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第三十九話 緑の愛し子(3)
しおりを挟む「すみませんハヤテ。
緑の愛し子って何ですかね。」
「あん?
てめえの通り名だよ。」
「私の通り名…ですか。」
「そう。
ブリューナクの保持者に与えられる別名みたいなもんでもあるな。」
「…へえ、そうなんですね。」
と指輪を見つめる。
「そうなんですね…じゃねえだろうがよ。
呼ばれてんだかっらさっさと行けよ」
「はいはい…。」
さらに進んで、ついたのは王都の広場だった。
「もうローアン!
あのうにょうにょどうにかして!!」
広場についた瞬間、シアンに泣きつかれる。
「どうにかしろって言われましてもね…。」
広場を見渡すと、神々や妖精にささげる貢物が置かれるところから、
その巨大な蔓は芽生えていた。
「うにょうにょとはなんじゃ。
人間の小僧めが。着やすく我らの姫にじゃれるでないわ。」
…姫だと?と顔を歪ませた。
あいにく姫なんて呼ばれる筋合いはなく、ただの元悪役令嬢だ。
…悪行は一切していないが。
「え、姫って言われてますけどお知り合いですか?」
とツキヤに尋ねられる。
「姫って…悪くない響きですね。」
「話聞いてましたか」
ボケるのもやりすぎるとシアンのブラックスマイルに殺されそうだから、
早いところ話をつけて帰ってもらわないと。
声は…女性だった気がするが。
「あの、すみません。
そろそろ帰ってもらわないと私騎士団と上司に怒られますんで、
帰ってくれません?」
「もう少しソフトに言いなさいよ」
と、シアンにもツッコミを入れられる。
「回りくどいの面倒くさいじゃないですか。」
そうすると、蔓からもう一つ蔓が生えそこに花が咲く。
そして、その咲いた花から人が出てくる。
黒く長い髪、若干吊り上がった強気な瞳に、自分と同じの緑色の目。
そして色とりどりの花で作られた花冠をした、美しい女性だった。
「申し訳ありません姫。
こちらも来たくて来たわけではありませんでして。」
花から姿を現した女性を蔓が運び、そして自分の前に着地をすると
膝を折った。
「ご挨拶が遅れたこと、あなた様の上司、あなた様にご迷惑をおかけしたこと、
深く謝罪いたします、申し訳ありません。」
「…謝罪を受け入れます。
が、色々質問をさせていただきます。
あなたは何者ですか?何故私を姫と呼ぶのです?」
そう呼びかけると、女性は顔を上げずにさらに深く頭を下げてしまう。
「私の名はティターニア。
妖精の女王でございます。」
「へえ、女王…」
って女王!?と顔をぎょっとさせてしまった。
「あなた様を姫とお呼びするのは、あなた様を剣聖に選んだのは私だからでございます。」
「…剣聖が選ばれる際は聖剣が人を選ぶと聞いていますが。」
「ええ、その通りでございます。
ですがブリューナクは私共が住む妖精の森が生み出した聖剣。
その保持者を決めるのは女王の私であったという話にすぎません。」
「なるほど。」
と頷くが、「え、今ので分かったんですか」とツキヤのツッコミが乱入した。
だがそれを気にせずに質問を続ける。
「それで来たくないのに来たとはどういう意味でしょうか。
私に用があったのですか?」
「いえ、そういう訳ではなく…。
この豊穣祭には神々や妖精を現す石がございます。
その中の一つとして妖精の森の石もございまして…。
それに傷がついたため、強制的に女王の私がここに召喚のようなことが
されてしまったようです。
ご容赦くださいませ姫。」
石は飾りではなく、本当に神々に関係がある石らしい。
その石に傷が付き、それでどういうわけか連れてこられた…と。
「でしたら謝罪するのはこちらの方です。
あなたが謝ることは何もない。
…で、帰れるんですか?」
「帰れませんんね」
マジか…と思わず表情が固まってしまった。
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