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第七十九話 それはひどく美しく咲いて(3)
しおりを挟む援軍が来るまでに持ちこたえれるかどうか。
来る人間が元剣聖ならば15分、それ以外ならば30分から40分というところだろう。
こんな考えは我ながら情けないが、かなり余裕がないため
援軍が命綱となっていた。
「あなたの目的は?」
一番聞きたいこれが聞けていなかった。
ただものすごい速さの攻撃を一方的にされ死ぬか死なないかの境目に
すっと立たされているだけ。
大人しく降参する輩より目的をペラペラと喋る輩の方が圧倒的に少ないが。
「お嬢ちゃん剣聖だろ?その武器はブリューナクか。」
「質問を質問で返さないでくれませんかね…。
聞きたいことがあるのはこちらなんですがねっ!!」
蔓を生み出すとその蔓から毒を発射させたがそれも全て避けられる。
これも避けられてはハッキリ言って勝てる気がしない。
「まあいいじゃないか。」
「手の内を曝せなんて随分大胆な物言いですこと」
「まあ俺はブリューナクの先代と知り合いだからな、聞かなくても知っているさ。
あれだろ、お嬢ちゃんが聞きたいのは
俺が何者なのか、何故保持者がいるはずの聖剣を持っているのか、森にできたクレーターを
作ったのが俺なのか、俺だとしたら何が目的が聞きたい…ってところか」
「ええ。間違ってはいませんよ」
だがこの男がアルデアンを保持しているということは
最悪ハヤテは死亡している。
「安心しろ。…ユキは死んでねぇから」
「ユキ…ハヤテの真名でしょうか。
まあ今はそんなこと言っている余裕…私にはないですけれど」
「ははは、そうだよなあ。
お前さん番号は?」
「もう剣聖制度はなくなっているけれど…元No.13…十三番目の最後の剣聖」
「十三番だぁ!?馬鹿言うんじゃねぇよっ」
「うっ…」
攻撃を完璧にかわし損ねて少し攻撃を喰らってしまった。
「それに剣聖制度が終わった…?
俺たちは一生永遠に国のために汚れ仕事する奴隷のはずだろ。
誰がそんなことを…」
心底驚かれた顔に、余裕がなくなったので
馬鹿にするように鼻で笑ってやる。
「知らなかったようですねぇ…。
騎士団長がそういう提案をしてくれたのです。元剣聖の我々はそれに
賛成しただけのこと。
時代が変わったんです、何番だとか聞いてこないで下さい」
「てめっ…!!」
それからしばらく競り合いは続き、体力の限界に追い込まれていた。
援軍頼みなのに援軍は来る気配がまったくない。
死を、覚悟するべきだろうか。
「いや…まだ、まだ…!」
来年の春には正式に婚約が結婚という結ばれる形となり、
二人で幸せになるって思っているのに、こんな男に負けるなどあってはならない。
怪我をしてでも無事に、無事に帰らなければ未来はない。
「ローアン!!」
「ロゼっ!!」
後ろからした声に、やっとかと振り返る。
「ハヤテ、ユーシア……え?」
愛するユーシアスの名を呼ぶ前に、右薬指から指輪が、
ブリューナクがボロリと崩れ落ちたのだった。
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