79 / 128
第八十一話 寵妃の眠姫(2)
しおりを挟む「黙れ、テメェなんて兄貴じゃねぇっ!
死ぬ直前に俺にアルデアンを託して死んだんだよ
兄さんは!!亡霊ふぜいがっ……」
その言葉にユーシアスは息を飲む。
亡霊風情、アルデアンをハヤテに託して亡くなったこと……
そのふたつだけの言葉は、飲み込むには無理がある
ワードで頭が追いつかなかったのだ。
「お前がそんなに怒鳴るなんて珍しいじゃねぇか。
何だ?お気に入りの子を傷つけちまったことに腹を立てたのか?」
「てんめぇっ……!!」
ハヤテと同様にユーシアスも男を睨む。
すると男は楽しくなってきたと言うように満面の笑みを見せると手を広げ笑い始めた。
「これは救済だ!!
剣聖制度が無くなったとかほざいてやがったが
実際聖剣を手放せさせずに戦わせてるんじゃ
結局は一緒だろ?ここで騒ぎを起こせば騎士団か剣聖が派遣されてくる。剣聖ならば聖剣を壊し眠りにつかせ救済を!!
騎士団が派遣されたならば憎い思いをこめて殺してやるだけさ!!」
「何が救済だっ!!
騎士団の一員となり帝国の剣として力を振るうと決めたのは俺ら十三人の剣聖の意思だっ!!
あのなぁ、別に辞めてもいいって許可は降りてたんだぜ?
だが誰一人辞めはしなかった!!それは…一国民としてこの国を愛している証拠であり、騎士団長の言葉に心動かされた俺らの紛れもない意思なんだよ……!
それ以上口走ったらぶっ殺すぞ…」
「まあいい、可愛い弟に免じて見逃してやるよ。
ユキ…いやハヤテ・ゼロ・アルデアン。
いつかお前にも救済を……」
そう言って男は黒い靄となって姿を消した。
「…団長、ローアンは?」
ハヤテがユーシアスに目を向けると、ユーシアスは
光のない瞳で答えた。
「…もう、眠ったみたいだ。」
帰りの馬車の中で、ハヤテが口を開いた。
「…お前には、ローアンの婚約者である団長には話しておかねぇとな…」
ポツリとハヤテが口を開く。
「あれは…元No.1の剣聖であらせられた…
ユリーダ・ゼロ…アルデアン様ですよね?」
すやすやと息を立ててまるで眠姫のごとく眠るヴィルテローゼの髪を撫で、ユーシアスが答える。
「そう。真名を、アイザック・レイブン。
俺の兄貴だよ」
「ユリーダ様は何年も前に戦死されておりますよね……?
亡霊風情だとか言っていましたが、どういうことです?」
ユーシアスがハヤテを鋭い眼光で睨みつける。
それにハヤテは落ち着けよというように冷静な瞳を向け、
言いたくなさそうに全てを話し始めた。
「お前とは全然会わなかったから知らねぇが、
ユーキリーナ・レイブンとしての俺は騎士団に所属してた。
兄のアイザックが剣聖として戦ってるのに、憧れた一心でな」
0
お気に入りに追加
1,578
あなたにおすすめの小説

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。


この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる