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ダーヴィッツ

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3章『革命』

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母さん
いや
助けたかったのに……
傘持っていきなよ
お前、何者だ……?
あれ、いつだっけ
お姉ちゃん
誰……?
辛くないのですか
帰りたい!
ここで何をしている
反逆者め!
ひっ……死にたくない!
まったく、お前ら……
どっから来たの?
ふざけんな
前見ろよ、前
いくつだよ、アンタ
奴隷の分際で!
明日は良い日だよ、きっと
それ、何?
……裏切るのか
痛い、痛い
殺さないでっ!
嫌だぁぁぁぁぁ!
死にたくない!
死にたくない!
消える!存在が……!
否定するのか……
忘れられるの……?
お前のせいだ!
お前さえ、いなければっ!
サナさんなら、いいよ


だから、私達もコイツから奪っていいんだ


『それ』がジン君を私から絡め取る。彼は脇腹を撃ち抜かれ、私は彼を助けるべく手を伸ばした。でも届かない。やがて『それ』は彼の口に自分の舌を流し込み、ジン君の口内を犯す。彼の吐いた血を啜り、傷口を更にえぐる。私は狂いそうだった。

『それ』をなんとか祓うと、『それ』が今度は私にまとわりついてきた。意識通りに身体が動かない。むしろ、私以外の意識が介在して身体が勝手に動き始める。やめて。身体が大和刀を握り直し、『存在否定(カオス)』を発動する。やめて……。身体が勝手に動く。意識はあるのに身体が止まらない。

あぁ、でも楽しい。

目の前にシキさんが立ち塞がる。『前人未踏領域(サクリファイス)』を発動し、シキさんの究極奥義を『絶対領域(サンクチュアリ)』で防ぐ。カウンターでシキさんを討とうと身体が再び動こうとした時、ジン君が目の前に現れる。私の『存在否定(カオス)』を纏った大和刀が彼の首をはねそうになっ……





「……っ!!」

私はベッドから跳ね起きた。冷や汗が止まらず、フーッフーッっと息が荒い。悪夢から醒めたがとにかく恐い。何故ならそれが事実だからだ。後追いでなぞるようにやって来る現実を理解する事がとてつもなく恐ろしい。鮮明に記憶が甦り始め、冷静になればなるほどそれをきっかけに過呼吸になる。エバンスゲートの背信、ロバート君の利敵行為、シキさんの死、ジン君への……。息が苦しい。空気を吸っているのに、酸素がまったく全身に回らない。

「サナさん!!」

ジン君が起き上がった私に駆け寄ってきて手を握ってくれる。目線を私の高さになるように腰を屈めて私の事を心配していた。とにかく私は必死で、彼の手に縋る様にしがみついた。恐い、恐い、恐い、……この得体の知れない感情は何?

「大丈夫?!……サナさん?」

ジン君の声を聞いて彼の体温を感じ、徐々に初めての感覚に陥る。それは決して安堵などという安直なものではなく、どす黒く確かに私の奥底に強くあったものは、独占欲と性欲。

「……っ」

私はジン君をベッドに引き倒し片手で両手を押さえた。そして、もう片方の手で彼の頭を引き寄せ唇を塞ぐ。彼の唇に舌を這わせて無理矢理舌をねじ込み、歯を舌先でなぞりながらジン君の舌を吸う。暗がりの病室はこれで何回目だろう。でも、ジン君がどんな顔をしているか不思議と解る。

ふと、右手に違和感を覚える。どうやら右手首が折れていた。意識をすると確かにギプスが巻かれた右手に少しずつ鈍い痛みを感じ始める。私はそれすら苛苛する。あぁ、煩わしい。仕方無くジン君の後頭部を押さえていた左手で彼の隊服のネクタイを緩ませ、両手を縛る。ジン君は途中で焦ったが、私が再びキスで口を塞ぐ。動かしづらい右手で彼のシャツのボタンを外していたが、結局上手く外れなかったから力任せにシャツをボタンごと引きちぎった。

指を露わになったジン君の胸筋から腹筋の筋に這わせる。やがて、脇腹の辺りに大きなガーゼがあり血が滲んでいる事に気付いた。『あの女』がジン君を犯しているシーンが脳裏に甦る。駄目だよ。私のものなのに。あんな女のにおいなんか。

「サナさ……!」
「いいから」
「……待って、待って!」
「五月蝿い。黙って、私に犯されて」

ジン君の舌を吸いながら強く噛んだ。彼の血が滲み、お互いの口内で鉄の味がする。再び左手で彼の後頭部を押さえたまま、右手でズボンを下ろし下腹部を撫で始めた。ジン君のそれは既に勃起しており、下着の上から触っても解るくらい大きくなっていた。唇を離すと、暗がりでもジン君が涙目でビクビク反応して赤面している姿が視える。いつもはカッコイイのに。私の前ではこんなにカワイイ。

「……っ……あっ」
「……」

再びあの情景が浮かぶ。あの女に取られた。私のものなのに。私はもう我慢出来なくなっていた。上書きしなきゃ。ジン君は私の。ずっとずっと探していた。やっと見つけた。そしてようやく手に入れた。もう離さないと決めたのだから、だからもっと深く残さなきゃ、私のマーキングを。

腕に刺さっていた点滴針を抜き、病衣のズボンを脱ぎ、ショーツも降ろした。そしてジン君の位置を確認すると、私は腰を落とした。

「……っ」
「サ……!」
「黙って」

下腹部に鈍い痛みが走る。既に濡れてはいたが、この世界線で私は処女だった。その久々の痛みにすら嬉々とする私はきっと歪んでいるに違いない。今、私は完全に自分に酔っている。光悦な表情で腰を動かしていると、徐々に痛みより快感が追い越した。ジン君は私のものなの。私しか触れることは許されない。

腰を動かしながら良い所を更に探す。浅い所と深い所にそれぞれ見つけ、そこを擦るように出し入れを続ける。下腹部を擦り、そのまま子宮を押し上げる。快感と痛みと興奮で脳が擦り切れそう。少しずつ感覚が研ぎ澄まされていく。動きながらジン君が熱く固くなっているのも感じた。一番奥に届き子宮全体が浮く瞬間が堪らなく気持ちいい。

「んっ……イク」

お腹が波打つ様に痙攣して腰が浮く瞬間が来る。子宮が下がりジン君のそれに吸い付いているみたい。先程より当たっている事がなんとなくわかる。その瞬間、彼のものが脈打ち子宮の辺りがじんわりと熱くなるのを感じた。あぁ、満たされるような多幸感がやってきた。しばらくしてから腰を浮かすと、子宮からジン君の精液が流れ出てくるのが解る。

まだまだ足りない。少しベッドの後ろに退がり、私は髪を耳にかけながら彼のそれを舐め始めた。ジン君は少し抵抗したが、しばらく私が続けていると、舌が当たる度に甘い吐息を漏らした。その様子を眺めながら反応を楽しんでいると、自分の傷から溢れる彼の精液を指で絡めとり、ジン君の口の中にその指をねじ込む。彼の精液と私の血が混じった赤白いそれをジン君は苦しそうに、だが確かに舐めてくれた。

しばらくして私はそれを引き抜き、再び彼のものを咥えると同時に、彼のお尻を浮かせて中に指をまずは一本差し込んだ。ジン君の腰が自然に浮く。あぁ、堪らない。彼のものを吸ったり舐めたりしながら、指をゆっくりと出し入れすることを繰り返した。か細いジン君の声が聞こえてくる。我慢なんてしないで。私は勢いよく彼のものを吸うタイミングで指をもう一本ねじ込んだ。そしてお腹側の壁を指の腹で乱暴に押さえつける。少し張った部分を2本の指で抉る。

「……っ……ん……ん」

2回目の絶頂。指を引き抜き、やがて身体を起こすと、彼の精液を口に含んだまま自分の舌をジン君の口内にまたねじ込む。甘いようなしょっぱい味とにおいが充満する。唇を離すと、私は膝を立てながら今度はベッドの上部に上がっていった。そして、ジン君の顔の前に腰を落として、左手で彼の頭を掴む。

「舐めて」

ジン君は少し躊躇ったけど、口を軽く開けると自分の舌を差し出したので、私は完全に腰を落とした。陰核に彼の舌と歯が擦れてその刺激に頭がクラクラする。いや、それよりもジン君が従順に私の陰部を舐めている事が堪らなく愛おしい。たまに毛の部分に舌が絡まったり、少し苦しそうにしながらも一生懸命尽くしている彼の顔を見ると、一層犯したくなる。もっとその顔を見せて。舌を這わせたり、唇で吸ったり、キスをしたり。何度か舌先が触れた時に軽く絶頂を迎える。

「いい子だね」

私は腰を浮かせて再度ジン君にキスをする。そして再び彼のものが充血し始めると、私はもう一度腰を落とす。私も上を脱ぎブラも外す。

「消えない」

私は腰を動かし続ける。
首筋に紫色の内出血が何箇所も残す。
何度もキスをする。
唾液を混じえながら舌を絡ませる。
彼の鎖骨を噛み歯型を遺す。

「消えないっ……!」

それでも、あの女の鮮烈な記憶は消えなかった。私に見せつけるようなキス。それを思い出す度にジン君に何度もキスをする。上書きしなきゃ。何度も何度も何度も何度もキスをする。私のものなのに。ジン君は私のもの。それなのにあの女の存在が頭から消えない。どうしてキスなんかされたの。この事実を否定したい。あの女の存在を否定したかったのに。

誰かに取られるくらいなら、いっそ私の手で殺してしまえば、一生、私のものになるのかな。

私は腰を振りながらジン君の首に両手をかけて絞めた。彼の首筋は思ったより細くて、親指が喉元に真っ直ぐかかり、他の指が頸動脈をしっかり覆った。徐々に力を込めるとジン君のそれは更に充血し、私の中も締め付けをました。

「イけ、イけ、逝け……」

苦しそうに私を見るジン君の首を締めながら、私は腰を振り、キスをする。彼の身体が震えた。3回目。大きくなり波打つそれを離せない。お腹がじんわり熱い。私の子宮は満たされていた。

それでも消えない。
こんなに好きなのに。
誰かに奪われるなら殺したいくらい好きなのに。
ジン君は私のものじゃない。
何度やり直しても。
何度否定しても。
ジン君は……。

私は彼の両手を縛っていたネクタイを緩め、そして、ジン君の両手を私の首にかけさせる。

「……殺して」
「……」

ジン君はふるふると首を振った。

「殺してよ……」

ジン君は息を整えながら何も言わずに、私の頭と背中にその両手を回し、グッと自分に引き寄せた。彼の心臓の音が聞こえる。私の呼吸がジンの胸で跳ね返り、私も生きていることに気付く。

私はエゴイストだ。世界を否定してでもこの人が欲しい。そして、この人にも同じくらいに私を欲してほしい。ただ、それだけのために私は生きている。

なんて、短絡的で醜いエゴなんだ。
でも、私の存在証明には十分だ。

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