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ダーヴィッツ

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3章『革命』

露払い ※性的描写に注意

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シャインは最期に私に向かって笑いかけた。同時に彼女の目尻から滴が落ちる。私は綻び始めた彼女の身体をそっと抱き締めた。小さい身体。華奢な身体ながら、しっかり生きてきた女の子。シャインのおでこにキスをする。自己満足かもしれない。それでも、彼女の最期を見送るのは私で無ければならない。またひとつ罪を背負う。これからシャインの事は世界で唯一、私しか覚えていないことになる。あの子の名前は私が付けた。鮮烈に彩やかに輝く人生となればと祈りを込めて。歴史から否定されたこの子を私は一生覚えていく。彼女が生きた証は私なのだ。シャインの身体はとうとう人の輪郭から溢れた。私の腕の中で光と共に霧散する。

「おやすみ。シャイン……」

私は涙を拭い、再び姿隠しの面とフードを拾いあげ装備すると、その場に背を向ける。私は迷っては行けない。自分の否定したことを肯定するために、1度選んだ道をこのまま進まなければならない。振り返ると、既にジン君の絶対領域(サンクチュアリ)は完成していた。その領域内でジン君は怪物の身体を打ち砕いた。だが、ジン君も既に身体の臨界点を突破しており、双方は戦闘不能になっていた。私は彼の領域内に足を踏み入れる。

『よくやった』

地に横たわる彼を労い、私はジン君の前に立つ。どうやら気を失っているようだ。目の前には瀕死の怪物。英雄アークによって創られた人と馬の化け物。武器を手放し、大地に項垂れている。私は『核(フレア)』を発動する。

(やっぱり……)

彼の領域に入った瞬間、私の身体は『全能状態(ゾーン)』に入る。『全能状態(ゾーン)』は決して狙って入れるものではない。選ばれし者が限られた条件の下で発揮出来る限界突破。その者の能力を120%解放する。今回の事で確信した。私はジン君のそばにいる時に『全能状態(ゾーン)』になる可能性が非常に高い。今回はたまたまかもしれないけど、『核(フレア)』の暴走も制御出来ている。これまでのルートでもこんなことは無かった。ジン君のそばにいた時ですら『全能状態(ゾーン)』に入ったことなどなかった。原因は分からない。もしかしたら、このまま彼と入れば『核(フレア)』を完全に制御出来る方法が見つかるかもしれない。それでも私は彼のそばにはいられない。私が暴走する可能性が1%でもあるなら、私は彼から離れなければならない。

『……っ!!』

ほら。調子に乗るとコレだ。チラッとジン君を見る。彼の領域が閉じたからか、私の『全能状態(ゾーン)』は解除されていた。鉄の味がする。胃の中からまた何かが逆流してくるのが分かる。口元を押さえてなんとか呑み込む。気付けば身体のあちこちが激痛に蝕まれている。『存在否定(カオス)』を多発した反動が徐々に帰ってきた。以前の私に戻り始めているのだ。私は怪物を『核(フレア)』で射抜いた。怪物を貫いた無属性の光が大聖堂の天井を突き破り、天を穿つ。穿いたのは無属性の光だけで、『存在否定(カオス)』はもう発動しなかった。

『貴方がどこの誰かは分かりませんが、貴方もおやすみ』

無属性の光は怪物を焼き尽くすと、それは、宙に飲み込まれていった。大聖堂はこれまでの戦闘の影響で壁や天井がガラガラと崩れ始めた。このままじゃジン君が下敷きになってしまう。私は気を失っている彼を担ぐと大聖堂を後にした。

しばらく離れた所でジン君を地面に横にした時、先程までいたザガルムンド大聖堂は完全に崩壊した。私は自分の判断に胸を撫で下ろす。すぐに此処を立ち去らなきゃ。『核(フレア)』の光を見て十一枚片翼(イレヴンバック)の誰かが駆け付けるかもしれない。私が生きていることはまだ知られるべきじゃない。気を失っているジン君の顔を優しく撫でる。そばにいてあげられなくて、ごめん。本当にごめん。私はジン君の髪を少しだけ、くしゃくしゃと撫でる。名残惜しかったけど、これ以上は駄目だ。念の為、他の隊員がジン君の位置をすぐに分かるように信号弾を上空に発する。

『また会おうね』

私は、自分に言い聞かせるようにその場を去る。その後、岩場に隠していたバイクに跨り、随分かけてオストリアから離れた所まで来た。遠くに先程までいたオストリア王都から黒煙が上がっているのが見える。空にはサウザンドオークスとダイダロス新大国両国の飛空艇がチラホラ海の向こう側からやって来ていた。身体は回復魔法のおかげで少しマシになった。元々、今回の戦闘において被ダメージは殆ど無かったけれど、『存在否定(カオス)』の連発による元素の消耗が激しかった。吐血はしたけど、今はその気配は無い。『核(フレア)』の暴走も、ある程度発散したためか大分落ち着いている。

偶然とはいえ、ジン君と再び会えた。そして、自分の意志で彼を助けて、自分に言い聞かせて彼から離れた。今はこれが良いんだ。これで良かったんだ。私は深く息を吐く。焦らない。チャンスはある。可能性もある。今まで何万回も失敗をしてきたのだ。確実にジン君のそばにいてあげられるようになるまで、私は私の出来ることをしなければ。切り替えろ。私。

「でも、本当に会えて良かったなぁ……」

ボソッと口から洩れた本音は風とバイクのエンジン音によって掻き消された。兎に角、サウザンドオークスの崩壊は回避された。本来の歴史とは異なるルートを通っている。オストリアの崩壊、ヴァムラウート皇帝の崩御。そして1番危惧しているのは英雄アークの暗躍。ザガルムンド大聖堂で対峙した際に此方の正体はバレていないと思いたいけど……。彼の『創造(クリエイター)』という固有技術は危険だ。シャインのようになってしまえば、殺すか存在否定をするしか止める方法がない。万が一、あの攻撃を1太刀でも私が受けてしまえば、ジン君が受けてしまえば……。英雄アークの目的は分からない。ただ、この後の歴史を考慮するなら、明らかに私達の敵となる存在になる。

(オストリアの危険度が緩やかになった今、英雄アークの排除が最優先事項。前世界の化物達が活性化する前に止めないと……)

本来であれば、オストリアがサウザンドオークスを滅ぼした事を皮切りに、コキュートスが人造人間(ホムンクルス)と人造機会(ゴーレム)で軍隊を引き連れダイダロス新大国を攻撃するハズだった。そして、劣勢になるダイダロス新大国は『第2世界(セカンド)』の永年の宿敵イグザ帝国に同盟を申し入れる。当然、ギルガメッシュ王は『お前らが此方の軍門に下るなら良い。出来ぬなら実力行使をするのだな』と条件を出す始末。あの時はベガ師匠がいたから、辛くも何とかなったけど、今は状況が違う。大和はイマイチ信用出来ないし、母国ドン・クラインなんて論外。

現在、コキュートスの勢いは弱まっている。でも、彼等は決して諦めない。だとすれば、この後再び何かを仕掛けてくる。そこにあの英雄アークが1枚噛んでいるなら、尚更、対抗戦力が必要だ。恐らくコキュートスも同様の事を考えているハズ。ダイダロス新大国も他国や他勢力の助力が不可欠になる。今回はベテルイーゼ大王をはじめ、サウザンドオークスと同盟を結べた。後はこの『核(フレア)』と『最強』の証を有効利用しなければ。当面の敵はコキュートス。そして、英雄アーク。私が知っているのは歴史の結果であって彼等の目的では無い。

(そうと決まれば……)

私はバイクのアクセルをふかせると、北の大地。サウザンドオークスへと向かった。





オストリアとサウザンドオークスは陸続きになっているので、幸い陸路での移動が可能だった。季節は間もなく春だが、この辺りは流石に緯度が高く、まだ乾燥していて肌寒かった。バイクで横断しているのはサウザンドオークス西の荒野。本来、オストリアがサウザンドオークスへと侵攻すす際に戦地となる筈だった場所だ。時折、人造機械(ゴーレム)の残骸が視界の端に映る。ここで最近戦闘があったのは間違い無いみたい。よく見たら所々大地が黒ずんでいる箇所がある。風で少し飛ばされたのか分からないけど、焦げ跡だよね?この広範囲を焼き尽くすとなれば、最上級炎魔法『メテオ』しかない。だとすれば、ベテルイーゼ大王かな。

(うーん)

ジン君のサウザンドオークス訪問がきっかけでベテルイーゼ大王が生存しているとしたら、それはいい事なんだけど。私が英雄アークならベテルイーゼ大王がオストリアに進出している、それを好機に戦力が手薄なサウザンドオークスを再び攻めるんだけどな。ギュンターが出張る事は考えにくい。でも、エリザベスやレイを含めて単騎でも送り込める実力者は存在する。なら、この機会は逃さない筈。

でも、流石にベテルイーゼ大王も自国を放任するような方じゃない。いや、あの方も好戦家だから単騎で突っ込むようなことはあるけど、それと民草と天秤にかけることが出来ない方じゃない。十一枚片翼(イレヴンバック)も絡んでいるし、ゼロやお父さんが同盟国に警備を付けないわけも無いか。

(杞憂なら、いいけど……)

英雄アークが現われるなら、恐らくこのタイミングのサウザンドオークスだと思う。警備は強化されてるとは思うけど、少し様子を見よう。彼は狡猾な男だ。出来ればジン君のために露払いをしておきたい。

数日かけてサウザンドオークスに向けて陸路をバイクで駆ける。道中、時折雨に見舞われることもあった。しばらく流しながら走っていたが、とうとう本降りになって来たので、雨宿り出来る場所を見付けたらそこに野営用のテントを張る。お母さんから貰ったバイクとキャンプ道具が私の旅を支えてくれる。軍幕なので、グランドシートを引くとペグを刺してポールを立てる。

(今日はここでお休みとしますか)

雨はさっきより少し緩やかになった。日も大分傾いてきたのでランタンを取り出してトレンチライターで明かりを灯す。バイクには雨避けのカバーだけを掛ける。濡れたコートを脱ぎ、あらかじめ荒野で収集しておいた乾いた薪に火を点け、身体を暖める。ブーツも脱ぎ捨て、コートと一緒に乾かす。荷物から寝袋と晩御飯用の食料と調理用のファイヤークッカーを出しておく。寝袋をグランドシートの上に敷くと私は大の字に広がる。ランタンの炎が時折揺らめくと軍幕の中で私の影も踊る。それに気付くと私は指を折り犬の影絵を軍幕に映し出す。親指を人差し指とくっつけて中指を人差し指の第2関節に重ねる。親指と人差し指を引っ付けたり離したり。そうすると映し出されたわんちゃんはパクパクと口を開く。

これで合ってるのかなぁ。わんちゃんの影絵をやめて私は手の平を広げて天井に掲げた。いずれやって来る3つの『カルマ』を避ける為に私は未来から過去にやって来た。それらは目的こそは異なるけれど、私とジン君、或いは世界を滅ぼさんとする存在。今回は展開が予想しにくいルートになっている。『時間制御(クロノス)』も使えないし、以前とは状況が異なる。だから、慎重にならざるを得ない。一方で戸惑いもある。『核(フレア)』の存在と『最強』が私を選んだ意義はなんなのか。私は正しい道を歩めているのか。

「心細い……」

ポツリと本音が出てくる。ジン君のそばにいたいのに、『核(フレア)』のせいで、それが出来ない歯痒さにそろそろ耐えられない。寂しい。そう思った時に私の手は自然と自分の身体を慰めていた。正直、限界だった。ここ最近の状況変化によるストレスもそうだけど、求めている者が手に入らないことが何より一番許せない。左手は左胸を右手はパンツのファスナーを緩めて下着越しに私の傷をなぞり始めた。ジン君を頭の中で抱き締めながら、現実では手が勝手に動く。今更ながらドキドキしてきた。心拍数と共に息も上がってくる。

「あ……」

自慰に没頭していると不意に左胸の山頂付近で心地好い感覚と出会う。でも、それだけではまだ足りない。焦れったくなり、シャツのボタンを素早く外してブラのホックも緩める。服の上から圧力をかけていた私の左手がとうとう直に触れる。人差し指の腹で撫でたり、捏ねてみる。先程とは異なる直接的な刺激にまた息が荒くなる。右手も遂に下着の中に到達した。

(濡れてる……)

そういえば、久々だった。興奮している私の中に、一方で冷静な私もいる。中指で傷を上下に撫でる。申し訳程度に生えている傷の茂みと掌が触れた時に自分の行為を客観視することになり、また微かに昂る。外は完全に日が沈み、辺りは静まり返っている。時折、焚き火の爆ぜる音がするくらいだ。誰もいない荒野で独り、自慰に耽る。左手で胸を刺激しつつ、右手を下着から一旦引き抜く。暗がりでも分かるくらいに指は湿っていた。不意に右手の銀の指輪が目に入る。顔が紅潮してる。人差し指と中指を口に含み、舌で吸い付くように舐める。それは少し酸っぱく、生暖かい蒸れた私の匂いがする。唾液を十分に含むと再度下着の中に戻し、今度は私の傷を少しずつ抉(えぐ)る。

「あっ……ん」

この世界線の私の身体はまだジン君とそういう事は致していない。だから、精神は未来の私だけど、身体は処女のままだ。狭い入口から中指が先行して侵入する。少し痛いけど、濡れていたから慣れてくると痛みは徐々にジンジンする感覚に変わってきた。指をゆっくり出し入れする。左手は相変わらず勝手に動いている。私は態勢を変えて寝袋にうつ伏せになり、左肩で身体を支えながら膝を立てて腰を浮かす。少しずつ指を折り曲げ私の壁を擦り始める。今迄で一番強い刺激が下腹部からやって来る。

「……っ!」

声が我慢できなくなり、慌てて左手で口を押さえる。それでも右手は止まらなかった。徐々に近づいてくるそれの存在に気付く。息を吐きながらそれの到来に心の準備をする。あぁ。駄目だ。私はそれが手の届く所まで来ると一気に私の中を抉った。強い圧力が掛ったのを合図に絶頂に達する。腰が若干波打ち痙攣する。快感に酔っていると中々右手を引き抜けずにいた。今、抜いてしまうと、また……。もう1人の冷静な私がまた悪いことをする。そのままの状態で右手の人差し指も中に入れる。2本の指は縦に重なるように傷を抉る。そして、そのまま出し入れを再開する。狭さは相変わらずだったけど、2本の指の圧迫感に敏感だったそこはもう耐えられなかった。

「あ、いっ……く……」

急激に指を押し付け圧迫を繰り返し、一気に抜き切ると、振り絞るような情けない声を出して2度目の絶頂を迎える。私はそのまま横になる。傷からは体液が滴っていて、太腿の辺りを伝っていた。息を整えながら快感の余韻に浸る。頭の中で何度もジン君を想像する。その度に右手薬指の指輪にキスをする。

ふと、気温が大分低くなっていることに気付き、荷物からなんとかブランケットを取り出すと半裸の私に被せた。いや、まだ寒い。というか、とても寒い。寒い寒い寒い寒い寒い!火照った身体と焚き火のおかげである程度の寒さには耐えれていたけれど、今かいた汗が一気に冷え、夜の荒野に身を晒すことで気温の低さに改めて気付く。うー。こういうことするとシャワー浴びたいのに、今は野営中だからなぁ。とはいえ身体を拭かないといけないし。でも、寒いし……。

「あーもう!」

意を決してブランケットを剥がして、中途半端に身に付けていた衣服や下着を一切合切脱ぎ捨て全裸になる。タオルを荷物から取り出して水魔法で湿らせる。あぁ、こんな時に炎魔法が使えたらお湯を作れるのになぁ。冷たいタオルで身体の汗を拭き取る。ササッと拭うと替えの下着と衣類を取り出して一気に着替える。念の為、香水を両手首につけて、うなじの辺りにも擦り付ける。雨で濡れたコートは当然まだ乾いていなかったので、ブランケットを肩に被せながら焚き火に身を寄せる。この際だからと、本来もっと早く作る予定だった晩御飯の準備に取り掛かる。焚き火から離れた所にガス缶に接続した折りたたみ式の簡易ストーブを点火させてお湯を沸かす。少しすると沸騰してきたので、チタン製のマグカップに挽いたコーヒーを入れてお湯をそそぐ。コーヒーの香ばしい香りが軍幕の中に広がる。髪を耳にかけながら、ひとくち。

「あったかーい……」

マグカップから沸き立つ湯気に鼻先が微かに温まる。あー、これは相当冷えそうですね。そんな中で私は一体何をしていたのか。先程までの行為に今更ながら恥を感じて赤面しながら溜め息を吐く。でも、気持ちよかったな……なんて邪念が浮かんだものだから、相当溜まっていたんだなと半ば呆れる。

マグカップを地面に置くと、再び右手の薬指にはめられた銀の指輪に目が止まる。自分の右手を引き戻し、その指輪にキスをする。あぁ、会いたい。会って抱き締めたい。会ってキスをしたい。先日、中途半端な再開をしたものだから、半分諦めていた期待がまた膨らんでくる。

(あぁ、早くジン君を抱きたいなぁ)

私の意地悪に顔を赤らめるのを見たい。私に優しくしてくれるジン君の手に触れたい。あの黒髪をわしゃわしゃと撫でたい。あの口の中に、私の指を入れたい。困らせたい。困っている顔を見たい。キレイな鎖骨を噛みたい。首に痕を付けたい。ジン君に嫌だと言われるまで犯したい。でも、きっとあの子は私にそれを言わないんだろうなぁ。それを想像すると思わずにやけてしまう。あぁ、自慰なんてしてしまったばっかりにジン君への独占欲がどんどん溢れてくる。

『サナさん』

しかし、最後に脳裏に映ったのはボロボロになりながら、怪物に向かっていくジン君だった。生きていてくれて本当に良かった。でも、身体を引きずりながら、刀で身体を支えて立つ姿。私はハッとなる。私が独りのように、あの時ジン君も独りだった。護らなくちゃ。私が。私じゃないと駄目だ。ジン君を独りにしちゃ駄目だ。また泣いてしまう。

「早く迎えに行かなきゃ」

私は簡易な食事を済ませると焚き火を消して寝袋に潜り込む。辺りはかなり気温が下がっており、もしかしたら氷点下かもしれない。だけど、この寝袋は-20℃まで耐えれる保温機能がある。これなら焚き火がなくても大丈夫だ。

ふと、シャインのことを思い出す。私の自己満足でしかないけど、あの子のお墓を建てよう。世界は彼女の存在を忘れている。だからこそ、私が覚えていないと。私が彼女の存在を否定したのだから、私だけは覚えていないと。少しセンチメンタルな感情になる。これから寝ようとしているというのに、シャインの最期の言葉を思い出して少し涙ぐむ。

もしかしたら、『カルマ』も存在否定することが出来るのだろうか。でも、そうだとして、それを私は望むのだろうか。それを祓うことが私の目的ではあった。でも、否定する事とは果たして同義なのだろうか。このタイミングで『核(フレア)』の、しかも『存在否定(カオス)』が私を選んだ意義はあるのだろうか。

私は色んな感情を抱えながら意識を手放した。
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