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第百十五話 幸甚なひとりごと(1)
しおりを挟む「い、いつのまに!?」
シアンが結婚する話など初耳だ。驚きで声が思わず裏返る。
「初耳なのですが…」
「報告する間もなかったから当然でしょ。会わせてもらえなかったんだもの」
「それはうちの旦那がすいませんでした」
確かに初耳なのは当り前だ。夫婦間でいざこざがあり、心配してくれていた人に
無事を報告することをしていなかったこちらが悪い。
「相変わらずユーシアスちゃんの独占欲ったら末恐ろしいわぁ。
どう?大丈夫?酷い束縛受けてたりしない?」
確かにユーシアスの独占欲にはたまにゾッとすることもある。
本人曰く三年の片思いだった故らしいが、少し他の男の人の名前や会話がでた
くらいで拗ねる癖はどうにかしてほしかったりする。
「まあ落ち着きはしましたけど相変わらず…ですね。
別に困ってませんしかまいませんけど…少し他の男の人の名前とか会話に
拗ねるのは直してほしかったりします」
クスっと笑いながら人数分の紅茶をテーブルに運ぶ。
「あらやだ、のろけられちゃったぁ。
困ってないなんて、幸せって証よね、うふふ、うらやましい」
「て、いうか…ご結婚おめでとうございます。で、お相手はどなたです?」
それが聞きたかったのに、こちらの話をする流れに持ち込まれていたことに
今気が付く。こちらとしてはその流れを計算して作り上げようとしていたシアンが末恐ろしい。
「あなたの様子が聞きたかったのもあるけれど
誤魔化そうとしてたのも賢いローアンにはバレバレだったってわけか…。」
「残念でしたね!さあ洗いざらいご結婚までの経緯をお話しくださいな」
なんてちゃっかりシュリの隣の席に座る。
「え、え~~、やあよ。」
「お話できない理由でも?」
「だってあんまり言いふらすとあの人怒るんですもの。
それに私が滅茶苦茶ださ~い話なの!」
ぷりぷりとシアンが頬を膨らませて紅茶を口に運ぶ。
「……じ~~~…」
紳士で気配りができるシアンは貴族間の女性人気が高い。
そんなシアンと結婚できるのに言いふらすと怒る、そしてシアンがださかった話が気にならない訳がない。
「だー!!わかった、分かったから!そんなに見ないの!
言っとくけどこれは独り言だからねぇ!?言ったことバレたら半殺しくらうから!」
「いや、半殺しじゃ済まないでしょ、あの人なら」
「間違いないね」
「ム…」
そんなに怖い人なのかと思いきや、シュリとツキヤ、ラビリムが「半殺しでなく殺される」
という意見を出したことに、首を傾げる。
「三人は…シアンさんのご結婚相手とお知り合いなんですか?」
「そうですね。シアンの結婚相手は同じ剣聖だった人物ですから」
「えええ!?」
同じ剣聖であれば、一度くらい見たことがあるかもしれない…と思ったが、思い浮かぶ
人がいない。
少なくとも午前勤務だった人であるはずだ。
「あー…オホン。私の結婚相手は私の剣の師匠で十二番目の剣聖で現騎士団大佐の
アルカンジュ・シャティエル。今年で三十歳だけどね」
「……ん?」
シアンはまだ二十歳そこらだったと思うので、かなりの年の差結婚だと思ったが、
驚いたのはそこではなかった。
十二番目の剣聖、ヴィルテローゼが十三番目に任命されるまでは最後の番の
剣聖だったアルカンジュという女性は、年的にシュリと変わらぬ15、16歳ぐらいの見た目で
女性というよりかは少女に近かったと記憶している。
会って実際話したことはなかったが、神秘的な美しさを放っていたので忘れられる名でなかったのだ。
「さ、30!?て、てっきり年下の女の子だと思ってました…」
「あら?あの人と面識あったかしら?」
「ないですけど…すごくきれいな人だったので」
「分かってるじゃないの。
まあ……恥ずかしい話あの人に振られた回数は
100回超えてるわね」
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