それ以上の幸せ。~ attend ~ 

rosebeer

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カムフラージュ

3. 右か、左か

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「 こんにちは、塚田さん。

お待たせしました。」


打ち合わせ室の椅子を引き、
既に座って待っている男に声を掛け、
エリーは席についた。

「 こんにちは 」

塚田つかだは、
うつ向いていた顔を上げ、
エリーの微笑みから視線を外さない。


「 どうしても、エリーさんに… 、

電話や、メールじゃなく… 、

直接 会って、相談がしたくて… 」


充血した目をギラつかせながら、
塚田は膝の上にのせていた両手を、
テーブルの上に置き、
ギュッと 握り合わせた。

「 は、はい…。聞きますよ。

聞かせてください。」

目を充血させ、鼻息を荒くさせた、
そんな塚田の真剣な顔つきに、
エリーは 一瞬、
「 怖っ 」と
口に出しそうになってしまう。が、
無理に それを飲み込んだ。


「 エリーさんって、

いつも いい匂いがしますよね!!」

「   え?  」

「 香水? 

何の香水を付けてるんですか?」

塚田は目を閉じ、
エリーから自分の鼻の穴へ向けて、
片手をひらひら揺らしながら、
その " いい匂い " とやらを堪能する。


「 えっ、あっ… 、

香水は つけてません。」

ひきつり笑いを隠すように、
エリーは口元に手をあてて、
クスッと可愛らしく笑った。


「 体臭?! 体臭なの?!」

ただでさえ荒い鼻息を、
限界まで荒くさせながら、
顔を赤らめて 塚田は聞いてくる。
上半身を 前のめりにさせながら。

エリーは 一瞬、体を後ろに引く。

「 たい、体臭… 、なのかな?

たぶん、ヘアミストかな… ?」


しゃーちょぉーー! 怖いよぉぉー!!

助けを求める心の叫びが、
エリーの顎先まで上がってくる。

「 ヘア、ミスト? 何ですか? それ 」

「 ヘアコロン? みたいなやつです。」

「 あぁー、髪につける香水ですね!」

「 香水… 、では ないんですけど… 」


少しの間、沈黙が続く。

エリーは、テーブルの下で
膝の上に置いた手を握り、拳を作る。


落ち着け… 、落ち着け… 私…

私 は 、

プロの コンシェルジュなんだから… 。


「 では、本題に入りましょうね 」

せっかく作ったエリーの微笑みを、

「 どこのブランドですか?香水、髪の 」

曇らせるように、塚田が畳み掛けてくる。


「 えっとー … 、CHANEL です。

CHANEL の、Chance です。」


それでも、
真面目に 優しく答えてあげるエリー。

「 シャネル!!

エリーさんのお人柄に ピッタリだ!」


「 あ、社長も使ってます。

では… 、本題に入りましょうね 」


エリーは 笑いながら、

つい1時間前に聞いた声を

思い出していた。


" 「 男落としのプロが! 」 "  …







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