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マジックアワー

1. 薄明 ( はくめい )

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「 何 話してるの? 深刻そうに 」

お手洗いから戻った私は、
昨夜見た、
私を助けてくれた時の、
あの 真顔の彼の表情に、驚かされる。


「 帰るぞ 」

私が戻ってきた事を確認すると同時に、
彼は立ち上がり、
テーブルの上に のせていたスマホを
バッグにしまい込んだ。
顔が、怖い。

「 どうして? もう少し居たいな 」

不思議がりながら、私がまた椅子に座る。

「 立て。帰るぞ 」

緊迫した雰囲気を、彼だけが漂わせる。

「 手を出して。むらさきさん 」

粋さんに そう呼ばれ、
私は驚きながら、
サムライを見ていた顔を
粋さんの座る方へと切り替える。


「 !! … 私の名前、どうして?」

「 気味が悪い。 帰るぞ、紫空 」

また、はっきりと…


怒り口調の彼を チラリと見た後、
私は 粋さんに言われた通り、
ゆっくりと 片手を前に差し出した。


「 両手を、両手を私に出してくれる?」

私は素直に、両手を差し出す。

そんな私を見て、
サムライは ため息をつき、
呆れた顔で また椅子に座り直した。


「 紫さん、今 何か感じる?」


粋さんは、私の両手を握り、
真っ直ぐに
綺麗なオッドアイで 私を見つめる。


「 うん… 。何だろう、感じる 」


「 何を 感じるかしら?」


「 … 薄い、まくの、そう 」



「 良かった。やっと、出逢えた 」


安心した顔で、粋さんは微笑んだ。
少し、泣きそうな顔にも見える。

「 何ですか? これ 」

サムライは、
" 気味が悪い " と 言っていたけど、

私には、
" 気持ちいい " 感覚だった。

私がトイレに行っていた間、
彼と 粋さんが話していた事が、
気になりだしていく。

「 何しとんねん 」

彼は、粋さんの顔を にらみ続けていた。

「 気持ち悪いわよね。あなたには。

でもね、嫌じゃなければ、

少しだけ… 
私の話を 聞いてもらえないかしら?」

粋さんは、サムライの顔を見つめた。


「 嫌や 」 

やはり、はっきりと 彼は言う。

「 聞きます。聞きたい 」

「  紫空! 」

私の声にかぶせるように、彼は怒った。

どうして、彼の機嫌が急変し、
急に怒り出しているのか、
私には 全くわからない。


「 だって、気にならない? 色々と。

聞いた方が 早いじゃない 」

「 せやけど… 」

警戒心をき出して、
私と粋さんの顔を 交互に見る彼。


「 私は、

あなた達の " 敵 " ではないわ 」


粋さんが 彼を落ち着かせようと、
言葉を選んでいるのが、
握られた両手からも よく伝わっていた。






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