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第七十五話 縛る糸(2)
しおりを挟む「…分かりました、分かりましたよ。
大人しく帰りますから下ろしてユーシアス。」
「…仕事はもう片付けたのか?」
「ええ。帰ろうとしていたところでハヤテだけと手合わせする予定だったの
ですけれど…シュリとツキヤさんも混ざることになって…?
あ、無理矢理やらされたわけじゃありませんからペナルティはナシですよ!?
騎士団員である以上手合わせは訓練の一環として認められていますから!」
ここまで言えばユーシアスも引いてくれるだろうとドヤ顔をしたが、
ユーシアスの黒い笑みが消えないことに、「あれれ?」と冷や汗を浮かべながら
首を傾げる。
「で?だからと言って婚前前の女性が必要以上に戦闘をすることは
関心しないな。お互いの力を高め合うとはいえ、剣聖なのだから
ロゼと同等、それ以上の人と戦っているんだぞ。
…ロゼなら大丈夫だと思うが、あまり心配をかけてくれるな」
きゅっと、ユーシアスに抱かれている力が強くなったのに、
本気で心配されていることに気が付く。
ルールでは決まっていないとはいえ、結婚を控えた身ならば将来
夫となる人に心配をかけるのはよくなかったと反省する。
「…ごめんなさい、ユーシアス。
もうしないからそんな顔をしないで」
「…わかった」
ユーシアスの苦笑いに微笑み返す。
「…あ~、確かに婚前前の女にすることじゃなかったことは謝るが、
過保護すぎやしねえか団長。
縛り付けるのは良くないと思うぜ」
ハヤテは謝るとは言っている物の、目が少し尖ってユーシアスを睨んでいた。
「過保護で何が悪いって言うんですか。
ロゼはそそっかしいので心配するのは当然でしょう。
それにこの子は人一倍思い込みが激しいタイプなんだ。きちんと口にしないと
余計な勘違いや心配をされてしまうことも多々ありますので。」
それに否定はできないため間に割り込めない。
「確かにこいつはそそっかしいし思い込みも激しいが、
貴族の縛りか愛故になのか知らんが、そんなんで夫婦としてやっていけるのかよ」
「ハヤテ…?」
ハヤテがそんなことを言いだしたことに一番驚く。
他人のことなんてどうでもいいみたいな言動が少しあり、
いつも適当なことを言って誤魔化し上手なハヤテが、夫婦間の問題に
口を出してくるとは驚きだったのだ。
「ええもちろん。
あなたに口出しされる筋合いはありませんが、
ロゼの鈍感さは異常なんです。特にあなたみたいな分かりにくい人にはね」
ますます話が分からなくなってきてしまう。
ん?ん?と睨みあう二人を交互にキョトキョロと見るしか出来ないが、
これではこの話し合い?に区切りがつかないだろう。
「ええい、やめいやめい!
ハヤテ、心配してくれてありがとう。
ですけれどご心配には及びませんよ。
ユーシアスに縛られたとしてもその縛りでも愛おしく思えます。
ではでは、また明日」
ユーシアスに「行きましょう?」というほほ笑みを向けると
ほほ笑み返され抱かれた姿勢のまま
訓練場を去った。
「ユーシアスはお仕事に戻らないとですよね」
「そうだな。」
「じゃあ下ろして…あれ~ユーシアスさん?」
自力で降りようとしたのに再び抱かれる手に力が入ったので
冷や汗を浮かべながらユーシアスの目を見た。
すると無言で何も言わず歩き出してしまうため、ますます恐怖が増す。
方向的には…ユーシアスの執務室だ。
やはり予想通り執務室まで運ばれると、執務室の中の小部屋に運ばれ、
そこには仮眠用だと思われるベッドがあったので、
顔を青くする。
「…いやいやいや!
こ、ここ執務室ですよね!?」
「俺の仮眠室だ。
心配ない、この前のように邪魔は入らないようにする」
ユーシアスがパチンと指を鳴らすと、
ドアノブと鍵全体が氷で固められる。
「や、声我慢できないかもだし…」
「防音魔法をかけておこう。」
「や、ちょ、ちょっと…」
ベッドに下ろされると、胸に顔を埋められる。
「ひゃ!?ま、まだお昼なんですけど…!!
い、家に帰るまで我慢してください…」
「待てない」
最近お互いの仕事が落ち着かなくてしてなかったとはいえ…
そんな飢えた獣のような表情をされても…と目を思わず背ける。
隊服のリボンがほどかれたと思えば、それで両手首を縛られる。
「ひっ…ちょ、ちょっと…!」
抵抗が完全に出来ない状態の体に、
いたずらをするようにユーシアスが指を這わせてくる。
「…縛りでも愛おしく思ってくれるのだろう?
違ったか?」
「拘束プレイの話なんてしてません!…や、ちょ、ちょっと…
だめですってば…!」
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