓なんて、
いらないよな…
新は、悲しい気持ちになっていく。
「 恋をしているから。毎日、苦しい 」
唯音は、元気に そう言った。
「 おまえ、さっきから 何言ってんだ?」
「 私さ、このまま… 、このまま ずっと、
好きな人と そういう… セックスとか、
出来ないまま、死にたくないの 」
何て答えていいのか、
まだ幼い新には 難しい言葉だった。
黙って、うつ向いている新の手を、
唯音は、
ギュッと 力を込めて 握ってきた。
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