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第五十八話 休日の木曜日(2)
しおりを挟む「…皇太子殿下、少しお待ちいただけますでしょうか」
…?皇太子…と何回か脳内で言葉をループさせた直後、
サアっと顔を青くした。
「…ユーシアス」
「何だ」
「何でグラディウス殿下が私の店にいらっしゃるんです」
「昨日ロゼが任務にいっている間に殿下が来たから?」
「…はああ!?
ちょっ、ここの扉結構薄いんですよ…!」
「丸聞こえだったかもな」
「…穴があったら入りたいとはまさにこういうことを言うんですね」
さすがに皇太子が来ているのに休んでいるわけにはいかないな…
と立ち上がる。
お互い身支度をすませ、部屋を出る。
扉の前にグラディウスはいない。
おそらく一階のカフェスペースで待っているのだろう。
「ロゼ、おんぶするから掴まれ」
「え、いいですよそんなの」
「平気だというのなら今夜も無理をさせるかもな」
「…お願いします」
体力的に問題はないものの、腰が痛めば仕事に支障が出るだろう。
それだけは避けたい事態だった。
なので何も言わずにユーシアスの背中に掴まった。
一階におりて、グラディウスに頭を下げた。
「「ご機嫌麗しゅうござます、皇太子殿下」」
「すまないね。急に押しかけて。
それと姉上、この前は申し訳なかった。
あなたをを危険にさらすところだったこと、謝るのが遅くなってしまいすまない」
グラディウスが頭を下げたのに、ああと思い出す。
「ブリューナクの件でしたらお気になさらず。
あれは私の不注意でしたので、こちらこそ申し訳ありません。」
「そう言ってもらえると助かります。
…というか、ようやくユーシアスは片思いでなくなったようだ」
…やっぱり聞こえてたのか、と顔を赤く染めた。
「おかげさまで」
「私は何もしていないのに何がおかげさまなのか説明してもらいたいね。
砂糖を吐くかと思ったよ」
「…殿下、その辺にしておかないと
ロゼが赤面死しそうなので勘弁してやってください」
「あなたが朝からがっつくからでしょうが!!」
と、ユーシアスを肘で殴った。
「ははは、砂糖を吐きそうだからやめてくれるかな。
それより、ユーシアスに大事な話があってね」
二回目の「砂糖吐きそう」発言にうっと顔を青くした。
「では私は席を外した方がよろしいでしょうか…」
「いいや、姉上も…、おっと
もうユーシアスの妻になる人に姉上なんて呼べないね」
「で、殿下っ!」
砂糖吐きそうだからやめろなんて言いつつも若干からかわれているような
気がするのは気のせいだろうか…と苦笑いする。
「ではお茶をお入れしますね。」
「ロゼは座っていてくれ、俺がするよ」
「じゃあお願いします」
正直腰がかなり痛かったので助かる。
「もう立派な夫婦のようだね。
ユーシアスは良い旦那様になるよ」
「まだ結婚という話までは…」
両想いですることをし、お互い貴族の一員であり家の関係も悪くないので
結婚をするというのならばすぐに通る話かもしれないが
まずそこまで話が進んでいないのだ。
「…えっ、しないのか」
ユーシアスの震える声に振り返る。
「そこまで話が進んでいないじゃないですか。」
「…結婚しよう」
「ムード!!ムード考えなさいよ!!」
いきなりのプロポーズ?にムードがなさすぎて少し呆れる。
「はは、だがユーシアスはヒルデ公爵を継ぐことになっているからね、
安心して嫁ぐといいですよ」
「…そうなんですか?ユーシアスは次男…でしたよね」
「騎士団長の称号を持っておいて長男が当主になるというのもおかしな話でしょ?
まあそれ以前にユーシアスはヒルデ家と貴族会で一目置かれてたしね」
まあそれもそうかと頷く。
というか次期公爵になるユーシアスに嫁げば公爵夫人となってしまうのか…
と少し妄想を膨らませるが、そういえば本題がまだだったことに気が付く。
「殿下、そういえば本題の話がまだなのでは?」
ユーシアスがカウンターから紅茶を運んでくる。
グラディウスは「ありがとう」と言って紅茶を受け取り、書類のようなものを
机に置いた。
「遅くなってすまなかったねユーシアス。
君の要望がやっと通ったんだ」
何が?と思って書類を覗く。
「剣聖制度の…廃止?」
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