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第三十八話 緑の愛し子(2)
しおりを挟む大きな音がした中心に、急ぎ足で向かう。
「ちっ、人が多い。
おいローアン。建物に乗り移れ」
「はい?建物に??」
「建物にだ。
おら飛べ」
それって迷惑ではないか??
と思ったが、今は音のした方角へ向かうのが先か。
と、足にグンッと力をいれて、建物に飛び打つる。
何度してもなれない。
剣聖は聖剣を装備していればまるでゲームやアニメ、
漫画のように異常な脚力、一歩に力をこめることで何メートルも進むことが出来る。
人混みを避けるために、街の建物を伝って音のした方角に進んでいく。
「……大体ここら辺でさっきの音がしたんだが」
「もうすぐで着きそうですね。」
音のした方角にどんどん距離を縮めていく。
その時だった。
巨大な蔓が、自分とハヤテを弾き飛ばそうとしてきた。
それにハッとして、右手を蔓に向ける。
「ブリューナクっ!!」
ブリューナクが言葉に反応し、自分とハヤテを守るように蔓がバリアを作ってくれた。
そして建物から落ちそうになったハヤテを蔓でキャッチし、
引き上げる。
「……っ、無事ですかハヤテ?」
「あぁ、助かった…。
つーか今の……、ブリューナクの蔓に似てなかったか?」
「ええ。
というか…ブリューナクの技そのものって言うか」
自分達を弾き飛ばそうとした蔓からブリューナクの技と同じ気配のような物を感じで、少し対応が遅れてしまった。
「何かアレに心当たりは?」
「いいえ。
ブリューナクは遠隔操作みたいな事は出来ませんから…。」
「ふぅん。
…でも、お前に関係はしてそうだがね。」
「そうだったら後で騎士団の尋問が待ってますね。
カツ丼が出るなら尋問受けてもいいですけど」
まぁこの世界にカツ丼ないがな、と苦笑いする。
あれが漫画だけの世界と知っているし、
蛍光灯を顔に当てられて「おら吐けよ!!」…なんて騎士団の人間が口にしたらそれこそ吹いてしまう。
「カツ丼?」
「美味しいですよ。
豚の肉を上げて、卵でくるんって包んだ物を白飯の上に乗っけるんです。カロリー激ヤバですけど。
無事に帰れたらメニューに加えますよ」
と笑う。
「おいおいそう言うの死亡フラグって言うんだぜ」
「あぁ、俺無事に帰れたら結婚するんだって奴ですね。
あと、"殺ったか?"も禁句ですよ?
大体そういう時ほど倒せてないんですから。」
「あいよ。
何て行ってる間にも、……また来やがった!!」
向かってきた蔓をハヤテが剣でぶった斬る。
ハヤテが戦っている所を初めて見たのでそれに驚く。
日本刀のような形の聖剣が二腰…、これが聖剣「アルデアン」……。
「おっと、余所見とは余裕じゃねぇの?」
「あらごめんなさーい」
と、向かってきた蔓を鋭くイメージした蔓でスパンと切断する。
「お前も蔓使ってるから紛らわしいなクソ……。
ちょっと下がってろ」
「何かすみません。
にしてもこれ何なんですかね。」
「緑の愛し子ならどうにかしろよ。」
「何なんですそれ?」
と聞いた時、蔓が向かってくる中心から、
声が聞こえる。
「これはこれは緑の愛し子が居るとは知らずに大変な失礼を。
どうぞこちらにおいでなさって」
その声がした直後から、攻撃が止まった。
「っ……?」
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