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第十六話 「ロゼ」の開店と騎士団長(2)
しおりを挟む良く考えれば自分の名前を店の名前にするなんなて少しナルシストみたいで恥ずかしい気もするが、それでも名前を残しておきたい。
「素敵だわ、自分のお店を持つなんて。
お店の名前は決まった?」
「少し恥ずかしいですが、ロゼ…にしようかと。」
「ますます素敵。時間があれば今度お邪魔させて頂くわ。」
「ありがとうございます、お母様。
相談無しに決めてしまってごめんなさい。」
「あなたももう子供じゃないんだもの。
それくらい好きにしてもいいのよ?」
「ありがとう、お母様」
それから、街で買った看板にロゼと書き、扉にかけた。
馬車で店の前に降りて、中に入る。
場所は王宮の近くにと配慮してくれたようだった。
…なんて有難い。
「うわっ……!」
中に入って目を輝かせた。
そこまで大きくはないが、むしろこじんまりした雰囲気が好きだ。
あまり大きいカフェだと1人で回せなくなるし、落ち着いた雰囲気が1番だ。
テーブルカウンターに、椅子とテーブルが6つほど。
調理器具もかなり充実しているし、困ることは何一つなさそう。
建物の裏には庭があり、何かを植えれるスペースもある。
「……最高だわ。」
でもこれからかかるであろう費用を全額払ってもらうのは申し訳ない。剣聖のお給料日はかなり高いらしいし、やはりこれからかかる費用は自分で払うと言おう。
とりあえずメニューを決めなければならない。
眠らなくてもいいとのことなので、存分に時間はある。
仕事が終わるのが7時半だから、開店は8時半ということろか。
モーニングメニューは前世カフェを開店していた時は
決まったメニューは少なく、トーストされたパンの中に好きなトッピングととスープか飲み物か選んで注文してもらっていた。
ミニサラダもつけた方が野菜も取れるか。
色々挟むものはいっぱいあって、
ジャムやクリーム、スイーツ系から海老アボカド、ハンバーグなどのガッツリ系もあれば、野菜だけを挟むヘルシーなメニューまである。それとシンプルに目玉焼きやチーズハム、オムレツを挟むこともできる。
これはかなり好評だったし、こちらの世界でも全然できるメニューだろう。これならモーニングに限らず昼も注文してもらえるだろう。
それからモーニングは…、ホットケーキやフレンチトーストもあった方が良いだろうか。カフェや喫茶店の定番だろう。
サンドイッチではなくパンと具は別が良いという人もいるだろうし、具とパンは別々にすることも出来るようにしよう。
飲み物はジュースからコーヒー、紅茶まで多く揃えたい。
スープは定番のコーンスープやオニオンスープ、クラムチャウダーもいいだろう。それから野菜がたっぷり取れる野菜スープや昨日作ったカレースープもメニューに入れよう。
考えると止まらず、気がつけば夕方だった。
やっと全メニューが決まり、揃えてくれていた具材で全部出来るメニューにしたので、明日の朝には開店できるだろう。
それから今日作っていくものを決めないと……。
調理器具がちゃんと使えるかのチェックも含め、今日皆に作っていくものを作ることにした。
「え、明日オープンなの?」
「はい、明日にはオープンしようかと…」
「偉くはやいな。大丈夫なのか?」
ハヤテが若干心配そうな顔でこちらを見るが、
必要なものが揃えてありすぎて逆にこれ以上用意するものがないのだ。
「大丈夫です。陛下がほとんど揃えて下さいましたから。
それとシアンさん、陛下にお話して下さったみたいでありがとうございました。」
「いいのよぉ。その方が早く揃えられると思ってね~。」
お礼を陛下に伝えようにも、皇太子が第二皇子になったことでかなり忙しそうなので、手紙だけでもお礼の言葉を述べたが、
直接伝えられるのは遅くなりそうだ。
それから帰り、仕込みを済ませる。
モーニングメニューは具材を切るだけの物が多く、
フレンチトーストは1晩卵につけた方が美味しくなるので、
昨日付けておいた。
スープも作っておいたが……、その前にまず剣聖以外のお客様が来るのかどうか。
そして剣聖とバレたら面倒なので髪型をいつもと違うサイドで一つくくりにし、服もシャツに黒のロングスカート、それにエプロンを付けるというシンプルな格好にした。
これでお客様が全くこなかったら陛下に申し訳なさすぎる。
はぁ、とため息をついた頃だった。
カランコロンとベルが鳴る。
「!いらっしゃいませ!……ぇ?」
「もう空いているか?」
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