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第七十三話 お手合わせ?(2)
しおりを挟む「もちろん本気だよ。
どっちが強いか試してみたくないか?」
「馬鹿らしい。
あのね、私が戦ったら訓練場が穴だらけになるじゃないですか。
それにどちらが強いとか興味ありませんから。」
「あ?範囲決めて戦えばそんなに被害でかくならねぇよ。」
確かに範囲を決めればいいかもしれないが、折角仕事が全て終わったのに
戦うのが面倒くさいというのが大きい。
「お前剣聖だけど訓練の指導者当たってねぇだろ。
付き合えよ」
「うっ……」
剣聖は騎士団の剣の指導に当たるが、
ブリューナクは剣技が必要になるものでは無いため指導者には当たっていないのだ。
それを言われると痛いなと顔を顰めた。
「う~~……一戦、一戦だけですからね!!」
「おう、それでいいぜ」
ハヤテがニカッと笑う。
「ロゼ様!危険じゃないですかっ…
剣聖との戦いは賊と違うんですよっ」
「分かってるわよ心配性ね~」
ゼノはこんなだっただろうか。
あの件で随分心を開いてくれた…ような気がする。
それに微笑むが、撃沈の一言が交わる。
「それに、怪我なんてしたら団長に怒られますよ?」
「うわぁ~……、確かにそれもそうですね。
でもこれでもちゃんとした剣聖でしたからね。大丈夫ですよ」
ユーシアスに怒られたらと思うと弱いが、
指導組に当たっていなかったから付き合えという言い分も聞き入れない訳には行かない…。
「……怪我をしたら俺も怒りますからね?」
「はーい」
ゼノに苦笑いして、訓練場に足を運ぶ。
「あれ?ハヤテ様とローアン様だ」
「アホ、レイブン卿とネージュ卿とお呼びしろ!」
「す、すみません。
でもネージュ卿が訓練場に顔見せるなんて珍しくないですか?」
「確かにな…。珍しいというより見たことがない。
剣聖と居合わせた任務もなかなかないし、聞けばネージュ卿は植物使いの聖剣を使うんだとか。」
「え?それが聖剣なんですか」
「気になるな。見ていたら使うかもしれない」
そう言ってギャラリーが集まり始める。
それにはぁとため息をついて、ハヤテを睨む。
「見世物じゃないんですけどー。
全く、暇つぶし相手にされるこっちの身にもなって下さいよ。」
「そう入ってもお前の実力を知るものは少ないぜ?
見せつけてやれよ」
「そういうの苦手なんですけどぉ」
お互い定位置につこうとした時だった。
「あれ?何してんのー?」
「お二人共お久しぶりです」
「シュリにツキヤさんじゃないですか。
今ハヤテの暇つぶし相手になってる所ですよ」
答えるとシュリがぱあっと顔を明るくする。
「何なにっ、ケンカ!?ケンカだよね!混ぜて混ぜて~!」
「手合わせって言ってくれよな。
つーかツキヤ、止めろよこのクソガキ」
ハヤテが「ん」と顎でシュリを指すが、
意地悪をするようなツキヤの微笑みに嫌な予感がした。
「面白そうじゃないですか。僕も混ぜてください」
なんて剣を抜き始めるぐらいだから、予想は当たっていたらしい。
「は~?もうマジかよ……。
じゃあルールは簡単。自分以外全員敵。以上!」
つまり最終的に勝ち残っていた人間が勝利という訳だ。
簡単で良かったと指輪を構える。
『お手合わせ願います』
騎士団での決まり、手合わせの際にはよろしくお願い致しますの意を込めてそう言うのだ。
その掛け声と同時に、立ち位置から走り出す。
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