77 / 128
第七十九話 それはひどく美しく咲いて(3)
しおりを挟む援軍が来るまでに持ちこたえれるかどうか。
来る人間が元剣聖ならば15分、それ以外ならば30分から40分というところだろう。
こんな考えは我ながら情けないが、かなり余裕がないため
援軍が命綱となっていた。
「あなたの目的は?」
一番聞きたいこれが聞けていなかった。
ただものすごい速さの攻撃を一方的にされ死ぬか死なないかの境目に
すっと立たされているだけ。
大人しく降参する輩より目的をペラペラと喋る輩の方が圧倒的に少ないが。
「お嬢ちゃん剣聖だろ?その武器はブリューナクか。」
「質問を質問で返さないでくれませんかね…。
聞きたいことがあるのはこちらなんですがねっ!!」
蔓を生み出すとその蔓から毒を発射させたがそれも全て避けられる。
これも避けられてはハッキリ言って勝てる気がしない。
「まあいいじゃないか。」
「手の内を曝せなんて随分大胆な物言いですこと」
「まあ俺はブリューナクの先代と知り合いだからな、聞かなくても知っているさ。
あれだろ、お嬢ちゃんが聞きたいのは
俺が何者なのか、何故保持者がいるはずの聖剣を持っているのか、森にできたクレーターを
作ったのが俺なのか、俺だとしたら何が目的が聞きたい…ってところか」
「ええ。間違ってはいませんよ」
だがこの男がアルデアンを保持しているということは
最悪ハヤテは死亡している。
「安心しろ。…ユキは死んでねぇから」
「ユキ…ハヤテの真名でしょうか。
まあ今はそんなこと言っている余裕…私にはないですけれど」
「ははは、そうだよなあ。
お前さん番号は?」
「もう剣聖制度はなくなっているけれど…元No.13…十三番目の最後の剣聖」
「十三番だぁ!?馬鹿言うんじゃねぇよっ」
「うっ…」
攻撃を完璧にかわし損ねて少し攻撃を喰らってしまった。
「それに剣聖制度が終わった…?
俺たちは一生永遠に国のために汚れ仕事する奴隷のはずだろ。
誰がそんなことを…」
心底驚かれた顔に、余裕がなくなったので
馬鹿にするように鼻で笑ってやる。
「知らなかったようですねぇ…。
騎士団長がそういう提案をしてくれたのです。元剣聖の我々はそれに
賛成しただけのこと。
時代が変わったんです、何番だとか聞いてこないで下さい」
「てめっ…!!」
それからしばらく競り合いは続き、体力の限界に追い込まれていた。
援軍頼みなのに援軍は来る気配がまったくない。
死を、覚悟するべきだろうか。
「いや…まだ、まだ…!」
来年の春には正式に婚約が結婚という結ばれる形となり、
二人で幸せになるって思っているのに、こんな男に負けるなどあってはならない。
怪我をしてでも無事に、無事に帰らなければ未来はない。
「ローアン!!」
「ロゼっ!!」
後ろからした声に、やっとかと振り返る。
「ハヤテ、ユーシア……え?」
愛するユーシアスの名を呼ぶ前に、右薬指から指輪が、
ブリューナクがボロリと崩れ落ちたのだった。
0
お気に入りに追加
1,578
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します

幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】
小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」
ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。
きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。
いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。


【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる