なんで夜だけ鬼畜ですか

うに

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僕は好きだよ

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「…はっ……ゃ…っんぅ…………っやだっ、ねぇっシュー!」

「ん…、痛いのは嫌?」

「そっ、そうじゃなくてっ」

「へぇ、嫌じゃないんだ」

「ちがっ…!ひっ、………まっ待って!!」

あやうく快感に流されそうになる頭をブンブンと振りかぶり、ふわふわとした心地よさを必死に振り払うと、首筋に噛みつく男の、少し癖のある髪をわしっと掴む。

「…なに?」

耳元で不遜に呟く声が聞こえる。舐められた場所が吐息でひやりとして、思わず背筋がゾクリと震える。


…ちょっと、待ってほしい。


目の前の男は、マシューは、もっとこう…へにゃっとしてて、ゆるーい雰囲気の優男だったはずだ。
決してこんな…欲望に揺らめく瞳で、混乱する私をどこか愉しむように眺める、そんなタイプではなかったはず。そんな顔、知らない。

レーミヤははだけた彼の胸に両手を突っ張ってガバッと上体を起こすと、あわてて目の前の男が人違いではなかったかを確認する。

少しくせのある淡い茶色の髪、色素の薄い目、夏だというのに日に焼けていないサラッとした肌も、間違いなく私の知るマシューそのもの。
けれどそこに浮かぶ表情はいつもの優男のそれではなく、まるで捕まえた獲物を眺める様な目で見つめながら口の端をペロリと舐めて、こちらの出方を伺っている。

「…っい、いつから、起きてたの?」

恐る恐る訊いてみる。
そもそもなんでこんな気まずい気持ちにならなければいけないのか。
私はただ、人を呼びつけておいてのんきにソファーで眠るこのマイペースな男が起きるのを、暇をつぶして待っていただけだ。
ただちょっと、なかなか起きないので、ほんのちょっといたずらをしていたけれど…。

「いつから…?」

んん、いつからかな…?マシューは緩く呟くと、少し視線を彷徨わせる。
ようやくとレーミヤのよく知るマシューのゆるっとした雰囲気がもどり、ホッと息をつく。

「あれって、……どこまでが夢だろ?」

のんきな声を出すマシューに、さっきのは何だったんだ、まったく寝ぼけてるのかと、レーミヤは自分のいたずらを棚に上げて呆れながら男を叱る。

「まったく、人を呼んでおいてだらしなく寝てるかと思えばなに⁈急に…、…っ、あんな…こと」

言いながら思い出して恥ずかしくなり、尻すぼみに声が小さくなってしまうのも仕方ない。
唇を舐められる感触も、耳元で甘く名前を囁かれ首筋に噛みつかれたときの、背中がぞくぞくする感じも、まだレーミヤの身体には残っているのだ。

徐々に赤くなるレーミヤを見たマシューは「ああ」と、まるで良いことを思いついたかのように声を上げて、
意地の悪そうな笑顔で


「ミヤがいつもみたいに僕の首筋の匂いを嗅いで「わあああああぁあーーっっ!!!っなんでそれ知ってるの⁈⁈」

「ん、気づいてないと思ってたの?」


ちょっとバカにするようにハッと軽くわらうと、マシューはとんでもないことを口にし始めた。

「僕が寝てる時に、身体を触ったり匂いを嗅いだりして興奮してるの、気がついてないと思ってた?」

「ちがっ…!それは、そんなあのアレじゃなくてっ!」

ひとをさも変態みたいに言わないでもらいたい!
私はただ、医者のくせにどこでも寝る、患者の私よりも不規則で不健康そうな生活習慣のマシューを、せめて寝かせてあげようと優しく見守っていただけなのだ。

そりゃあちょっと、こっそり触ってみたりもしたけれど。
はだけたシャツから覗く身体に、意外にもちゃんと筋肉がついていて。
子供の頃にはなかったこの腹筋はいったい何時どこから現れたのかしら、と不思議で、
その凹凸を指先で辿ったりつついたりしていただけで。
いやらい気持ちで撫で回していたわけじゃあないし。

消毒用エタノールの匂いをいつでも薄く漂わせているものだから、これはもう服ではなく体臭なのかしら…?と思って一度こっそり首元に顔を近づけてみたら、
メントールっぽいスッとした香りとほんのり汗と、何だかマシュー自身っぽい匂いがして。
それが何だかクセになってついその隙だらけの首元に顔をうずめてしまうのだ。
決して興奮などしていない。


「…アレがどれだか知らないけどさぁ、キスしてきたのはそっちでしょ?それに…この体勢。完全に寝込みを襲われてると思うんだよね。」

「は⁈おそっ……!…っ」

言い返そうとして口籠る。たしかにこの体勢は側から見ればそうなのかも知れない。
ソファーに横たわる彼の足元に座っていたのだけれど、ちょこちょこ悪戯するうちに馬乗りのような体勢になってしまっていた。

「…でっでも、だけど、キスはしてない!してないよ!!」

狼狽つつもミヤは断固抗議する。急に起きてキスやらナニやらしてきたのはそっちの方だ。そこは譲れない。

「ふーん、じゃ夢かぁ。」

指先で唇をふにふにしていたことについては黙っておく。

「今日は大胆だなぁと思ってちょっとやり返してみたんだけど…」

残念。と言いながらその器用そうな長い指がつつーっと太ももを辿ってスカートの中に進入する。

「…っ、そもそもそんなこと、私別にシューのこと好きなわけじゃないし!キスするわけないじゃない!へんな夢見ないでよね」

「僕は好きだよ。」





「………………へっ?」

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