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第十三話 初料理(1)
しおりを挟む再度腕まくりをし、とりあえずカレースープを作ることにした。
この世界にはカレーというものはあるものの、カレールーなんて便利な物はない。
だがカレーというものは4つのスパイスさえあれば作れる。
用意するスパイスは、クミン、ターメリック、レッドペッパー、
フェヌグリーク。
この4つのスパイスを使うだけで奥深い風味が生まれ、
本格的な味ができる。
それからオリーブオイル、ズッキーニ、なすにパプリカ、
トマトピューレ、ソーセージ、後は水と胡椒を使う。
とりあえず野菜を食べやすい大きさに切ります。
それからオリーブオイルで野菜をとソーセージを炒め、4つのスパイスを混ぜる。
作り置きされていたトマトピューレと水、塩胡椒をいれて味を調整する。そして2分半煮込む。
これだけで終わるのだからめちゃくちゃ簡単で早く調理できる。
2分半煮込む時間に、トマトソースのトマトを切ってしまおう。
この大量のトマトを早く消費しなければ…、痛む。
トマトソースは冷凍しておくことでパスタにかけてもハンバーグにかけても美味しい優れものだ。
……お腹すいてきてしまった。想像しただけでお腹が…。
次にオムライス。
トマトソースはトマト2個、アンチョビ、少しのニンニクと塩と砂糖を作る。
ニンニクをいため、それからアンチョビを投入。
飴色になったら、トマト2個を細かく切ったものを入れて、ひと煮込みする。ここで注意しなければいけないことは、
ソースを煮込みすぎないこと。煮込みすぎるとトマトの旨味を最大限にいかせなくなる。
煮込ませている間にオムライスの作業を行うことにした。
オムライスの中に入れるケチャップライスだが、
先に中に入れる具材をケチャップで炒め、それからお米を入れてから炒める方がおいしくできる。
その作業をテキパキと済ませ、トマトソースを煮込んでいた火を止める。
「……驚きました。こんなにも手馴れているなんて」
「そ、そうですか…?」
「ええ。大きくなりましたねロゼ」
「え、えへへ…」
って自分気持ち悪いと我に帰る。
「も、もうすぐ出来ますから!」
ケチャップライスを卵でくるみ、ソースをかけ、
カレースープをカップスープに注ぐ。
「よ、よし……」
この世界での初料理にしては上手くいったんじゃないだろうか…。
スープを味見してみる。
「ん」
味は大丈夫だけど…、どうも自分が作ったものは昔からすごくおいしいとは思えない。
経営してた喫茶店の料理 はかなり評判だったけれど。
「お母様、味見……、お願いします」
「い、いただきます……」
母がスプーンで料理を口に運ぶのをジーッと見る。
「……」
母が無言で椅子から立ちあがる。
「!?えっ、お母様……?」
「おい、しい……」
「!」
「すごく美味しいわロゼっ!!」
母が満面の笑みで抱きついてくる。
まるで子供のようにはしゃいでいて拍子抜けだ。
「あなたすごいじゃない!
これならお店を開けるわよ」
「いえ、物凄く簡単なものなので…」
「作業もテキパキしすぎてビックリしたし、これほどまで美味しいだなんて……、」
母は再び座り、料理を食べ始める。
……よかった。
自分が作った料理を美味しいと笑って貰えたのは久しぶりだった。
何かうずうずして、もどかしい。
もっと、沢山の人にお料理を食べて貰えたらいいのに、
もっと、料理を出来ればいいのにと思うが、剣聖である以上そんな仕事が出来るかどうか。
入れ物にオムライスを入れ、水筒にスープを入れる。
取り分けられるようにコップとお皿ももって行こう。
「うぅん、こんな美味しい料理を作れたなら男はイチコロね。
お嫁先がありすぎてこまるようになっちゃうんじゃないなしら。
それにロゼは可愛いし、礼儀作法も完璧だものね。
毎日でも食べたいぐらいだわぁ……。」
褒めちぎるのもそこら辺にしてくれないと顔が真っ赤になりすぎて死にそうだった。
「また作りますねお母様。ではそろそろ王宮に参ります。」
「行ってらっしゃい。気をつけるのよ」
「はい。」
母が額にキスを落とした。
それから馬車に乗り、王宮に向かう。
1時間ほどかかるため、眠ろうとしたが全く眠れなかった。
「……?でも全くくまが出来ていないのよね……。」
鏡を見て確認しても、くまが出来ていない。
昨晩も一睡もできなかったし、学院のテスト前なんかはくまができてけどう隠すかこまったものだというのに…。
まぁくまが出来ていないならばいいだろうと眠ろうとするのを止めた。
「こんばんはー」
放送機のある部屋に入る。
「あ、こんばんはローアン。」
「やっほーアンちゃん」
「あらっ、もしかして本当に作ってきてくれたのォ!?」
「は?何の話だ~…?」
部屋に入るとシアン、ハヤテ、ツキヤ、シュリが来ていた。
皆早いんだなと席に着く。
この前ハヤテはいなかったが、それ以外は一緒のメンバーだった。
「……他の剣聖の方々は?」
「あぁ、朝と昼で交代ばんこなのよ。
朝は6人人いて夜は7人。」
「では夜の当番の方があと2人いるのですね。」
「そうだな。今1人は昨日の任務でしくじって休養中。
もう1人は何日かかかる任務に行っててしばらくは戻らん。」
「ご説明ありがとうございます。」
コンビニのバイトみたいな感じで回っているのだなと頷く。
まぁ確かに朝に問題が起こらないわけじゃないだろう。
夜に13人は多い気がするし。
「それより昨日の任務しくじってないだろうな。」
ハヤテがこちらをギロりと睨む。
それに微笑んで言い返そうとしたが、ツキヤが先に口を開いた。
「新人が怖がるようなこと言わないで下さい。
ローアンは完璧に任務を達成しました。それに昨日の手柄派全部ローアンの物です。私は報告書を書いただけなので」
「は?こいつがビビってるように見えんのか?
任務達成したならまぁ文句はないが」
あからさまに嫌われたな…と小さくため息をつく。
挑発的な態度をとったこともあるから完璧にあちらが悪いわけでも何でもないが。相変わらず話す言葉に棘を感じる。
「まぁまぁ、せっかくツキヤさんのリクエストのオムライスを作ってきましたから人殺しの話は止めましょ。」
と容器とカレースープが入った水筒を取り出した。
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