1 / 22
僕は好きだよ
しおりを挟む
「…はっ……ゃ…っんぅ…………っやだっ、ねぇっシュー!」
「ん…、痛いのは嫌?」
「そっ、そうじゃなくてっ」
「へぇ、嫌じゃないんだ」
「ちがっ…!ひっ、………まっ待って!!」
あやうく快感に流されそうになる頭をブンブンと振りかぶり、ふわふわとした心地よさを必死に振り払うと、首筋に噛みつく男の、少し癖のある髪をわしっと掴む。
「…なに?」
耳元で不遜に呟く声が聞こえる。舐められた場所が吐息でひやりとして、思わず背筋がゾクリと震える。
…ちょっと、待ってほしい。
目の前の男は、マシューは、もっとこう…へにゃっとしてて、ゆるーい雰囲気の優男だったはずだ。
決してこんな…欲望に揺らめく瞳で、混乱する私をどこか愉しむように眺める、そんなタイプではなかったはず。そんな顔、知らない。
レーミヤははだけた彼の胸に両手を突っ張ってガバッと上体を起こすと、あわてて目の前の男が人違いではなかったかを確認する。
少しくせのある淡い茶色の髪、色素の薄い目、夏だというのに日に焼けていないサラッとした肌も、間違いなく私の知るマシューそのもの。
けれどそこに浮かぶ表情はいつもの優男のそれではなく、まるで捕まえた獲物を眺める様な目で見つめながら口の端をペロリと舐めて、こちらの出方を伺っている。
「…っい、いつから、起きてたの?」
恐る恐る訊いてみる。
そもそもなんでこんな気まずい気持ちにならなければいけないのか。
私はただ、人を呼びつけておいてのんきにソファーで眠るこのマイペースな男が起きるのを、暇をつぶして待っていただけだ。
ただちょっと、なかなか起きないので、ほんのちょっといたずらをしていたけれど…。
「いつから…?」
んん、いつからかな…?マシューは緩く呟くと、少し視線を彷徨わせる。
ようやくとレーミヤのよく知るマシューのゆるっとした雰囲気がもどり、ホッと息をつく。
「あれって、……どこまでが夢だろ?」
のんきな声を出すマシューに、さっきのは何だったんだ、まったく寝ぼけてるのかと、レーミヤは自分のいたずらを棚に上げて呆れながら男を叱る。
「まったく、人を呼んでおいてだらしなく寝てるかと思えばなに⁈急に…、…っ、あんな…こと」
言いながら思い出して恥ずかしくなり、尻すぼみに声が小さくなってしまうのも仕方ない。
唇を舐められる感触も、耳元で甘く名前を囁かれ首筋に噛みつかれたときの、背中がぞくぞくする感じも、まだレーミヤの身体には残っているのだ。
徐々に赤くなるレーミヤを見たマシューは「ああ」と、まるで良いことを思いついたかのように声を上げて、
意地の悪そうな笑顔で
「ミヤがいつもみたいに僕の首筋の匂いを嗅いで「わあああああぁあーーっっ!!!っなんでそれ知ってるの⁈⁈」
「ん、気づいてないと思ってたの?」
ちょっとバカにするようにハッと軽くわらうと、マシューはとんでもないことを口にし始めた。
「僕が寝てる時に、身体を触ったり匂いを嗅いだりして興奮してるの、気がついてないと思ってた?」
「ちがっ…!それは、そんなあのアレじゃなくてっ!」
ひとをさも変態みたいに言わないでもらいたい!
私はただ、医者のくせにどこでも寝る、患者の私よりも不規則で不健康そうな生活習慣のマシューを、せめて寝かせてあげようと優しく見守っていただけなのだ。
そりゃあちょっと、こっそり触ってみたりもしたけれど。
はだけたシャツから覗く身体に、意外にもちゃんと筋肉がついていて。
子供の頃にはなかったこの腹筋はいったい何時どこから現れたのかしら、と不思議で、
その凹凸を指先で辿ったりつついたりしていただけで。
いやらい気持ちで撫で回していたわけじゃあないし。
消毒用エタノールの匂いをいつでも薄く漂わせているものだから、これはもう服ではなく体臭なのかしら…?と思って一度こっそり首元に顔を近づけてみたら、
メントールっぽいスッとした香りとほんのり汗と、何だかマシュー自身っぽい匂いがして。
それが何だかクセになってついその隙だらけの首元に顔をうずめてしまうのだ。
決して興奮などしていない。
「…アレがどれだか知らないけどさぁ、キスしてきたのはそっちでしょ?それに…この体勢。完全に寝込みを襲われてると思うんだよね。」
「は⁈おそっ……!…っ」
言い返そうとして口籠る。たしかにこの体勢は側から見ればそうなのかも知れない。
ソファーに横たわる彼の足元に座っていたのだけれど、ちょこちょこ悪戯するうちに馬乗りのような体勢になってしまっていた。
「…でっでも、だけど、キスはしてない!してないよ!!」
狼狽つつもミヤは断固抗議する。急に起きてキスやらナニやらしてきたのはそっちの方だ。そこは譲れない。
「ふーん、じゃ夢かぁ。」
指先で唇をふにふにしていたことについては黙っておく。
「今日は大胆だなぁと思ってちょっとやり返してみたんだけど…」
残念。と言いながらその器用そうな長い指がつつーっと太ももを辿ってスカートの中に進入する。
「…っ、そもそもそんなこと、私別にシューのこと好きなわけじゃないし!キスするわけないじゃない!へんな夢見ないでよね」
「僕は好きだよ。」
「………………へっ?」
「ん…、痛いのは嫌?」
「そっ、そうじゃなくてっ」
「へぇ、嫌じゃないんだ」
「ちがっ…!ひっ、………まっ待って!!」
あやうく快感に流されそうになる頭をブンブンと振りかぶり、ふわふわとした心地よさを必死に振り払うと、首筋に噛みつく男の、少し癖のある髪をわしっと掴む。
「…なに?」
耳元で不遜に呟く声が聞こえる。舐められた場所が吐息でひやりとして、思わず背筋がゾクリと震える。
…ちょっと、待ってほしい。
目の前の男は、マシューは、もっとこう…へにゃっとしてて、ゆるーい雰囲気の優男だったはずだ。
決してこんな…欲望に揺らめく瞳で、混乱する私をどこか愉しむように眺める、そんなタイプではなかったはず。そんな顔、知らない。
レーミヤははだけた彼の胸に両手を突っ張ってガバッと上体を起こすと、あわてて目の前の男が人違いではなかったかを確認する。
少しくせのある淡い茶色の髪、色素の薄い目、夏だというのに日に焼けていないサラッとした肌も、間違いなく私の知るマシューそのもの。
けれどそこに浮かぶ表情はいつもの優男のそれではなく、まるで捕まえた獲物を眺める様な目で見つめながら口の端をペロリと舐めて、こちらの出方を伺っている。
「…っい、いつから、起きてたの?」
恐る恐る訊いてみる。
そもそもなんでこんな気まずい気持ちにならなければいけないのか。
私はただ、人を呼びつけておいてのんきにソファーで眠るこのマイペースな男が起きるのを、暇をつぶして待っていただけだ。
ただちょっと、なかなか起きないので、ほんのちょっといたずらをしていたけれど…。
「いつから…?」
んん、いつからかな…?マシューは緩く呟くと、少し視線を彷徨わせる。
ようやくとレーミヤのよく知るマシューのゆるっとした雰囲気がもどり、ホッと息をつく。
「あれって、……どこまでが夢だろ?」
のんきな声を出すマシューに、さっきのは何だったんだ、まったく寝ぼけてるのかと、レーミヤは自分のいたずらを棚に上げて呆れながら男を叱る。
「まったく、人を呼んでおいてだらしなく寝てるかと思えばなに⁈急に…、…っ、あんな…こと」
言いながら思い出して恥ずかしくなり、尻すぼみに声が小さくなってしまうのも仕方ない。
唇を舐められる感触も、耳元で甘く名前を囁かれ首筋に噛みつかれたときの、背中がぞくぞくする感じも、まだレーミヤの身体には残っているのだ。
徐々に赤くなるレーミヤを見たマシューは「ああ」と、まるで良いことを思いついたかのように声を上げて、
意地の悪そうな笑顔で
「ミヤがいつもみたいに僕の首筋の匂いを嗅いで「わあああああぁあーーっっ!!!っなんでそれ知ってるの⁈⁈」
「ん、気づいてないと思ってたの?」
ちょっとバカにするようにハッと軽くわらうと、マシューはとんでもないことを口にし始めた。
「僕が寝てる時に、身体を触ったり匂いを嗅いだりして興奮してるの、気がついてないと思ってた?」
「ちがっ…!それは、そんなあのアレじゃなくてっ!」
ひとをさも変態みたいに言わないでもらいたい!
私はただ、医者のくせにどこでも寝る、患者の私よりも不規則で不健康そうな生活習慣のマシューを、せめて寝かせてあげようと優しく見守っていただけなのだ。
そりゃあちょっと、こっそり触ってみたりもしたけれど。
はだけたシャツから覗く身体に、意外にもちゃんと筋肉がついていて。
子供の頃にはなかったこの腹筋はいったい何時どこから現れたのかしら、と不思議で、
その凹凸を指先で辿ったりつついたりしていただけで。
いやらい気持ちで撫で回していたわけじゃあないし。
消毒用エタノールの匂いをいつでも薄く漂わせているものだから、これはもう服ではなく体臭なのかしら…?と思って一度こっそり首元に顔を近づけてみたら、
メントールっぽいスッとした香りとほんのり汗と、何だかマシュー自身っぽい匂いがして。
それが何だかクセになってついその隙だらけの首元に顔をうずめてしまうのだ。
決して興奮などしていない。
「…アレがどれだか知らないけどさぁ、キスしてきたのはそっちでしょ?それに…この体勢。完全に寝込みを襲われてると思うんだよね。」
「は⁈おそっ……!…っ」
言い返そうとして口籠る。たしかにこの体勢は側から見ればそうなのかも知れない。
ソファーに横たわる彼の足元に座っていたのだけれど、ちょこちょこ悪戯するうちに馬乗りのような体勢になってしまっていた。
「…でっでも、だけど、キスはしてない!してないよ!!」
狼狽つつもミヤは断固抗議する。急に起きてキスやらナニやらしてきたのはそっちの方だ。そこは譲れない。
「ふーん、じゃ夢かぁ。」
指先で唇をふにふにしていたことについては黙っておく。
「今日は大胆だなぁと思ってちょっとやり返してみたんだけど…」
残念。と言いながらその器用そうな長い指がつつーっと太ももを辿ってスカートの中に進入する。
「…っ、そもそもそんなこと、私別にシューのこと好きなわけじゃないし!キスするわけないじゃない!へんな夢見ないでよね」
「僕は好きだよ。」
「………………へっ?」
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】短編集【更新中】調教無理矢理監禁etc...【女性向け】
笹野葉
恋愛
1.負債を抱えたメイドはご主人様と契約を
(借金処女メイド×ご主人様×無理矢理)
2.異世界転移したら、身体の隅々までチェックされちゃいました
(異世界転移×王子×縛り×媚薬×無理矢理)
【R18】貧しいメイドは、身も心も天才教授に支配される
さんかく ひかる
恋愛
王立大学のメイド、レナは、毎晩、天才教授、アーキス・トレボーの教授室に、コーヒーを届ける。
そして毎晩、教授からレッスンを受けるのであった……誰にも知られてはいけないレッスンを。
神の教えに背く、禁断のレッスンを。
R18です。長編『僕は彼女としたいだけ』のヒロインが書いた異世界恋愛小説を抜き出しました。
独立しているので、この話だけでも楽しめます。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる