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第二十四話 チーズフェア(2)
しおりを挟む「おはようロゼ」
「おはようございます、ユーシアス」
朝、店の前で待ち合わせる約束だったため、
店の前まで行くともうすでにユーシアスは到着していた。
「ごめんなさい、待たせてしまった?」
「ロゼと出かけれることを考えてたら待ち時間なんてあっというま…
おっと、距離をおかないで欲しいんだが」
一歩離した距離を手を握られることによって戻される。
「何この手」
「私服が可愛いなと思ったらつい」
「会話がかみ合ってない気がするんだけど…。
馬で行くの?」
「そうだ。ここから三十分あればつく。
終わらないうちに急ぐぞ」
ひょいと持ち上げられ馬に乗せられる。
「しっかりつかまっていないと落ちるからな」
「お願いします」
馬で走ること三十分、朝市の広場についた。
「…チーズの匂い!!」
と目を輝かせる。
市場には色々なチーズが並べられ、人で賑わっている。
うわぁぁとさっそく向かおうと思ったら、手を掴まれる。
「…あのー、ユーシアス?」
「その調子だとはぐれそうだからな。こうしていた方が良いだろう?」
「…子供じゃないんだから」
と言おうとしたが、先程ユーシアスガン無視で行こうとしたことや、昨日身を乗り出していたことから説得力がゼロなことに気がつく。
「…分かりました。」
「良い子だな」
「じゃあ、行きますよ!」
「うぁあ、色んなチーズが…、あっ、王様!!」
「王様?」
「ロックフォール!ブルーチーズの王様です!!
買わなきゃ!!」
「はいはい」
「すみません、ロックフォールとゴルゴンゾーラ、
スティルトンをお願いします!」
「はいよっ!
いいねぇ、新婚さんかい?」
とお店のおばあさんがにこにこと微笑む。
「あー、ちが…」
と答えようとしたが、過去の経験上「そうなんです」と答えるとお安くしてもらえる可能性が……。
「そうなんです!」
と答えることにした。
「やっぱりそうかい!!お安くしとくよ~」
「わぁー、ありがとうございます!
よし、次行きましょ!」
「……ロゼ、心臓に悪いから勘弁してくれないか。」
「周りから見たらそう見えるんじゃない?」
「あのな、君は俺が告白したことを忘れているんじゃないのか?」
「……やっぱりアレってそういう意味だったんだ。」
「それしかないだろうが。」
だがその気持ちに一生応えられる日はこないだろう。
それなのにさっきの「新婚です」なんていうセリフは思わせぶり……だったのかもしれない。
「早くしないと売り切れちゃいますね。
急ぎましょ」
と、誤魔化すように答えた、
「……誤魔化さないで欲しいんだが今はいい。
次はどこに行くんだ?」
「あっち!」
「ふっ、子供か…」
くしゃりと笑うユーシアスの笑顔に胸が苦しくなる。
あと何回この人は自分に微笑んでくれるのか。
「ロゼ?」
「いえ、行きましょう!」
それから何件も周り、
ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトン、
ゴーダ、コンテ、ブォフォール、ブルーチーズを各種などなど、
20を超えるチーズを買ってきて満足気に微笑む。
「今日はありがとうユーシアス。
本当に助かりました。チーズがお好きだったらチーズ料理も食べに来て下さいな。」
「もちろんそうする。」
「スイーツも用意しますね!
ティラミスとかチーズケーキとかプリンとか。」
「それは楽しみだ。」
と微笑まれ、頭を撫でられた。
「そう言えば、今日お仕事は?」
「今日は午前中は非番なんだ。」
「休みなのに付き合わせてしまって大丈夫だった?」
「愛しいロゼのためならなんて事ない。」
……この男はすぐにそういうことを…。
「ですがお礼を……」
「じゃあこれで」
チュッと額に口付けされる。
「…なっ!?」
「顔が真っ赤だぞ。」
「誰のせいだと思って……!!」
「意識して貰えるだけ嬉しいよ。
では仕事に戻る。」
「い、行ってらっしゃい…。」
「本当に新婚さんみたいだな。」
「はぁ!?もうさっさと行ってください!!」
「はいはい、じゃあな。」
まったく……とため息をつき、店に入る。
「さて、チーズフェアの準備をしますか!」
と腕まくりをする。
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