それ以上の幸せ。～ attend ～

マジックアワー

４. 薄明

自分と比べてしまった、なんて言ったら
おこがましいけれど。

それでも、私には粋さんが、
ただの他人には 思えなかった。


「 あなたも、苦労したのね… 」

粋さんは私に、
それ以上 何も言わなかった。

たぶん… きっと、粋さんは 解っている。

私の幼少期の頃の 惨劇さんげきを。


「 … … みんな、苦労してるんやで。

おまえだけやない 」

サムライは、
何かを思い出したかの様に、
目線を 私から外した。


「 … あなたのお父様は、

旅芸人 だったでしょう？」


粋さんが、彼に声を掛ける。

彼の肩が一瞬、ビクッ と動いた。


「 … 何でや？ 何で、解るん？」


「 亡くなったお父様と、

お父様と一緒に過ごされた方々が、

今 私の目の前にいるからよ 」


「 親父っ？！  親父がいるんか？ 今！」

「 いるわよ。時代劇の格好をされて 」


サムライが、
辺りを慌てながら ぐるぐると見渡す。

「 おらんやん！」

「 いるのよ。私には見えるの。

あなたの隣に… 、あっ… 、

今、どこかに行ってしまったわ 」

「 えぇ～ぇ～ …  怖っ 」


私は、全然 怖くなかった。
むしろ 少し、笑ってしまった。



だって、私にも 見えていたから。



     私は、粋さんから さっき、


     きっと、粋さんの力を分けられた。



だけど、それは サムライには言わない。


彼はきっと、私を 怖がるから。