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第百六話 結婚式(1)
しおりを挟む「約束……?」
「…私、私ユーシアスから離れないって、
目覚めた時約束して、あれほど心配かけたのに
何してるんだろ……ごめん、ごめんなさいっ……」
泣きじゃくりながら謝ると、ユーシアスはきょとんとした
顔になると、ふんわりと笑ってヴィルテローゼを抱きしめる。
「…ロゼが謝ることは何にもない。
悪いのは全部俺だよ。今回のことも、剣聖制度が無くなる時も、
俺はなんにも話してなかったし、ロゼのことを考えてのつもりだったけど、全然、全然ロゼのためじゃなかった。
ロゼなら、分かってくれるっていう、ただの俺の甘えだ……。
本当は、少し怖かったんだ。子供がいるってこと話したら、
びっくりして……そして嫌がられるんじゃないかって。
それが頭から離れなかったけど、……」
そう言ったユーシアスの声は、だんだんと細くなって行き、
そして泣きそうな濡れた声へと変わる。
今にも泣きそうな程に肩が震えて、こちらと目を合わせようとしない。
ああそうか、ユーシアスは拒絶されることを恐れていたんだと
ヴィルテローゼはハッと目を見開く。
やっと授かった命を、愛する人に否定されることを、
恐れたのだ。
そうとも知らず、なんで早く言わなかったのだ、子供がいたことを
嫌がるわけがないのになんで言わなかったと怒って、
知っている側のユーシアスの気持ちを考えず、知っているユーシアスは知らないヴィルテローゼの気持ちを考えられず、
結局、お互いがお互いの気持ちを押し付けあっていただけに過ぎないことだったのだ。
それを聞いたヴィルテローゼは下唇をぎゅっと噛んでいる
ユーシアスを震えた手で抱きしめ返す。
「…ごめんなさい。
まず母親になる私が気がついていなかったことから
申し訳ないけれど……自分のことばっかりであなたの気持ちを、
全然考えずに被害者ヅラして、馬鹿みたい……。
でもねユーシアス、これだけは言わせてください…、
ヴィルテローゼ・ヒルデは、ユーシアス・ヒルデを生涯の伴侶として、夫として心から愛しています。
だから、あなたとの間に授かったこの子の命も、嬉しいし、
一緒に育んでいきたい。お腹のこの子に誓いましょう。
二度と疑わずお互いの愛を信じ、隠し事はせずに言いたいことがあったら言いましょうって。」
ユーシアスは目を見開くと、涙を流しながら何回も頷いた。
「…ごめん、ロゼ……。
俺も、心から愛している。
いずれ俺たちの元に来てくれる、新しい命に誓う。
二度と隠すようなことはしない、
言いたいことがあれば言う。君との愛が、この子と共に、
永遠に続きますように……。」
そうユーシアスが行った時、雨が降り始めた。
その雨音を聞きながら、二人はしばらく抱きしめあっていた。
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