1 / 2
プロローグ 1
しおりを挟む昔から、私の姉はこの家の一番で、両親の一番で、私の一番。何でもできて、愛らしくて、誰もを引き付ける能力を持っていた。だから皆、姉を一番に褒める。
そして私に、「お姉様のように立派になりなさい」と言った。
だからいつも姉の真似をして歩いた。表情、所作、勉強の出来まで、全てを。
私と姉は双子だったから、似せればよく似た。私が完璧である姉の真似事をし始めてからは、誰もが姉と私を見間違えた。
姉の真似をすれば両親は褒めてくれた。公爵家の娘としてふさわしいと、誇らしいと。
でもそうしてしまったのが私の地獄の始まりだった。
「ゴホ、ケホッ…」
「せ、先生…!娘は、娘の病気は治るんでしょうか。」
「残念ながら、厳しいかと。死に関わるような病気ではありませんが、完治する可能性は低いです。」
「そんな…!!来月には皇太子殿下の婚約者を決めるパーティーがあるというのに…。」
姉のリンファシーは、治るという見込みがない病にかかってしまった。それからは寝たきりのようになってしまい、
元気に外を出歩ける日は日に日に減って行った。
両親は一番に可愛がっている姉を皇太子の婚約者にして、この公爵家から皇族を輩出したかったらしい。だがそれは姉が病を患ってしまったが故に、叶いそうにない状況に陥った。
「お、お父様。元気を出して。」
ある日私は落ち込む父を励まそうと書斎に顔を出した。その時、父はすぐ私と姉の顔を見間違えた。
「リン、寝ていなければ駄目ではないか。」
「お父様、私…ランデイシーです。お姉様は寝ているわ。」
すると父はハッとしたような顔をして、ズンズンと私の元へ歩いて来た。そして私の顔をじっと見つめると、顔を抱えておかしな笑い声を出し始めた。
「おとう、様?」
「そうだ、この家にはリンファシーによく似たお前がいるではないかランデイシー!!いいかいラン。来月の皇太子殿下の婚約者を決めるパーティーには、お前が参加しなさい。」
「…?お父様はお姉さまを皇太子妃にしたいのでは無かったのですか?」
「そうだ。お父様はお前の姉さんを皇太子妃にしたいんだ。でもリンは病気を患ってしまって、パーティーに出ることが難しい。だから、お前がリンファシーのフリをして出席するんだ。いいね?」
幼いながにも、そんな事をしていいはずがない事は分かった。それは王族の人間を騙す事に等しいからだ。
もしバレてしまったら、この公爵家がどうなるか分からない。
「だめです、それって、皇太子殿下を騙すってことに…、」
「黙りなさい!!」
「っ…!」
「リンファシーが皇太子の婚約者に選ばれればそんなのどうとでもなるんだ。皇族が影武者を使うなんてのは珍しい話じゃないからね。」
「そんな…、私は、私は私です。お姉さまが選ばれてしまったら、一生影武者をやらなければいけないわ。」
「それでいいんだ!!それがこの家と、リンファシーの一番の幸せなんだ!!!…分かったね?
返事は、返事はどうしたんだランデイシー。リンなら、私の言うことに逆らったりしないいい子だ。」
興奮しきった父のその顔は、私から見たら化け物のようだった。父は私と私の人生、幸せの事はどうでもいいというように、家の名誉と、姉の幸せを私の顔に全てをその日押し付けた。
「はい…、お父様。」
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

リリーの幸せ
トモ
恋愛
リリーは小さい頃から、両親に可愛がられず、姉の影のように暮らしていた。近所に住んでいた、ダンだけが自分を大切にしてくれる存在だった。
リリーが7歳の時、ダンは引越してしまう。
大泣きしたリリーに、ダンは大人になったら迎えに来るよ。そう言って別れた。
それから10年が経ち、リリーは相変わらず姉の引き立て役のような存在のまま。
戻ってきたダンは…
リリーは幸せになれるのか

【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。
朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。
そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。
だけど、他の生徒は知らないのだ。
スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。
真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

婚約破棄と言うなら「時」と「場所」と「状況」を考えましょうか
ゆうぎり
恋愛
突然場所も弁えず婚約破棄を言い渡された。
確かに不仲ではあった。
お互い相性が良くないのは分かっていた。
しかし、婚約を望んできたのはそちらの家。
国の思惑も法も不文律も無視しての発言。
「慰謝料?」
貴方達が払う立場だと思うわ。
どれだけの貴族を敵に回した事か分かっているのかしら?
隣国で流行りだからといって考えなしな行動。
それとも考えての事だったのか?
とても不思議な事です。
※※※ゆるゆる設定です。
※※※オムニバス形式。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる