ヒロインに剣聖押し付けられた悪役令嬢は聖剣を取り、そしてカフェを開店する。

凪鈴蘭

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第七十二話 お手合わせ?(1)

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「…平和ですねぇ」

太陽の光が部屋に差し込み、ちょうどいい暖かさとなっていた。
そして何と今日は、仕事が少ない。

「仕事が少ないって幸せですよね。
こんなことで幸せ感じるなんて仕事人間みたいで嫌ですけど」

ゼノが苦笑いして手を動かした。

「…よ~し仕事終わり!お疲れ様です」
「俺も終わりました」
「…どうしましょう。まだお昼の二時くらいですねぇ」
「俺は訓練をしてから帰りますが…上官殿はどうされます?」
「その、上官殿って呼び方止めませんか?
ヴィルテローゼでいいですよ。…長いか。じゃあロゼとか」

上官殿という呼び方は堅苦しいし、かといってヴィルテローゼも長い。
だから自分の愛称である「ロゼ」を提案したが、それはそれで馴れ馴れしかっただろうか…
と言ってから頭を悩ませる。

「そ、それは団長が呼ぶ愛称なのでは…」
「そんなことありませんよ?
家族や友人にもロゼって呼ばれていますし…」

部下と上司の中では愛称で呼び合う騎士団員も
かなりいる。
貴族や上位階級の者が多く存在するため、皆名前が長かったりするのだ。

「…じゃあ、ロゼ…様とお呼びいたします」
「ええ。ありがとうゼノ。
今から訓練場ですか?」
「はい。それが何か?」
「散歩がてらご一緒してもいいでしょうか。」
「!もちろんです…」

それにふふっと笑った。
あれ以来ゼノも柔らかくなったものだ。
柔らかくなった…というよりかは尊敬に似た眼差しを向けてくれるようになった。

前のようにからかってきたりしなくなったし、
微笑んでくれる回数が多くなった。
うんうん、いいことだとと頷く。

「ロゼ様?」
「ああいえ、何でもないですよ」

そう言ってゼノについて行く。
「…なんか愛称をお呼びするのは、恥ずかしいです」
「そう?…じゃあネージュとかネージュ卿にします?」
「い、いえ…呼ばせてください」
「あら嬉しい」

そんなことを話しながら訓練場に向かう。
「おお~…」

訓練場は多くの騎士団員で賑わっていた。

「…んあ?
何でお前こんなところにいんだよローア…じゃなかった。
ネージュ卿って言った方がいいかぁ」

しばらく会ってなかった声に振り返る。
「…ハヤテ!…っと、名前が違うのはお互い様でしたね…」
「別にいいだろ。ハヤテでいい。」
「そうですか。ならば私のこともローアンで構いませんよ」
「そりゃどーも。面倒くさくなくて助かる」
「同じく!」

久しぶりの会話だったため、何かそわそわしてしまう。
「…そっちは…お前の側近?」

ハヤテがゼノに目を向けると、ゼノが頭を下げる。
「ゼノ・リフレインと申します」
「どーも。」
「ハヤテは訓練ですか?」
「指導の方でな。訓練で俺の相手できる団員なんて団長か副団長くらいだよ。」
「それは確かに…」

剣聖の相手をできるのは剣聖だけ。
ユーシアスや騎士団長のレヴィとは互角には戦えるかもしれないが
ジリ貧と言った結果になるだろう。

「…そうだ、お前相手してくれね?」
「いや、私剣聖だったとはいえ剣は…」
「あほか。聖剣でやり合うに決まってんだろ」

ハヤテの口元が吊り上がる。

「…本気で、ですか?」


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