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第六十二話 1つの騎士団(1)
しおりを挟む「……てことで、剣聖は騎士団、ユーシアス・ヒルデの
提案を受け入れます。
でも、騎士団員はどーなのよ。ちゃんと説得してあるの?」
それは少し疑問に思っていた。
副騎士団長のレヴィでさえ、剣聖を毛嫌いしていた連中だ。
説得が出来ているのかが疑問である。
「勿論でございます。」
意外にも声を上げたのは副騎士団長のレヴィだった。
「騎士団長であるユーシアス様には言うまでもなく従いますが、
それ以前にあなた方を化け物のように扱うことがあった
騎士団ですが、あなた方はなりたくてなった訳ではないでしょう」
それを聞いてハヤテがハッと笑った。
「つまりは、ババ引いちまった俺らに同情して
賛成してくれたってことかぁ?」
「いいえ。
望まぬ職に付かざるを得なかったあなた方を、化け物扱いしていたこちらに
非がある故の謝罪の気持ちでございます。
決してこれは同情や哀れみではなく、これから帝国の剣として
共に歩んでいくと決めた誠意とお受け取りください。」
副騎士団長、レヴィ・レーガントのことをよく知る訳では無い。
騎士団は男性も女性も属する組織、
男女差別を減らすため副騎士団長には最も優秀な女性が
選ばれる。
レヴィ・レーガントの第一印象は悪かったが、
ユーシアスと同様にまっすぐな目でこちらを見つめる姿には、
誇りと気品が感じられた。
いやいやではなく、本気で誠意を示してくれていることは、
誰でもわかる。
「そしてこれは騎士団全員の総意でございます。
今までの非礼をお許しください。」
「頭上げてちょうだい、これから同僚になるんだから。」
そうして剣聖制度は廃止され、
騎士団は訓練の強化、剣聖が剣の指導に当たることになる。
そして元剣聖には大佐の称号が与えられた。
「うう、ちょっと窮屈…」
騎士団の隊服を着て、少し顔をしかめた。
「サイズ合ってると思ったんだけど…、合わなかった?」
ラヴィーネがきょとんと首を傾げる。
「胸がちよっと……」
「うわ、嫌味だ。ほら、もう1つ大きいやつ。」
「ありがと、ラヴィーネ……いや、
アマレッティ。」
剣聖制度が廃止され、歴史は大きく変わった。
剣聖は聖剣を所持しないと今まで眠らなかった時間、
眠ってしまうため引き続き聖剣を扱うことにはなるが、
剣聖を主張する授けられた名ではなく、元の自分の
名前を名乗ることになった。
「……アマレッティって久しぶりに呼ばれたわ」
ラヴィーネが、いや、友人であるアマレッティ・リカレンスが
少し顔を赤く染めた。
「ねぇ、私のことも名前で呼んで!」
「そういうのは団長にやってもらいなさいよ。
……ヴィルテローゼ。」
「ふふ、何だか昔に戻ったみたいですねぇ」
着替えを済ませて更衣室から出た。
「ロゼ」
「……ユーシアス!
あれ、まだ仕事があるって言ってませんでした?」
元剣聖のメンバーは騎士団の設備や本部の見学、
仕えてくれる側近一人とこれから顔を合わせることになっている。
ユーシアスと先程会った時は残念ながら仕事が残っているため
見学は一緒出来ないと聞いていた。
「ははーん、ヴィルテローゼが遅れるって言っとくね」
「あ、ちょ、アマレッティ!」
アマレッティはにやにやと微笑むと、たたーっと走って言ってしまう。
「……こっちに、来てくれるか」
「あ、はい」
ユーシアスに手を引かれ、
着いた場所は美しい庭園だった。
次期皇后であったため、王城に訪れることは何回もあったが、
こんな美しい庭園があったのは知らなかった。
「あの、ここは?」
「かなり知る人間は少ないが、裏にある庭園だ。」
「そうなんですね。」
「……ロゼ」
「はい?……えっ」
ユーシアスが急に跪いたことにぎょっとする。
そして左手の甲にキスをされ、薬指に指輪がはめられる。
「……あの、これ…」
「剣の世界にいる以上、幸せにするなんて簡単には
言えないけれど、ずっとロゼの隣で、ロゼを愛することを誓います。だから……私と結婚してくれますか?」
確かに、お互い剣の世界にいる以上お互いに何があるか分からないし、一緒にいられる時間も限られているだろう。
だからこそ、夫婦という形でありたいと思っていた。
「……はい、よろこんで。
そこは幸せにするって言って欲しかったですけれど、
大丈夫ですよ。私がユーシアスを幸せにしますから。」
涙で滲む目を細め、微笑んだ。
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