ヒロインに剣聖押し付けられた悪役令嬢は聖剣を取り、そしてカフェを開店する。

凪鈴蘭

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第四十一話 女王様とカツ丼(2)

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「カツ丼…とは」

ティターニアは顔をキラキラと輝かせ、
問いかけてきた。

「えっとですね、
簡単に説明をすると、豚の肉をあげたものを、
味がついた卵でくるみ、それを白米の上に乗せるのです。
今から作りますので、少々のお待ちを!」
「は、はい。」

よしっ、と腕まくりをして玉ねぎを取り出す。
「絶対使い方違うとおもうんですけど、
ごめんなさい。ブリューナクは野菜を育てることができるので、
ここのお野菜はブリューナクに育てて貰っているんです。」

と、取り出してきた玉ねぎを切りながら言った。
「どう使うかなど私がどうこう言うことではありませんよ。
全ては姫の思うがまま、お好きなように使って下さい」

と微笑まれる。
これは怒られる危険性があったので言うかどうか迷ったのだが、
何故か罪悪感を感じてしまい、言ってしまった。

「…にしてもそのお野菜は、
鼻と耳にツーンときますね」
「玉ねぎっていうんです。
あー、目が痛い。」

と目を擦る。
「あっ、姫…!」
「ぎゃぁあ、目擦っちゃった!!」
「だだだ、大丈夫ですか」
「はい、なんとか…。」

痛みが落ち着いてから、豚ロースをまな板に乗せ、
両面に塩、胡椒をふり、麺棒でバシバシ叩く。

そして薄力粉、溶き卵、パン粉の順番に肉をひたし、
油がぷくぷくと言う音を立てたフライパンに肉を突っ込む。

そしてきつね色になったら油切りをする。

「これを白飯の上に?」
「いえいえ、そういうカツ丼もありますけど、
今日作るのは違いますよ。」

トンカツを2センチ幅に切り、鍋に水と玉ねぎ、調味料を入れて熱する。
ちなみに調味料だが作るのに滅茶苦茶時間がかかった。
醤油も出汁も手作りであるからである。

醤油なんてそれこそ米麹から作り、出汁はどの魚の出しが
和風な味になるのか何回も調査を繰り返し、
鰹だしと味が似た魚を1週間かけて探した。

おかげて自分の昼食は魚ばかり、そして厨房が出汁と魚の臭いでいっぱいになり、今年は魚をもう食べたくないと心の底から思った。

「よし、玉ねぎがしんなりしてきましたね」

玉ねぎがしんなりして来たらトンカツと軽く時ほどし、
卵を投入、そして火を止め蒸らす。

「……」

久しぶりの、肉だ。
とよだれが垂れてきそうだった。

「……料理をしている姫はとても楽しそうですね」
「ええ、好きですから。
あっ、でもどちらかと言うと自分が作ったものを食べてもらえて、美味しいって言ってくれるのが好きなんです。」
「……」

「あっ、だからと言って不味かったら不味いとハッキリいって下さいね!!決して美味しいを強制はしませんから。」
「はい。」

ティターニアの微笑みに微笑み返し、
そろそろいいかなーっと蓋を開けた。

ふわりとお出汁の香りが広がり、懐かしい気分になる。
まさかこの世界でこの香りを感じられるとは…、
魚地獄の日々は無駄でなかった。

炊きたてふわふわのご飯に具をのせ、
完成だ。

「どうぞ召し上がれ!」

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