なんで夜だけ鬼畜ですか

うに

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ロマンチスト、レーミヤ

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バッと振り向くと、目が合ったのはヘラヘラとした幼なじみの顔では無かった。
「触らないわよっ!」
咄嗟に言いかけて、ちょっと悩む。

「だってミヤ、俺のこと好きって言ったろ?」

「はあっ⁈言ってないし‼︎」

そんな事言えるものなら今まで悩んでない。
それについてはちゃんと自問自答をしたのだ。

「いや、ちゃんと言ってたよ。思い出させてあげる」

急に顔が近づいて思わず身構えると、コツンと額同士をくっつけて記憶を流し込まれる。

頭に浮かんできたのは呆け切った自分の顔。「んっ、んっ」という甘えた声はまるで自分のものではない様で聞くに耐えない。
声と共に記憶の持ち主、つまりマシューの、脳が痺れるような快感と恍惚とした感情が伝わってくる。

「……っ」

ミヤは思わずギュッと目を閉じる。
少し響くようにマシューの声が聞こえる。
「俺のこと好き?」
低く呟くその声に、私はー。


ドン、と両手で男を突き飛ばす。
…つもりだったのにびくともしなくて、急いで顔を俯ける。

(こんなのってズルくない⁈)

「こんなのって…っズルくない⁈」

思ったままを口にしてしまう。流し込まれた記憶の余韻で、うまく頭が回らない。

「何がズルいの?俺はちゃんと言ったよね。愛の告白だって。」

俯いて隠す赤い顔を、口角の上げて覗き込む。この男はどこまで悪趣味なのだろう。

「一向に返事が貰えないから聞いてなかったのかと思って、耳元で言ったんだけど。聞こえてない訳ないよね?」

恐らくその時はー
何だか頭が真っ白になって、抗い難い快感にどうしようもなくなっていた時だと思う。
けれどそんな事、口が裂けても説明できようものか。

「応えてくれて嬉しいよ。ミヤ」

ギシ、とミヤの横に手をつき身体を近づけてくるマシューに、何とか視線だけ上げて声を振り絞る。ここで折れる訳にはいかないのだ。

「こんなの…っ不純だわ。ちゃんと段階も踏まずにい、異性関係を持つだなんて。もっと、女性の気持ちを考えるものよ!」

マシューはベッド脇に積まれた物語集をチラ、と見やると、異性関係?と呟き優しい笑みを浮かべる。

「ミヤってほんとロマンチストだね。」

言うとミヤの手を取り、その甲にそっと口付ける。

「気持ちを確かめ合って、手も繋いだ。キスもした。」

順調だね。そう囁くと手の指を絡め、ゆっくりとミヤに覆い被さるように体重を傾ける。
後ろに倒れ込みそうになり、慌てて後ろに後ずさる。
後ずさったその分だけ距離を詰めて、白衣の内側に着たシャツのボタンを長い指で器用に開けつつ嗤う。

「次の段階は何かな?ミヤ。」

顔を直視できなくて視線を下げると、開けていく上半身に自然と目がいってしまう。

(これはっ、やばい気がする…)

とりあえず逃げようとズリズリマシューの下から這い出て、ベッドから降りようとする度にお腹に腕を回されて捕まえられる。

「ね、俺のこと好きって言ったのは嘘だったの?ミヤ。それこそ相手の気持ちを考えた方が良いんじゃない?」

(だって…聞いてなかったんだもの!)

なんて口にしようものならどうなるか、得体の知れない目の前の男にそんな事を言う勇気はなく、無策でわたわたとベッドの上を逃げ回る。

とん、と壁際に背中が付き、とうとう逃げ場がなくなったミヤはせめてもの抵抗でキッと目の前の男を正面から見つめ、
…慌てて逸らす。

完全に獲物をいたぶる目をしていた。
いつもの優しげな雰囲気はどこにもなく、ドロッとした欲望と色気を垂れ流しながら、ミヤの胸元のリボンを指先で引っ張ってニヤリと笑う。

「捕まえた」

シュルリと解けるリボンの感触に、一気に危機感が増す。
ミヤは近くの枕を手に取り盾の様に二人の間に滑り込ませる。

けれどもマシューの手は止まらず、手探りで枕の向こう側を指先で辿ってくる。
鎖骨の下のなだらかな膨らみを指先がなぞる感覚に身を固くしていると、反対側の手が無遠慮に太ももを撫で始める。

驚いて思わず、枕の向こう側を闇雲に叩く。
ベチっと音がしたので恐々こわごわと確認すると、マシューの顔を叩いていた。
指の間から覗くギラついた目に怯んだ隙に、取り上げられた盾はポーイと放られる。

「ミヤ…愛してるよ」

耳元で甘く囁かれた言葉に、
(ーえっ、そうなの?本当に?)
と顔をあげる。

サラリと髪を撫でられたかと思うと、額にキスを落とされる。
その優しい動作に思わず心がときめいてしまう。

頭を優しく撫でながら目尻から頬、髪の先へとキスを落とされ、唇にちゅ、と口づけをされる。

(本当に、…愛されているのかも)

マシューの膝に抵抗する様に置かれていた手から力が抜ける。
ちゅ、ちゅ、と角度を変えてする口づけは次第に深くなり、優しく頭を撫でていた手は後ろから押さえるように引き寄せられていく。

脇腹に直接的な感触がして息を呑む。
診察用の着脱しやすい前開きの服はボタンがいつの間にか外され、ふと下着の締め付けが緩む。

「ふぁ……っんむ」

抗議の言葉はマシューの舌に絡めとられ、脇腹あたりを撫でる手が上へと上がってくる。

「愛してるよ、ミヤ」

唇を触れさせたまま聞こえるか聞こえないかの声で言われたその言葉に、ミヤは陥落した。

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