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第三十四話 豊穣祭とトラブルとお誘い(2)
しおりを挟む「ラビちゃん、
今年もシュリと回ろっ?」
シュリの声でハッとする。
そうだ、剣聖の人間と回れば良いのだと。
だが女性のシュリは先程回る人をラビリムにしてしまったし、
どうせラヴィーナはグラディウスの護衛だろう。
困ったことに残っているメンバーは男性3人だ。
何が困ったかと言うと、
豊穣祭には最後のラストダンスを好きな人と踊ると、
結ばれるというジンクスがあるからだ。
そしてこのジンクスは五歳の子供でも知っているような、
かなり認知度が高い噂。
実際その噂で結ばれたカップルは何人もいると聞く。
その噂を知った上で、「一緒に回りませんか?」と聞くなど、
もはや遠回しに「あなたが好きです」と言っているようなものなのである。
はぁ、どうしたものかと息を着く。
「本当に夜の仕事ってこれだから面倒なんですよ。」
「でもほっぽり出したらそれこそ陛下に殺されるわ」
「ホントにやだわァ。
じゃ、しょうがなく今年も男三人で悲しく豊穣祭を乗り切りましょう…。」
と三人は話を進めている。
…あぁ、終わった。と思った時だった。
「はぁ?
お前ら忘れてねぇか?
今年はローアンがいるってことをなぁ!!」
え?私?とビクッと顔を上げた。
「つーわけでローアン。
俺と回れ」
と言い出したのはハヤテだった。
「へ…?」
ハヤテはもしや…あのジンクスを知らないのだろうか。
いや、知っていても、この人は信じないタイプの人間……のような気がする。
自分の想像上、ハヤテは占い師にインチキを言われたら、
「適当な事言ってんじゃねぇぞコラ」とキレそうなイメージがすごく強い。……本当に失礼だが。
というか、知らないなら知らないで、
信じていないなら信じていないで好都合である。
「そうですね、
当日はお願いします。」
と微笑み返事をした。
これでぼっち回避である。
「あ、ずるい!
一番女には興味ねぇぜ!キャラのくせに何ちゃっかりローアンを誘ってるんですか!?」
「ハヤテの裏切り者!!
友達と思ってたのにもう絶交よォ~!!」
「俺たちの友情うっす」
と、三人は女子グループの中の一人が彼氏を作った時の言い争いのような物を繰り広げていた。
「つーか別に女に興味がねぇわけじゃないし」
「え、そーなんですか?」
ハヤテはチーズにしかキラキラとした目を見せないので、
案外女性には興味がないのかと思っていた。
「どっちかっていうと年上好きだからな」
「…変態」
「何でそんな目で俺を見るんだよ!!」
「ハヤテが熟女好きとは知りませんでした…」
と少しからかう。
「ばっ、熟女好きとは言ってねぇだろうが!!」
「冗談ですよ~。」
そうこう言っている間に退社時間となる。
ハヤテからは五時には迎えにくる…と言われたので、
それまでに今日は店を閉めないといけないようだ。
いそいそと店に戻り、
お弁当作りを始めた。
豊穣祭には屋台があるが、
もし初っ端からトラブルでも起こされたら食べている時間も並んでいる時間もないかもしれないからだ。
「全く、これだから雑用係は嫌なんですよねぇ…」
と呟いた所で、店のベルが鳴った。
「ロゼ」
「あらユーシアス。いらっしゃいませ。」
「豊穣祭なのに今日もやっているんだな。」
「5時には閉めますけどね」
「ということは、君も行くのか?」
「ええ、まぁ」
仕事でですけどねぇ~と心の中でどんより~とため息をつく。
こんな調子じゃ一生恋人も旦那様も作れないわ……と軽く絶望した。
「誰と?」
「はい?」
「誰と行くんだ?男か?」
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