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第九十九話 忘我(1)
しおりを挟む「…あら?」
王宮でアマレッティはユーシアスに遭遇する。
てっきり家に残っているのかと思っていたが、仕事とはどうやら
王宮でしてきたらしい。
荷物からしてもう帰る所なのだろう。
「皇后陛下、もう妻とのお話は済まれましたか?」
「ええ。…体調が良さそうではなかった。」
「朝は元気にしていたんですが…。
どのような症状で?」
もし、ユーシアスがヴィルテローゼを逃がさないために
妊娠させたとしたら…なんて考えが頭をよぎる。
だがそれはシュリが言った通り、ただの想像であり推測にもならない。子供のありもしない噂や陰口と何ら変わらないものなのだ。
それにヴィルテローゼが妊娠したかも分かっていない。
だが少なくともアマレッティは、ユーシアスならそれをやりかねないと考えている。
妊娠してもしていなくても、ヴィルテローゼは束縛されすぎだ。
「皇后陛下?」
「味覚の変化に吐き気よ。」
「それ…は……」
「ねぇユーシアス」
次の瞬間、ユーシアスの表情が凍てついたものとなる。
アマレッティの所有する聖剣、銃剣の「アルズィオーン」を
アマレッティがユーシアスに向けたのだから。
「……それは皇后になる故もう使わないと思っていました。
して、これはどういうことでしょうか。」
「答えなさい。
…あなたは、ヴィルテローゼに妊娠の兆しがあることを
知っていたの?」
ユーシアスが白ならこの行動はかなりの重罪であると承知で
アマレッティはアルズィオーンをユーシアスに向ける。
鋭い視線を向け、まるでらその目は狼のよう。
「……ええ、知っています」
「本人は気がついていないようだったけれど、何故あなたが?」
「妻の妊娠が分かったのは彼女が眠りについてからです。
兆しが出たのは眠る前…。」
その言葉にアマレッティは衝撃を受け、
フラリと体が傾くが、質問を続ける。
「……妊娠の兆しが眠る前ですって?」
「ええそうです。
ヴィルテローゼはただの体調不良だと思っていたようですが、
味覚の変化や頭痛や吐き気、1度調べようかと思っていたのですが
その前にヴィルテローゼは事故にあった。
だから医師に頼んで魔法で胎児の成長を止めさせました。
で、目覚めた今それが動き出した。」
「まさかあのきつい束縛は彼女が子を身篭っているからだとでもいうの!?ヴィルテローゼはまだ気がついていないのに、何故言わないの!!」
「目覚めてそのようなことをすぐに言われれば混乱することを
考慮した結果です。いけませんか?」
「……なるほど、夫として考えた結果という訳ですか。
ならば良しといたしましょう。」
アマレッティがアルズィオーンを取り下げたことに
ユーシアスはホッと胸を撫で下ろす。
「……ですが説明しなかったことは感心できません。
ロゼを気遣ったとはいえ…産むのはあの子本人なのです。
きちんと説明をした方がいいと思うわ。
…それと、あの子怒ってるわよ。
ノエル…だったかしら?あの子下手くそな監視役ねぇ。
あんなのだったら鈍感なロゼにもバレちゃう……
帰ったら覚悟しておくのね」
そのアマレッティの台詞を聞いて、
ユーシアスの背筋が凍ったのだった。
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