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第八十一話 寵妃の眠姫(2)
しおりを挟む「黙れ、テメェなんて兄貴じゃねぇっ!
死ぬ直前に俺にアルデアンを託して死んだんだよ
兄さんは!!亡霊ふぜいがっ……」
その言葉にユーシアスは息を飲む。
亡霊風情、アルデアンをハヤテに託して亡くなったこと……
そのふたつだけの言葉は、飲み込むには無理がある
ワードで頭が追いつかなかったのだ。
「お前がそんなに怒鳴るなんて珍しいじゃねぇか。
何だ?お気に入りの子を傷つけちまったことに腹を立てたのか?」
「てんめぇっ……!!」
ハヤテと同様にユーシアスも男を睨む。
すると男は楽しくなってきたと言うように満面の笑みを見せると手を広げ笑い始めた。
「これは救済だ!!
剣聖制度が無くなったとかほざいてやがったが
実際聖剣を手放せさせずに戦わせてるんじゃ
結局は一緒だろ?ここで騒ぎを起こせば騎士団か剣聖が派遣されてくる。剣聖ならば聖剣を壊し眠りにつかせ救済を!!
騎士団が派遣されたならば憎い思いをこめて殺してやるだけさ!!」
「何が救済だっ!!
騎士団の一員となり帝国の剣として力を振るうと決めたのは俺ら十三人の剣聖の意思だっ!!
あのなぁ、別に辞めてもいいって許可は降りてたんだぜ?
だが誰一人辞めはしなかった!!それは…一国民としてこの国を愛している証拠であり、騎士団長の言葉に心動かされた俺らの紛れもない意思なんだよ……!
それ以上口走ったらぶっ殺すぞ…」
「まあいい、可愛い弟に免じて見逃してやるよ。
ユキ…いやハヤテ・ゼロ・アルデアン。
いつかお前にも救済を……」
そう言って男は黒い靄となって姿を消した。
「…団長、ローアンは?」
ハヤテがユーシアスに目を向けると、ユーシアスは
光のない瞳で答えた。
「…もう、眠ったみたいだ。」
帰りの馬車の中で、ハヤテが口を開いた。
「…お前には、ローアンの婚約者である団長には話しておかねぇとな…」
ポツリとハヤテが口を開く。
「あれは…元No.1の剣聖であらせられた…
ユリーダ・ゼロ…アルデアン様ですよね?」
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「そう。真名を、アイザック・レイブン。
俺の兄貴だよ」
「ユリーダ様は何年も前に戦死されておりますよね……?
亡霊風情だとか言っていましたが、どういうことです?」
ユーシアスがハヤテを鋭い眼光で睨みつける。
それにハヤテは落ち着けよというように冷静な瞳を向け、
言いたくなさそうに全てを話し始めた。
「お前とは全然会わなかったから知らねぇが、
ユーキリーナ・レイブンとしての俺は騎士団に所属してた。
兄のアイザックが剣聖として戦ってるのに、憧れた一心でな」
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