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第百二十四話 薔薇のドレス(1)
しおりを挟む「んん…、ん??」
空がもうオレンジ色になる頃、夫婦の部屋にあるソファーの上で、目を覚ます。
机の上には少し結婚式の資料が散らばっており、どうやら
ユーシアスと結婚式の段取りについて話し合っている途中で
寝てしまったらしい。
しかも申し訳ないことに、ユーシアスに膝枕をしてもらっていた。
「どのくらい寝てしまっていたのかしら…申し訳ないです」
今朝カフェを閉店したかと思えば、屋敷に帰れば結婚式の打ち合わせに追われていた。
"結婚"は、書類上により成立しているものの、公爵、公爵夫人との式のため、小さく行うことは難しい。
もちろんそれだけではなく、
皇帝皇后と共に公爵、公爵夫人が友人関係にあるということもあり、皇帝が来る時点で盛大な式となるだろう。
そしてヒルデ公爵と友好関係を築いてきた貴族、生家である
ネージュ公爵家一同、騎士団一同、そしてヒルデ領民であれば自由に参加できることとした。
大勢が来ることを予想した式にしなければならないため、
準備もそれだけ忙しい。
だが昨日帰ってきた時間が時間だったため、どうやら眠りこけてしまったらしい。
もちろんユーシアスもだが。
「……ん、あぁ、ロゼ、起きたのか。」
「すみません、寝てしまったようで。」
「いいさ、少し休憩しよう。
それに、男の硬い膝枕で悪かったな」
「いいえ。お気遣い感謝いたします。」
ユーシアスは飲む紅茶から何まで、そんなにまだお腹も膨らんでいないのにすごく気遣ってくれる。
「無理をするなよ」が最近の彼の口癖だ。
お互いに体を起こすと、そういう雰囲気でもなかったと思うのだが、抱きしめられる。寝ぼけているのだろうか。
「あらあら、寝ぼけていらっしゃいます?」
と、からかうように笑う。
「……寝ぼけていない。」
「ほんとかしら。」
「ん…」
ユーシアスの目がとろんとしていたのが珍しくて口元が緩んだのだが、その直後、急に首筋に少しの痛みが走ったので声がもれる。
「あっ……ちょ、ちょっとユーシアス!
キスマークなんて付けたら侍女達にからかわれます!」
「この前付けたのが消えかかっている。もう少し……」
「ひゃあっ」
ソファーに軽く押し倒される。
やはり寝ぼけているらしい。やはりなかなかに珍しい。
可愛い、とも思うも、この前首やら胸やらにつけられた大量のキスマークを入浴の際、侍女に見られてものすごくからかわれた事がある。
もう二度とあれはごめんだ。
させまいとユーシアスの胸板を
ぐいぐいと押す。
「ちょ、ちょっとユーシアス!ほんとにだめ……!!
…あ、あら?」
今の今までまったく気が付かなかったが、逆さまに美しいドレスが目に入る。
それはそれは赤く、赤く美しい薔薇がいくつも飾り付けられた
ウエディングドレスだった。
「……これは…」
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