65 / 105
金糸雀
4. カナリア
しおりを挟む幼なじみの あいつは、
小学生だったガキの頃から、
高校生になった今も、
毎朝 必ず
俺の家で朝ごはんを食べてから、
一緒に登校する。
それが、日課になっていた。
「 唯音ちゃんは、
いつも沢山食べるのに 太らないね~ 」
おかわりの茶碗に、
3杯目の米をのせた新の母親が、
唯音に手渡しながら 感心する。
「 食べても太らないのは、ありがたい 」
唯音は、ニコニコ笑いながら、
正面に座る新の顔を見た。
「 新、痩せ過ぎだよ!
ちゃんと食べないと倒れるよ!」
母親と同時くらいに、唯音が言う。
「 俺は、食べたら太るの。
おまえとは違うの 」
新は、味噌汁と冷奴だけ食べて、
箸を置き 気まずく笑う。
「 そんなに痩せてて、
女の子みたいじゃん! 私を守れるの?」
米を片側の頬に詰め込みながら、
唯音は 説教口調で言ってくる。
この会話、もう何年もしてる。
よく飽きないな… と、新は思った。
「 何から守るんだよ?」
反抗期真っ盛りな新は、
金髪に染めた長い前髪をいじる。
「 いろんなものからだよ 」
「 例えば?」
「 ナンパしてきた人達から、とか 」
「 逃げりゃあいいだろ 」
「 捕まったら、どうするの?」
「 そんなシチュエーション無ぇだろ 」
「 私を、守る気はないの?」
「 ……… 」
新は、朝からのマシンガントークに、
若干の頭痛を感じ始めていた。
「 … 私 、走れないんだよ?
逃げたくたって、逃げられ… 」
「 わかったよ、解った、解った!」
「 守ってくれる… ?」
「 守る、守る。守りますよ!」
投げやりに そう言いながら、
新は 座布団から立ち上がる。
「 ほら、いつまで食ってんだよ?
行くぞ。
いつも、遅刻ギリギリなんだから 」
立ち上がった新は、
頬っぺたに ごはん粒を付けたまま、
急いで食べ始める唯音を見て、
少しだけ笑った。
こんなに元気に見えるのに、
こいつの胸には
痛々しいぐらいに、深く 長い 、
消えない
手術の傷痕があるんだよなぁ…
未だに、新は それを
信じられない気持ちでいた。
心臓の手術をしても、
唯音の心臓は 良くはならなかった。
" 現状維持 "
彼女は、体育の授業で 走った事は、
一度も 無かった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる