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第百七話 結婚式(2)
しおりを挟む「……寝たか?」
「……まだ…。」
ユーシアスはポンポンとずっと頭を撫でてくれていて、
寝たのかを確認してくる。
「眠れないか?」
「ちょっと…。ごめんなさい、そばにいてなんて我儘言って。
お仕事残ってるんじゃないですか?」
「何言ってるんだ。全然我儘じゃないぞ。
もっとロゼは夫人として我儘言っていいぐらいなんだから」
我儘…と言われてもヴィルテローゼにはしっくりこない。
公爵令嬢で家は裕福だであったが対して何にも目を向けてこなかったし、ファッションに関してはドレスやアクセサリーは次期皇后であった故自分で買わずとも王宮から送られてきていた。
とりあえず思いついたのは使用人達に挨拶をすること。
元にヴィルテローゼのことを知らない者も新人であればいる。
公爵夫人であれば家の財産を管理したりお茶会を開いたり
することもあるだろう。
その為には使用人とも信頼関係を築き、仲良くすることも大切だ。
「……じゃあ、我儘いいでしょうか。」
「何だ?」
「その…使用人さん達に挨拶させてくれませんか?
公爵夫人になった訳ですからこの家のことも管理する機会は
増えると思うんです。仲良くも、させていただきたいし。
あ、あとお店も三日間だけ…でいいので少し開かせてくれませんか?」
体が丈夫でなく、店を開くのは大変かもしれないが、
それでも閉店前として店もきちんと終わらせたい。
こんなに我儘を言って大丈夫だろうか?とユーシアスを
ヴィルテローゼは不安そうに上目遣いで見上げた。
「なんだそんなことか。
もうロゼを縛り付けるようなことはしないから、
明日の朝にでも皆に挨拶しにいこうか。
きっと皆喜ぶ。
店は休みを取ってくるから俺の目の届くところでな。
倒れたこともあるし心配なんだ。」
休みを取らせてしまうことは申し訳ないが、
それでも店を開けることは嬉しかった。
騎士団長大佐になってからというもの、非番の日にバタバタと
急いで開けて、それで仕事の日は全く開けれていなかった。
最後の三日間として、しっかり閉店にしたいのだ。
「あとは、もうないのか?」
「あ、ええっと…」
あとひとつ願望があった。
結婚式をユーシアスとヴィルテローゼはしていないのだ。
夫婦になる時貴族も結婚式をする。
それは客人を大勢呼ぶ大きなものもあれば領地の人間だけを呼ぶ比較的小さいものもある。
ヴィルテローゼが眠ってしまっていたため、
形式上は夫婦であっても、指輪はあっても結婚式をしていない。
愛する人と永遠の愛を違う場所、少し遅いかもしれないが、
しておきたいのだ。
「その、領地の人達だけでもいいのでお呼びして、
結婚式…がしたいのですが。」
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