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アウトライン
3. 輪廓
しおりを挟む" 「 特に決めてない (予定はない) 」 "
と、サムライは言っていたけど、
シャワーを浴びて 髪を乾かした私に、
パンを焼いて、
ベーコンエッグを焼いて、
サラダを作って、
アイスカフェラテを作って、
「 早よ来い 」と、彼は 高速手招きをし、
私を テーブルの前に座らせた。
「 すごいね… 。作ってくれたの?」
私の為に? 胸の奥が、痛くなった。
両手を合わせて 喜ぶ私に、
「 何も すごくない。焼いただけや 」
と、サムライは素っ気なく言った。
「 ホテルの朝食みたい… ありがとう 」
テーブルを挟んだ向こう側で、
立ったままコップで水を飲む彼に、
私は、心の底から微笑んだ。
「 大袈裟やな。早よ食え 」
コップに唇をあてたまま、
照れ笑いを隠す彼を見て、
私は、この人に 一目惚れしたんだな、
と 素直に感じた。
「 美味しい。ほんとに美味しい 」
ベーコンエッグの塩加減が、
絶妙過ぎて、私の好きな味だった。
「 美味いか?」 誇らしげな彼は、
立ったまま、
私を見守るように 見下ろしている。
「 食べないの?」
彼を見上げながら聞くと、
「 朝は、食わん。昼は、たまに食う。」
と言い残し、彼は台所へ向かい
フライパンを洗い始める。
「 だから、痩せてるのか… 」
食べながら、
洗いものをしている彼を
ジッ… と見つめる。
「 え? 何て? 何か言うたか?」
水道の蛇口を閉め、
洗いものを一旦中断し、彼は 私を見た。
「 ううん。何でもない。美味しいよ 」
彼は、フッと微笑み
また、洗いものをし始める。
彼がいる方向とは逆の、
レースのカーテンが掛かった窓を
私は見上げた。
爽やかな朝だった。
スズメが、綺麗な声で ずっと鳴いてる。
ここ一週間… 、私は ずっと、
笑う事すら忘れていた。
風俗店から借りて 過ごしていた寮は、
無駄に広くて、殺風景な部屋だった。
何も感じず、何も考えず… 、
" 1年間だけ " という約束で
働き始めた仕事だったから。
その生活の中に、
何も 望むものなど無かった。
空が青いとか、風が気持ちいいとか、
スズメの声が 可愛くて綺麗な声だとか、
そんなの どうでも良かったんだ。
それなのに、彼は 急に現れた。
12時間前には、出逢ってなかった。
12時間後の今、
私は 彼の部屋で 彼が作ってくれた、
ホテルみたいな朝食を食べている。
レース越しに見える、
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近づく彼の気配を、片側で感じながら。
「 早よ食え。出かけるぞ 」 … …
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