108 / 128
第百八話 結婚式(3)
しおりを挟む「…あの、あの、ユーシアス?
ダメだったらダメって言ってくださいね?」
じーっとヴィルテローゼを見つめるユーシアスに
焦りの表情を浮かべた。
やはり騎士団長にそんな時間があるわけがないのかと、
ヴィルテローゼは少し落ち込んだ表情をする。
「……しよう」
「え?」
「したいな、結婚式」
ユーシアスがへにゃりと微笑んでヴィルテローゼの手を握る。
それに何だか、ヴィルテローゼは泣きそうになってしまった。
「大勢呼んでもいいが、領地の領民に祝福されて行う結婚式もいいな。きっと皆祝ってくれるよ」
結婚式を行うことを許してくれたのは嬉しいが、
ユーシアスが前のような柔らかい表情で微笑みかけてくれることが、今は何より嬉しいんだと、気がついた。
目覚めてからのユーシアスはどこか焦ったり少し怒っているように見える硬い表情で、それも心配してくれているようで嬉しかったが
眠りにつく前のような、安心しきって心を許してくれている
自分だけに見せてくれる笑みを見て、
ようやく「帰ってきた」実感が沸いた。
「…どうした?ロゼ」
「い、いえ。領地の方々もお呼びしたいですけど、
皇后陛下やシュリ…しばらく会っていないけどシアンさん、
ツキヤさん、ラビさんもお友達ですから呼びたいです。」
「ああ、多分皇帝陛下も呼ばないと拗ねるから呼ばないとな」
それにクスクスと笑って、ユーシアスの手を握る。
「それと、やっと…帰ってこられたんだなぁって、思って」
握った手は、握り返されユーシアスは安心させるように
ヴィルテローゼを抱きしめた。
「大丈夫、ちゃんとここにいるし、ロゼは俺の奥さんだ。
明日の朝使用人の皆に挨拶して、カフェを無理しないように
もう一度開いて、ドレスを選んで、式で永遠の愛を誓おう。
…それで、起きて笑っていてくれるロゼに、きちんと指輪をはめさせてくれ。」
抱きしめられているのでユーシアスの顔は見ることが出来なかったが、きっと泣きそうな顔をしている気がした。
何事も無ければ、結婚式を挙げて愛を誓っていた日に、
眠るヴィルテローゼにユーシアスは指輪をはめた。
それがどれだけ無念で虚しかったことだろう。
いつ目覚めるか分からない恋人に、誓いの言葉もなく愛を誓う印である指輪をはめたのだから。
だから、今日も明日も明後日も、明明後日もその先も、夫と朝日を迎えて、その日一日を大切に、その一日を幸せと思える日々を
ユーシアスと永遠に歩み続けられますように、とヴィルテローゼは目を閉じる。
「…はい、おやすみなさいユーシアス。
良い夢を」
0
お気に入りに追加
1,578
あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
window
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】
小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」
ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。
きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。
いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる