それ以上の幸せ。~ attend ~ 

rosebeer

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金糸雀

4. カナリア

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幼なじみの あいつは、
小学生だったガキの頃から、
高校生になった今も、
毎朝 必ず
俺の家で朝ごはんを食べてから、
一緒に登校する。

それが、日課になっていた。



「 唯音いとちゃんは、

いつも沢山食べるのに 太らないね~ 」


おかわりの茶碗に、
3杯目の米をのせた新の母親が、
唯音に手渡しながら 感心する。


「 食べても太らないのは、ありがたい 」


唯音は、ニコニコ笑いながら、
正面に座る新の顔を見た。


「 新、痩せ過ぎだよ!

ちゃんと食べないと倒れるよ!」

母親と同時くらいに、唯音が言う。


「 俺は、食べたら太るの。

おまえとは違うの 」

新は、味噌汁と冷奴だけ食べて、
箸を置き 気まずく笑う。


「 そんなに痩せてて、

女の子みたいじゃん! 私を守れるの?」

米を片側の頬に詰め込みながら、
唯音は 説教口調で言ってくる。

この会話、もう何年もしてる。
よく飽きないな… と、新は思った。


「 何から守るんだよ?」

反抗期真っ盛りな新は、
金髪に染めた長い前髪をいじる。


「 いろんなものからだよ 」

「 例えば?」

「 ナンパしてきた人達から、とか 」

「 逃げりゃあいいだろ 」

「 捕まったら、どうするの?」

「 そんなシチュエーション無ぇだろ 」


「 私を、守る気はないの?」

「 ……… 」

新は、朝からのマシンガントークに、
若干の頭痛を感じ始めていた。


「 … 私 、走れないんだよ?

逃げたくたって、逃げられ… 」

「 わかったよ、解った、解った!」

「 守ってくれる… ?」

「 守る、守る。守りますよ!」


投げやりに そう言いながら、
新は 座布団から立ち上がる。

「 ほら、いつまで食ってんだよ?

行くぞ。

いつも、遅刻ギリギリなんだから 」

立ち上がった新は、
頬っぺたに ごはん粒を付けたまま、
急いで食べ始める唯音を見て、
少しだけ笑った。



こんなに元気に見えるのに、

こいつの胸には

痛々しいぐらいに、深く 長い 、

消えない
手術の傷痕きずあとがあるんだよなぁ…


いまだに、新は それを
信じられない気持ちでいた。


心臓の手術をしても、
唯音の心臓は 良くはならなかった。


" 現状維持いじ "


彼女は、体育の授業で 走った事は、

一度も 無かった。








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