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第七十八話 それはひどく美しく咲いて(2)
しおりを挟むゼノの声にハッとする。
確かにそれは見たことがある剣だった。
ナイフのような短剣が二腰、あしらわれた模様までもそっくりなのだ。
よく知っている、ハヤテが使う聖剣「アルデアン」。
それが何故ここにあるのか…。
「聖剣アルデアンですって…?
アルデアンはハヤテの聖剣のはずですよね…何故ここに…」
ハヤテとは朝挨拶をしたが、非番だと言っていたため今日ハヤテが
任務に出ることはないしましてや死ぬこともないはずだ。
聖剣は主が亡くなると一度封印と聞く。
だからあの男が持っているのがアルデアンだというのはありえないはずなのに
どうしてと顔をしかめる。
「よくわかったな。確かにこれは聖剣アルデアンだ。」
「…!!それの保持者は別にいます!
それに聞きたいことは山ほどありますので…けがをしたくなかったら
大人しく捕まってくれませんかね。」
気を取り直して男を睨む。
どうやらこの男はこちらが動揺し、焦れば焦る程、
疑問を持ち不思議な顔をする程、「おもしろい」と言うように言いたげな
表情をする。
それが気に入らないし、聖剣のことももちろん気になり巨大なクレーターに
関わる特異点の存在と見ていいだろう。
この国の悪人に人権はない。出てきたならばすぐに叩いて潰して二度と
害を及ぼさなさないように恐怖を与えよ、それが剣聖時代の教訓のようなものだ。
もちろん今は剣聖ではないがそれぐらいの意識を持っていないとこの男には勝てない、
そんな気がするのだ。
それだけ、この男は強い確証のようなものが感じられる。
「大人しく捕まれと言われてはいわかりましたと頷く輩がいるのか?
逃げているひったくりに待てと言っても聞かぬのと同じだと思うがな」
いちいち揚げ足を取って来るしますます気に入らない。
それに挑発するようにこちらも微笑み、第一回の攻撃を放つ。
ブリューナクを男に向けると、蔓でのすばやい攻撃を放った。
さすがに速い攻撃だったため避けられなかったのか、
男の頬にかすり傷が生まれ、仕留められはしなかった。
「そんなことありませんよ。
これで攻撃した瞬間戦うのを止めてくれるお利口さんも
いるんですからね!!」
足元を狙う様に攻撃を放つが全て避けられ切り裂かれる。
「お利口にしていたのならばそなたに会うこともなかっただろうが。
聞きたいことがあるのならば勝てばよい」
「余裕ですねぇ、安い挑発は受けませんよっ!」
勝てばよいなんて簡単に言うが、先程から攻撃を放っているのは
こちら側であの男は攻撃をしてこずただ避けるだけ。
この速さについてこれることにもまず驚いたが、
攻撃せずにただ避けているだけ…というのは剣で蔓を薙ぎ払うより
難しい。
剣すら抜かれていないところを見ると舐められているようだ。
いや、これは意図的な挑発のようだが。
「ロゼ様!」
ゼノが剣を構えて男に攻撃を放とうとするがそれを叫んで制す。
「だめですゼノ!!
あなたは元剣聖の誰かを一人か大佐クラスの人間三人呼んできてください!!」
「…援軍を呼んで来いということですか!」
一旦攻撃をやめ、男と距離を取った。
「もう終わりか?」
「ちょっと黙ってなさい…。
ゼノ、援軍を要請します、お願いね」
「…はっ!」
ゼノが王宮の方に走り出したのを確認して頷き、
今度は男から攻撃を仕掛けてきた。
「うぐっ…!!」
「そんなもんかよおもしろくねえなぁ」
援軍が間に合えば助かるが…これは無理かもしれないと
絶望の冷や汗が流れた。
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