ヒロインに剣聖押し付けられた悪役令嬢は聖剣を取り、そしてカフェを開店する。

凪鈴蘭

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番外編1 皇后の舞台裏(2) 百話記念

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「…んっ!?」

目覚めると自宅、リカレンス家の自室だった。
アマレッティは何があったんだっけ…と必死に眠る前のことを
思い出そうとする。
何か重要なことが抜けているような…でも別にいっかぁと
忘れようとしたがそうもいくまい。

「聞いたぞアマレッティ!!
グラディウス殿下から求婚されたそうだな!
がっはっはっーーー」
「それだーーー」

父の声で全てを思い出す。
いつものようにグラディウスの警護にあたり、
アフタヌーンティーの時に「求婚」、されてしまったのだ。

まずどうして求婚などされたのだろうか。
アマレッティはずっとグラディウスは兄の婚約者である
ヴィルテローゼに横恋慕しているのとばかり思っていたが
その護衛の自分に好意が寄せられていたとは夢にも見なかった。

「君のことが好きだから結婚して欲しい」
その言葉が脳内で無限再生されて止まらない。
ぼぼっと顔に熱が集まり、シーツに顔を埋めた。

「はっはっは、我が娘は恥ずかしがり屋なようだな」
「そんなっ、笑い事ではありませんお父様!
その話、お断りさせて頂きますから!」
「何を言う!グラディウス殿下をお前はずっと
慕ってきたではないか!」

それはもちろんその通りだが忠誠を深く誓っていたため
グラディウスを恋愛対象だなんて考えたことはないのだ。
逆にあんなに魅力的なグラディウスを恋愛対象として見なかった
自分がおかしいのか?
と現在混乱さえしている。

「それは主として……」
「…グラディウス殿下はお前を恋する乙女のように
見つめていたぞ」
「そんなこと言ったってこの婚約話は白紙に…」
「そんなことを言うならば明日王宮の侍女に聞いてみればよかろう。あ、やらせではないぞ。
命にかけて誓う」

何を…と思ったが翌日アマレッティは空いた口が閉じることとなった。

「…え?殿下がアマレッティ様をどう思っているように
見えるか…ですか?」
「そう!!普通、普通ですよね!?」
「いいえ、それはもう愛おしい何かを見つめるような…
熱烈な視線を送ってらっしゃいましたわ!」
「え?それに気が付かなかった??
アマレッティ様ってば罪な女ですわねぇ、
気がついてないだなんてグラディウス殿下…おいたわしや」

侍女50人にアンケートをとったところ、
50人が「グラディウスはアマレッティに好意を寄せている」
と答えた。

「なっ…なんてこと……」
「アマレッティ?授業、仕事、終わったけれど」
「うわぁぁぁあっ、グラディウス殿下!
し、失礼致しました、行きましょう!」
「うん」

いつも見せてくれるグラディウスの笑顔を見て
緊張が解けたようにアマレッティは笑う。

「…あの、殿下」
「ん?なんだい?」
「…その、ええっと……
どうして私めなどに求婚を…というか、その、いつから…?」

ごにょごにょとアマレッティは口ごもる。
相手がこちらを恋愛対象として見ていた、それだけで
こうも見え方が違う。護衛としてずっと側にいて、
何回も守って守りあって、そうして来た自分が一変、
これではただの恋する乙女のようだと自分に呆れてしまう。

「…なぁに、聞こえないよアマレッティ。」
「いっ、意地悪です殿下…!聞こえていたでしょう…?」
「いいや聞こえない。もっと大きな声で」
「うう…っ、殿下、はいつから私、に好意を寄せてくれていた
のでしょうか?私てっきり殿下はヴィルテローゼに
想いを寄せているとばかり…」
「ふふ、やっと目を合わせてくれた。
いいよ教えてあげる、こちらにおいで」
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