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第七十話 見せられない顔(1)
しおりを挟むゼノ・フレインは貴族であっても、妾の間に生まれた子供だった。
故になのか分からないが、父親である侯爵は騎士団試験に合格した時も何も言ってはくれなかった。
そして侯爵に見向きもされない息子に用はないのか
母親からも愛されなかった、哀れな少年だった。
彼が女遊びが激しいのは、乾ききった愛を潤すため。
騎士団であり顔が良ければ女には間違いなく好印象が与えられ、
ゼノに依存してくる女も多数いた。
誰にも求められなかった故に、誰か求められることに快感を感じ、
いつしかそれは薬物のように誰かを自分に依存させることを止められなくなっていた。
女ならばゼノにアタックしてこようとした。
たとえ婚約者がいようが既婚者であろうが、だ。
だが上官であるヴィルテローゼ・ネージュは今までに会ったことの無いタイプの女性だった。
からかいにも応じず、まともな態度を取るのは元剣聖のメンバーか、婚約者であり恋人の
騎士団長、ユーシアス・ヒルデぐらい。
しかもユーシアスを見つめるめは、ひと味違う。
快楽に溺れてる目でなく、「ユーシアス・ヒルデ」だけを求める、そんな瞳なのだ。
ゼノが求められているのは騎士団員であり、顔もルックスも悪くないから。
役職も家柄も関係なしに、あんな目で見つめられて、求めてみたいと彼は初めて思った、
だから聞いたのだ。
「受け入れてくれれば誰でも良いのか」と。
だがヴィルテローゼは微笑んで、「見たらわかる」と述べた。
賊が出たという街に向かい、ヴィルテローゼが見たらわかると述べた理由をゼノはすぐ理解した。
「ぎゃああああっ!!」
「助けてくれぇっ!!!!」
逃げ回る賊の断末魔を聞き、ゼノは立ち尽くしていた。
地面から生えた太く巨大な蔓が、賊を潰したり捻ったり、粉々にしていく。
「これが……剣聖……」
動きには全くと言って無駄がなく、そして笑いも泣きもせずに淡々と人を殺していく
彼女を、受け止められる人間は、早々いないと思ってしまった。
「ね、醜いものでしょ?」
蔓を完璧に操る中、ヴィルテローゼは儚げに微笑んだ。
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