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第九拾六話 偽りなく(2)
しおりを挟む「ヴィルテローゼ!」
「アンちゃんっ!!」
ヴィルテローゼのいる別館に、
皇后であるアマレッティと、現大佐であるシュリが
押しかけた。
「レッティ、シュリ……」
ヴィルテローゼが微笑んで二人に微笑みを見せると
2人も目に涙をため、ぱあっと微笑みヴィルテローゼに
抱きついた。
「ロゼ……ロゼェっ……!!」
「うわぁぁぁんっ!もう会えないかと思ったよおおおっ」
二人がいきなり抱きつき泣きじゃくるので
ヴィルテローゼは「おおう…」とポカーンと口を開けたが、
二人の頭をポンポンと撫でた。
「……ただいま、帰りました」
「……おっ、おかえりなさい……」
「おかえりぃっ…」
女友達の感動の再開をユーシアスは微笑ましく眺めていた。
昨晩にはヴィルテローゼの母のブレティラ、姉や弟が
訪れ、彼女の目覚めを喜んだ。
そして今はアマレッティとシュリに知らせが行き、
こうして三人で涙を流している。
「……しばらくは、家族とあなた達以外には会えないかも」
「なるほど。旦那の束縛が厳しいのも考えものね」
アマレッティがユーシアスに聞こえるようにボソリと
呟くが、ヴィルテローゼは不満な顔ひとつせずに
笑う。
「いいの。ユーシアスには一番心配をかけたし、
しばらくは心配かけないようにしたいっていうか……」
そうするとシュリが不満だと言うように頬をふくらませる。
「それでもさぁ、……女の子同士の話を立ち聞きするのは
趣味悪いよねぇ?
まぁ旦那としてはしばらく男共に会わせたくないのは
分からないけど。」
チラリとシュリもユーシアスを見る。
「ごめんなさいユーシアス。
少しだけ時間をくれますか?」
ユーシアスもさすがに女性の会話を立ち聞きするのは
二人に不満があるようなので
一旦下がることにした。
「……分かった。
少し仕事をしてる。
皇后陛下、シュリ様…くれぐれもロゼに余計なことを
吹き込んだり言ったりしないようにお願いします」
ユーシアスが少しアマレッティとシュリを冷たい目で見つめる。
シュリは露骨に「はぁ?」という視線を向けたが
アマレッティが対処する。
「こぉらシュリ。あまり夫婦のことに他人が口出しするものじゃないわ。ヴィルテローゼが嫌がっているなら黙っていないけど
この二人には絶対的な信頼関係がある……。
行きましょ?」
まだ歩くのが上手くないヴィルテローゼを
2人が支え、庭園まで出ていくのをユーシアスは見送る。
だが三人だけにするはずなど無い。
「……ノエル、いるか?」
「は、はいユーシアス様。」
「客人にお茶と菓子を。
それと…会話に外のことが含まれたなら報告をしてくれ」
「えっ」
「嫌なら他の人間にやらせるからいいんだぞ。」
ユーシアスがフッと苦笑いをすると
ノエルは勢いよく首を振る。
「じゃあ、任せる。」
「……はい」
我ながらひどいことをしたなとユーシアスは
髪をぐしゃりとかき分けた。
ノエルの気持ちを知っていながら、
断れないと知っていながら妻の側に控えさせるのは
余りに酷なのだ。
だがヴィルテローゼが再び、
目覚める前のように周りと関わりすぎてはならない。
「……許してくれ」
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