ヒロインに剣聖押し付けられた悪役令嬢は聖剣を取り、そしてカフェを開店する。

凪鈴蘭

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第六十四話 ゼノ・フレインという男(1)

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あまりにも驚いたのでハッとする。

「ブリューナク!」

ナイフを持った女性の手に蔓を巻き付け、ナイフを奪った。

「…は?」

女性は急に蔓が手に巻き付き、そしてナイフまで奪われてしまったことに唖然とする。

「何をしているの、ここは王城内ですよ。」

女性の服装は貴族の令嬢が着るようなドレスであるため、上官及び騎士団の人間では
ないようだ。

「は、離しなさい!!お父様に言いつけて首にさせるわよ!?」

父に言えばどうこうなる…ということはおそらくこの女性の父親は
騎士団の人間らしい。
だがこの女性の父親が騎士団員であれ、元剣聖であり公爵の娘を首にすることなど
出来はしない。
むしろ言いつければ謝罪が帰って来るだろう。

「生憎私は大佐の位を持つ者であり、
ネージュ公爵家の人間です。あなたがいくら騒いだところでどうにもなりませんよ。
それと、貴族の権限はそのようなことに使ってはなりません。
あなたがこの男に何をされたかは存じ上げず申し訳ないですが
一旦落ち着いて、冷静になって下さいませ」

鋭い瞳で女性を見ると、女性は肩をびくりと震わせて背を向けは走っていった。

どうやら大佐の位と貴族階級最上位である公爵の名が効いたらしい。

ふうとため息をつくと、落ちたナイフを拾ってくるくると回した。
「…で、あなたあんなことをされるくらいに何をしたんです?」
「いやぁ、女の子って怖いですね。
二股してたのがバレちゃって…」
「それはあなたが悪いじゃないですか…騎士団としてそういう行動は控えなさい。」
「ごもっとも…。ともあれ、お初目にかかります、麗しの上官殿」

麗しの上官…といったところで分かった。
この男が側近となる男なのだと。

「階級は中佐、ゼノ・フレインと申します」

少しくすんだ赤の髪をしていて、二股できそうなぐらいには容姿が整っている。
…ホストみたいだなと思うも口には出さない。
それにフレインと言えばかなりの財を誇る侯爵家だ。

ゼノは左手を取ると甲に口づけてくる。

「…それは令嬢にする作法だと思いますよ」

取られた手を軽く振り払った。

「初めまして、あなたの上官となりますヴィルテローゼ・ネージュと申します。」
「さっきの話本当だったんですねぇ。
ネージュ家のご令嬢、そして元剣聖の十三番様。
あ、これは差別とかじゃないですが、元剣聖の方が上司になるとお聞きしてたので
ドキドキしてたけど、案外お可愛らしい方で安心しました。」
「お世辞は結構。」

身なりはきちんとしているものの、顔、喋り方がもう全てチャラい。
こういうタイプの人間は好きになれないし、
上手くやっていけるかが心底不安でならない。

側近の仕事は大まかに説明すると上官の仕事や任務の同行は義務であり、補佐も行う。
仕事中は常に一緒。この男が側近になるならばユーシアスが歯形をつけてまでマーキングのような
行為をしてくるのも仕方ないような気がしてくるぐらいだ。

「お世辞じゃないですよ。ヴィルテローゼ様は綺麗ですし、
彼氏の一人や二人いるでしょう」
「あなたと一緒にしないでくださいますか。」
「あと、武器って指輪なんですね。初めてつけた指輪が聖剣って
ちょっと萎えませんでした?」
「いい加減にしてください。」

イライラ度がマックスになりかけていたところだった。
「あはは、怒った顔も最高にかわい…おわ!?」

急にゼノの体が持ち上がったため、こちらも驚く。
するとゼノを持ち上げていたのはずいぶんと話すのが久しい人物だった。

「…ラビさん!?」
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