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第四十八話 他人事(2)
しおりを挟む「…い、おいっ!
ぼさっとすんなローアン!」
ハヤテの声にハッとして、
急いで残りの人間を蔓で始末した。
ハヤテがこちらに飛び、着地した。
「って……、援軍みたいなのも気やがった。
まぁ帝国に害なすものは罰せよ……だかんな。
手加減すんじゃねえぞ!」
「はいっ」
「お前はここに散らばってるやつ片せ。
俺は援軍の方やるから。」
「…かなりの無茶だと分かっていますか?」
「それは承知だがな、今は皇女を守るのが先だ。
さすがに俺一人で援軍を片付けられるなんて思ってねえ。
シアンに置き手紙残したから運がよければ来てくれんだろ。
それまで俺らで皇女を守りつつ持ちこたえろ。
……死ぬんじゃねえぞ」
「…承知いたしました。」
そのやり取りを済ませ、その場に残っている男共に指輪を向けた。
それと同時に、カタカタと手が震える。
後ろにはユーシアスがいる。それなのに自分は平然とここで人を殺して、明日の朝にはユーシアスに店長としての笑みをむける。
これが国のためだと分かっても、誰かを守る行為だとしても、
人を殺して、知らん顔で朝には別の人間として
ユーシアスと会うのだ。それが、ひどく辛い。
ブリューナクの蔓が人を斬って殺していくが、
反乱軍はうじゃうじゃと出てきてこれでは拉致があかない。
一つ大技を繰り出せば、何とか出来るかもしれないが
それには3秒ほどの時間がかかる。
3秒もアニメの変身シーンのように敵は大人しく待っていてくれない。
「…騎士団長殿、見た感じまともに動けるのは
あなたぐらいの様です。
3秒ほど、私に時間を下さいませんか?」
満身創痍の1歩手前のユーシアスにそんな頼みごをするのは申し訳ないが、この状況を打破するためには3秒の時間が必要だ。
「承知いたしました。」
ユーシアスが前に出る。
そして一人で敵の相手をしてもらっている間に地面に手を付き、
敵が群がる中心に植物を芽生えさせる。
「結構です、下がって!!」
その合図とともにユーシアスが後ろに下がる。
メキメキと音を立てて芽生えた植物というか、花は
5mにも成長し、反乱軍がそれに呆気に取られる。
蕾が生まれたと思えば、その蕾はぐぱぁというグロテスクな音をたてて花開く。
「な、なんだアレ……!?」
「気味が悪い…」
気味が悪い所ではない。
あの花は、人喰い花なのだから。
その花に向けて手を向け、人差し指を下に下ろすような動作を取れば花は人を15人ほど一気に喰っては飲む。
そして咲いた人喰い花は人を食すだけでなく、
茎の部分からは物凄い速さで毒針が発射される。
喰われても喰われなくてもどちらにしても死ぬ。
その創造主である自分も、ブリューナクの保持者である
自分も末恐ろしい。
そしてその技を使う自分の醜さを誤魔化すように笑った。
「ね、ブリューナクってすごいですよね」…と。
それにユーシアスは目をを開く。
儚く、何かすれば消えてしまいそうな悲しそうな
瞳に、何も言えなくなったのだ。
「…まるで、他人事ですね」
「他人事なんです。
だって私、なんの努力もせずにここに立っていますから」
そう言った所で意識は途切れてしまった。
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