14 / 105
カムフラージュ
3. 右か、左か
しおりを挟む「 こんにちは、塚田さん。
お待たせしました。」
打ち合わせ室の椅子を引き、
既に座って待っている男に声を掛け、
エリーは席についた。
「 こんにちは 」
塚田は、
うつ向いていた顔を上げ、
エリーの微笑みから視線を外さない。
「 どうしても、エリーさんに… 、
電話や、メールじゃなく… 、
直接 会って、相談がしたくて… 」
充血した目をギラつかせながら、
塚田は膝の上にのせていた両手を、
テーブルの上に置き、
ギュッと 握り合わせた。
「 は、はい…。聞きますよ。
聞かせてください。」
目を充血させ、鼻息を荒くさせた、
そんな塚田の真剣な顔つきに、
エリーは 一瞬、
「 怖っ 」と
口に出しそうになってしまう。が、
無理に それを飲み込んだ。
「 エリーさんって、
いつも いい匂いがしますよね!!」
「 え? 」
「 香水?
何の香水を付けてるんですか?」
塚田は目を閉じ、
エリーから自分の鼻の穴へ向けて、
片手をひらひら揺らしながら、
その " いい匂い " とやらを堪能する。
「 えっ、あっ… 、
香水は つけてません。」
ひきつり笑いを隠すように、
エリーは口元に手をあてて、
クスッと可愛らしく笑った。
「 体臭?! 体臭なの?!」
ただでさえ荒い鼻息を、
限界まで荒くさせながら、
顔を赤らめて 塚田は聞いてくる。
上半身を 前のめりにさせながら。
エリーは 一瞬、体を後ろに引く。
「 たい、体臭… 、なのかな?
たぶん、ヘアミストかな… ?」
しゃーちょぉーー! 怖いよぉぉー!!
助けを求める心の叫びが、
エリーの顎先まで上がってくる。
「 ヘア、ミスト? 何ですか? それ 」
「 ヘアコロン? みたいなやつです。」
「 あぁー、髪につける香水ですね!」
「 香水… 、では ないんですけど… 」
少しの間、沈黙が続く。
エリーは、テーブルの下で
膝の上に置いた手を握り、拳を作る。
落ち着け… 、落ち着け… 私…
私 は 、
プロの コンシェルジュなんだから… 。
「 では、本題に入りましょうね 」
せっかく作ったエリーの微笑みを、
「 どこのブランドですか?香水、髪の 」
曇らせるように、塚田が畳み掛けてくる。
「 えっとー … 、CHANEL です。
CHANEL の、Chance です。」
それでも、
真面目に 優しく答えてあげるエリー。
「 シャネル!!
エリーさんのお人柄に ピッタリだ!」
「 あ、社長も使ってます。
では… 、本題に入りましょうね 」
エリーは 笑いながら、
つい1時間前に聞いた声を
思い出していた。
" 「 男落としのプロが! 」 " …
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる