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カムフラージュ
8. 右か、左か
しおりを挟む「 新に、女装させるんでしょ?」
いつも変わらず綺麗に片付いてある、
サムライのデスクに近づき、
紫空は 腰に手をあてながら聞いた。
「 そうや 」
パソコンを打ち、
目線は 画面に向けたまま、
サムライは淡々と答えた。
少し、語尾を上げながら 楽しそうに。
「 何で わざわざ… 、新なの?
普通に、エリー以外の、
別の女性を使えばいいじゃない。
効率いいの? このやり方って 」
紫空の問いかけに、
サムライは ようやく
目線を画面から外し、紫空を見た。
「 新だから、やらせたいんや 」
「 どうして?」
「 あいつにしか出来ひん事やから 」
「 … あの子、あれ なんでしょ?」
「 んー… 、その話は、また後でな 」
" 仕事の邪魔すんな " と言わんばかりに、
サムライは 右手をヒラヒラさせ、
追い払うように 紫空に手を振る。
「 … わかった 」
そう言うしか無い紫空は、
ルブタンの6cmヒールを鳴らし、
サムライのデスクに背を向け、
ゆっくりと歩きだした。
一度だけ、振り返って。
ー … 「 副社長!」
エリーが、
余裕の笑みを浮かべながら、
サムライのデスクに向かって歩き、
両手をデスクの上にのせる。
「 おう、なんや?」
「 副社長の言う通り、食いつきました 」
「 せやろ?」 サムライは笑った。
エリー以上の、余裕な笑顔で。
「 何て言うとった?」
「 処女ですか?、って 」
「 は? 」
「 妹さんは、処女ですか?、って 」
エリーは、
躊躇なく伝える。
「 何やそれ! 気色悪っ!」
「 とりあえず、
妹は カナダに留学中だから、
1ヶ月後に帰ってきた時に、
私も同行して食事に行く流れに。」
「 ほう。カナダねぇ、ええ所やな。」
「 アドリブで、とっさに… 。
なので、1ヶ月の間に新ちゃんを… 」
「 大丈夫やろ。1ヶ月あれば 」
サムライは、
デスク上にある小さなカレンダーに
目を向けて頷いた。
「 本当に…、本当に、大丈夫かな?」
エリーは少しだけ、顔を曇らせる。
「 俺を信じろ。
あとな、新は出来る奴やから、
エリー、よろしく頼んだで。」
「 … わかりました。やってみます。」
そう言うしか無いエリーは、
ため息をついた後、
副社長のデスクから自分のデスクへと、
ゆっくり向かって歩いた。
yellow の 6cmヒールを鳴らしながら。
一度も振り返らずに。
「 楽しみやなぁ、1ヶ月後 」
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