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第百二十五話 薔薇のドレス(2)
しおりを挟む「これは……」
あまりにも美しいドレスと目が合った。
起き上がろうとすると、ごちんっという大きな音を立てて、ユーシアスの額と自分の額が
ぶつかった。
「「っ~……いったぁ!!」」
「旦那様、奥様っ、いかがなされました!?」
「いったたぁ……、すみませんユーシアス。大丈夫ですか?」
「いや大したことはない……。すまん。
君もすまない、大丈夫だ。」
ユーシアスが入ってきた侍女を手で制した。
「お手当てを…」
「私のはいい。妻の手当だけしてやってくれ」
「かしこまりました。」
手当をしてもらう途中、尋ねてみる。
「あ、あの、ユーシアス…これって」
「あぁ、ロゼが眠ってしまっている間に届いたんだ。
もちろん貴方が着るウエディングドレスだよ」
「とってもきれい……。ありがとうございます」
丁度手当が終わり、礼を言うと侍女は部屋から出ていく。
「ロゼをイメージして作ってもらったんだ。
気に入ってくれたか?」
「ええとっても。
私をイメージして、だなんて少し恥ずかしいですが…。
これを来て、貴方と祝福される日が待ち遠しいですわ。」
思えばユーシアスは、ドレスやアクセサリーを買ってくれる時
よく赤い薔薇のモチーフのものをよく選ぶ。
何かこだわりがあったりするのだろうか。
「俺もだよ。…本当に、今更ならが夢のようだよ。
あの時恋した、薔薇の良く似合う少女が自分の妻になるなんて」
「そうですわね。
あなたに初めてお会いしたのは次期皇后として、でしたから。
…まさかとは思いますが、初めて出会った時私が薔薇のドレスを着ていたことと、このウエディングドレスに何かご関係が?」
考えすぎかとは思うも、少し興味が湧いたので聞いてみる。
赤い薔薇がただの彼の好みだった場合は少し恥ずかしいのだが。
「もちろんだとも。
ヴィルテローゼ、君の名前が薔薇にちなんだものだということもあるが、美しいハニーブロンドと堂々とした瞳にはよく赤い薔薇が似合うと思っているんだ。…引いたか?」
跪いて、上目遣いでこちらを見上げられる。
つくづく、この人に大切にされているなと日々思う。
少し強引に見せかけて、日々の気遣いを忘れず、
そしてこちらの意見もちゃんときいてくれる。
こんな素敵な夫に選んでもらったウエディングドレスを
嫌がるはずなどない。
「まさか!とっても幸せに思いますわ、ユーシアス。」
跪くユーシアスの額に、軽くキスを落とす。
「喜んでくれたようで何よりだよ」
「もう最高のプレゼントですわ!
結婚式が終わった後も、…死んでからも私の宝物です。
そうだ、産まれてくるこの子にもいつか自慢したいぐらい」
「そ、それは恥ずかしいから俺がいない時にしてくれ…。」
「ふふっ」
そう笑って、ドレスに近づいてみる。
「…いい式になりますように。」
「だな。」
後当分は準備に追われる忙しい日々になりそうだが、
いい日にしたい。なんせ愛する人と結ばれる一生に一度の幸せの日だ。
それに、このドレスに似合う髪留めやベールも揃えることを考えると一気にやる気が湧いてきた気がしたその時、
今更ながら少し焦りが生まれる。
「…ん??」
「どうした?」
「…ユーシアス、このドレス、肩は完全に見えてしまいますよね?」
「それがどうしたんだ?」
「…マーク」
「ん?」
「こっ、このキスマークをどうしてくれるのですかっー!?」
「…しまった、仕事がまだ残っていたようだ。
俺は公務に戻ろかな…」
「お待ちなさいっ!」
喜び合っていたと思えば、今度はキスマークのことで喧嘩をし始めてしまったので、後の入浴時間にヴィルテローゼは侍女達にからかい倒されることとなった。
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