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第八十二話 寵妃の眠姫(3)
しおりを挟む「…そう、だったんですか」
「あからさまにいがーいって顔してんじゃねぇよ。
これでもガキん頃は純粋だったんだぜ?
兄さんは、あんな暴言みたいなセリフ吐いてたが本当はもっと優しくて頭が良くて…時には断れきれず受け入れてしまうような
気があんまり強くない人間なんだ。」
ハヤテの言うことは先程の男、元No.1のユリーダとは似ても似つかない証言だった。
入団の速さでいえばハヤテの方が先輩なのでユリーダのことを
ユーシアスはよく知らないが、
亡霊であり、国民を恐怖に陥れ、尚且つ自分の最愛の恋人を眠姫にしてしまった男のことは無視できない。
「…続けてください」
「兄さんは剣聖なんてクソだなんて、一度も言ったことなかった。汚れ仕事、雑用ばっかのこのクソな仕事に、誇りを持ってた。
そんな仕事でも、国の役にたてるならって……、すげぇ立派な人だった。
だがな、兄さんは隣国との戦争の帰り道に死んじまったんだ。
最後まで、剣聖という仕事を誇りに思うって……笑って息を引き取った。ちょうどあの森でな」
隣国との戦はかなり激しく、剣聖も何人か駆り出されたと歴史上の
記録には残されている。
そしてそこで聖剣アルデアンの保持者、
ユリーダ・ゼロ・アルデアンは息を引き取り、
そしてその場で実の弟であるユーキリーナ・レイブンに、
後のハヤテ・ゼロ・アルデアンに自分の聖剣を託したことも。
「兄さんは最後まで国の心配してた。
No.1っつーことは、剣聖のリーダー。
それにNo.1の空席は大きい……。だから最後にアルデアンを託しやがった。こいつも頼むってな」
だが聖剣は魂の素質、身体能力の高さから聖剣が剣聖を選ぶ。
剣聖は聖剣があるから強いのではない。
強いから聖剣に選ばれし者なのだ。
だがらユリーダの意思など関係しない。
だがそこでアルデアンはユーキリーナを選んだらしい。
兄弟であり兄のことを心の底から尊敬しているハヤテの魂は、
ユリーダと近しいものだったのかもしれない。
「だか、戦が終わって何年か経ったら……
森にデカいクレーターが出来るって言う話になってな。
それがあの亡霊……元ユリーダだった人間だ。
変わり果てた姿にまいったよ。
乱暴な言葉使いにひねくれた表情、光のねぇ瞳には
優しさのかけらもない」
「待ってください、それって……
ロゼが調査に向かう前にあの騒ぎがもう一度あったってことなんですか!?」
「いや、その時は魔物の足跡だとか認識されててな。
俺が花を手向けに行った時に、会ったんだ。」
「…しかも、亡霊とはどういうことなんですか」
「…深い怨念が篭ったまま死ぬと、成仏しきれねぇことがある。
それが亡霊やらネクロマンサーって類のものだ。」
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