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カムフラージュ
10. 右か、左か
しおりを挟む「 ど、どういう意味?」
慌てるように、新はカップに唇をつけ、
初めての マロウブルーを味わった。
青かった頃のこれを、
飲んでみたかったなぁ… と思いながら。
「 ふふっ♪ 新ちゃんが、
1番よく 分かってるくせに~ 」
嫌みじゃない言い方なのは、
ちゃんと感じていた。
エリーの 癒される話し方が、
嫌みじゃない事を 解らせてくれたから。
なのに、
「 この部屋に、
何人の男を連れ込んだんだよ?」
新は、嫌みな言い方でエリーに聞いた。
何故だか解らないけれど、
エリーを困らせたい と思ったから。
今、新が 動揺を隠せないみたいに。
「 何人かなぁ?」
エリーは、
手のひらを 自分の顔の前に出し、
綺麗な指を1本ずつ折り 数えていく。
その指先を、新は 黙って見つめ続けた。
「 3人、くらい? うん、3人だ 」
エリーは、にっこりと微笑む。
何も 困ってなどいない。
「 引っ越してきたばっか? この部屋 」
新が聞くと、
「 そんな事ないよ~! 2年目かな 」
笑顔を絶やさず、
新の目を見て 答えるエリー。
「 少なくない? モテるだろ?」
「 モテるねぇ~ 」
エリーは、堂々と笑いながら即答する。
「 でもね、自分の部屋には
特別な人しか入れたくないじゃない?」
と、真剣な口調に切り替わり、
付け足した。
「 俺は、特別なの?」
「 新ちゃんは、特例 」
「 特例?」
マロウブルーに、レモンを2滴足らし、
色の変化を楽しむ余裕もなく、
新は、エリーの顔を見上げた。
「 副社長命令、だからね。」
「 あっ、そっか… 」
少しだけ、2人の間に沈黙が流れた。
「 でもね、嫌じゃないよ?
嫌な人は、部屋には入れない。」
沈黙をかき消したのは、
エリーの方だった。
その一言が、新には すごく嬉しかった。
少なくとも、
自分が受け入れられた事を知れたから。
「 ありがとう。
俺… 、エリーが好きだよ?」
新は、自分が何故そんな事を言ったのか、
解らないまま 彼女に伝えていた。
「 うん、ありがとう。
私も、新ちゃんが好きだよ。」
「 えっ! ほんとに?」
「 うん。素直そう… 、ていうか、
素直だしね。話しやすいから。」
エリーは、
マロウブルーを もう一口飲んでから、
「 新ちゃんは、
副社長に スカウトされたんだよね?」
と、話題を自然な流れで変えてしまう。
「 うん… 。え? あ、いいや… 」
" もっと、追求したかったのに "
自分を好きになってくれた理由を、
そして、その " 好き " は、
どんな意味の " 好き " なのか … ?
" もっと、追求したかったのに "
夏休み中に、
親戚の家に泊まりに来た少年の様に、
居心地の悪さや 緊張感を、
新は、感じ始めていた。
「 私もね、
副社長に スカウトされて入ったの 」
「 そう、なんだ … ?」
「 色々、あってね。
そんな時に、副社長に言われたんだ。」
エリーが、急に 会話を変えたのには、
ちゃんと【 意味 】があったんだと、
この時の新には、気付けなかった。
「 何て、言われたの? 副社長に。」
本当は、そんな事よりも、
聞きたい事や 話したい事は
沢山あった。
だけど新は、それらを 後回しにした。
「 人生は、" 右か、左か " で
決まるもんやない。
" 右か、左か " の二択しか無い?
そんな訳はない。
真ん中を歩いてみ? ほんで、
振り返ってみ? そしたら、」
「 自分が歩いて出来た
" 初めての道 " が、必ず出来てるから。」
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